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襲いかかる黒い塊は、赤黒い眼をレイから片時も離さなかった。




振り落とされた両腕をなんとか交わし、レイは溢れ出る魔力を魔物に食らわす。


その度全身に痛みが走り、レイは苦しんだ。




レイは戦い方を、何も知らない。


とにかく、ひたすら魔力を放出させ、


ただ、がむしゃらに敵を向かい打った。




まるで、心の痛みを打ち消すかのように。




攻撃が偶然急所をかすめ、魔物の動きが止まった。




その刹那――。




突然、レイの体内で、光が脈打つように全身を走った。




そして脳裏に現れたのは、あの【ドラゴンの目】だった。




「ぐっ…ぁあぁあ……ッ!」




レイは全身を刺すような痛みと、黄金の瞳への恐怖で体が震え、汗が噴き出た。


身体が支配されるような苦しみ。




しかし今のレイにとって、こんな痛みや苦しみは痛くも痒くもなかった。




親友を失った悲しみに比べれば、ずっと。




(もう、僕は……どうなっても、良い……ッ)




そう思った瞬間、レイは人間とは思えぬ声で、空へ向かって咆哮した。




「ッーぁあアァあアァぁあぁあアァああぁぁあーー!!!」




それは、地を割くように空を突き抜け、森の鳥達が一斉に飛び立つ。






そんな中ーー。






『レイ! 俺達ずっと、親友だぞ!!』


『俺達二人で、村を守ろうぜ!』






頭に響き渡る声。




叫ぶレイの頬を熱いものが伝う。




それが、体の痛みなのか、心の痛みなのか、レイには、もう、わからなかった。






すると、レイの中で走馬灯のようにサムと出会った時の事が、思い起こされた。




サムと出会った、春の温かい日のことをーー。




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