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5-2



その言葉にレイは衝撃を受ける。




「な、なんて事言うのよ!!」




マリーが眉を吊り上げ叫ぶと、ジャックはレイを指す指を振るわせながら、ブツブツと呟く。




「エリックとカレンの言う通りだ……レイが、恐ろしい怪物になっちまった…ッ!!」




ガクガクと足を振るわせ、顔を青ざめるジャック。




レイはその姿を見て呼吸が苦しくなり、胸に手を当てた。




商店街の人々の目が頭から離れない……いつも温かく見守ってくれていた人達からの怯える冷え切った目に、レイは崖から突き落とされたような気持ちだった。




「ジャック、どう言う事よ!」




マリーがジャックに問い掛けた時、集まった人々がざわつき出す。




「あの、姿ッ!」


「お、おい! ジャック、逃げろ!!」


「え……!?」




その視線がレイに集まっていた。




レイの魔力が漏れ出していたが、レイは抑えられなかった。その魔力の大きさに、商店街の人々は声をあげて逃げ出す。


ジャックも後退り、レイを呆然と見つめる。




空気がビリビリと震えるような、目に見える力がレイを包んでいく。




魔力で象られたのは、紛れもなくレイの血に混ざる姿だった。




「あ、あれは……ッ! ド、ドラゴンッ!!」




そう叫ぶと、ジャックは商店街へ向けて走り出した。




レイはその場に崩れ、地面に膝をつく。




『お前を恐れる者達が、心無い言葉を掛ける可能性は十分にある。それでも、冷静でいられるかどうかだ』




エリオットの言葉を思い出しながら、レイは冷静でいられなかった事を悔やんだ。


そして、怖がられる事が、こんなにも辛い事なんだと痛感した。




心と身体が痛み、苦しい。




レイが落胆していると、




「レイ、大丈夫よ。落ち着いて」




マリーの声が頭上から聞こえる。




背中を優しく撫でられ、レイはゆっくりと顔を上げた。すると、マリーの心配そうな顔が目に映る。


その表情にレイは胸が締め付けられる思いがした。




「マ、マリーさん……ごめん、なさい」




苦しむ中、レイが謝ると、マリーは首を横に振る。




「謝らなくて良いのよ。心が落ち着かない時は、ゆっくり深呼吸してごらん」




微笑みながらレイの背中をさすり続けるマリーは、深呼吸してみせる。レイはそれを真似するように深く息を吸った。湿った土の匂いが鼻の奥まで香ってくる。そして胸いっぱいに空気を溜めると、全て吐き出すように息を吐いた。




「そうよ、その調子ね」




マリーの声にレイは頷く。深呼吸を続けると、身体から漂う魔力は少しずつ小さくなっていく。




それを見て、マリーは感嘆を漏らした。




「これが、レイの魔力なのね……。はちみつ色の鱗粉みたいで、綺麗ねぇ」




「!」




レイは目を丸くしてマリーを見た。




恐ろしいドラゴンの力を綺麗だと言う。




「マリーさんは……怖く、ないの?」




レイが恐る恐る聞くと、マリーはキョトンとした顔を見せ、すぐに微笑んだ。




「怖くないわよ。むしろ、優しくて、温かくて……レイにピッタリの力だわ」




そう言いながら背中をさするマリーは、宙を見る。




(そ、そんな風に……見た事、なかった)




マリーの視線を追って宙を見上げるレイ。


すると目の前にキラキラと輝く黄金の光が広がっていた。




「ふふ、綺麗ねぇ」




そう言ってマリーが笑う。




あたたかい。




レイはその一言しか思い浮かばなかった。




怖がられるのが当然だと思っていた力を、こんな風に言ってくれる人がいた。




胸の奥がじわじわと熱くなり、次第にその熱は目の奥へと広がっていった。




そして込み上げてくるものを抑えられず、思わず涙が溢れる。




「ふ…っ、うぅ……ッ」




色々な思いが、涙となって流れていった。




マリーは何も言わず、ただ一緒に魔力のオーロラが消えるまで背中をさすってくれる。




(ありがとう……マリーさんッ)




はちみつ色の鱗粉は、ゆっくりと静かに、レイを励ますかのように優しく消えていったのだった。




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