表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/107

3-2



その日の勉強会の内容が、レイは全く身に入らなかった。常に自分の手の平を見つめ、冷たくなったウィアの感覚を思い出していた。




司教様のお話も終わり居なくなると、レイは早く帰ろうと立ち上がる。


しかし、いつもの如く上級生に取り囲まれた。




(またか)と、レイは思った。


いつも通りに話だけ聞いて帰ろうと深呼吸をする。




「もう帰るのかよ? 相変わらず友達いねーのなぁ」




(始まった)




レイはいつもの無表情で、特に答えることもなく相手を見る。




「まぁ、1人でも寂しくないんだもんな?」


「そうだった!」




そう言って三人が笑い、レイを指差す。




(大丈夫。ぼくは寂しくない。マリーさんと……)




そう思った瞬間、レイは胸がギュッと締め付けられた。




(そうだ。ウィアは、もう、居ないんだ)




その時、胸が苦しくなり、レイは戸惑った。




何かが、胸の奥で押しつぶされるような感覚。


それは、ずっと見ないふりをしていた何かだった。




徐々に目頭が熱くなる。




すると、頬に何かが、たくさん伝っていくのを感じた。




笑っていた三人もレイを見て仰天している。




レイの目から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちていたのだ。




「え?」




レイは驚いた。


物心がついて、泣いたのは、ほぼ初めてかもしれない。


そして、胸の奥から込み上げてくる苦しさに、息が出来なくなる。




「う…は…っ、く……ぅう……」




その時、レイの頭にマリーの言葉がよぎった。




『私は、寂しいわね……』




「寂しい……っ」




レイがそう呟くと、更に涙が溢れた。




「ぼくも、寂しいんだ……」




レイが顔を歪めた。






その時ーー。




茶色の髪を揺らしながら、レイの前を走り通る少年。




レイはハッと、その少年の後ろ姿を見た。


その背中は同じ背丈なのに、大きく見える。




その少年は「たぁあーーー!!」と叫び地面を蹴り飛び上がる。そして上級生に向かって足を突き出すと、その蹴りは見事に上級生の1人に命中した。




一瞬の事で、その場は騒然となった。




跳び蹴りを喰らった上級生は、鼻を押さえながら泣きじゃくる。他の上級生が少年に向かって怒りを露わにした。




「サム!! お前何しやがる!!」




するとサムと呼ばれた男の子は、仁王立ちする。




「いやいや! せんぱい達こそ何してんですか! 三人でこの子泣かせて!」


「うっ……いや、それは……」




サムに言われ、上級生達は慌てる。


それを横目にサムはレイを見るなり、目を丸くした。




「って、めっちゃ泣いてるじゃん!」




サムがレイに駆け寄ると、




「ごめん、ハンカチとか持ってねぇんだ!」




そう言って服の袖でレイの涙を拭い始める。




「お前も泣くんなら言い返せよな! ずっと見ててイライラしてたんだ!」


「……」




レイはサムの言葉に返事をせず、目を見開いたまま、サムをずっと見ていた。




「おい、なんとか言えよ」




痺れを切らしたサムがレイに怪訝な表情を向ける。


すると、レイはやっと口を開いた。




「か……」


「か?」




サムが首を傾げ、復唱する。


それと同時に、レイは目を輝かせた。




「かっこ、いい……!」


「へ?」




サムはポカンと口を開けたまま、目を瞬かせた。






暫くすると、騒ぎを聞きつけた司教様が戻ってくるなり、レイ達の元へやってきた。


その後は事情を聞かれ、レイとサム、そして上級生三人は、司教様から長い長いお説教を聞かされたのだった。




.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ