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3-2



レイは、エリオットへ先に家に戻ってもらい、小屋の裏へと足を踏み入れる。




そこには、小さな墓碑がひっそりと立っていた。その横に小石で作ったお墓も横並んでいる。




レイが墓碑の前に跪くと、優しく風が吹いた。


髪をなびかせるレイはゆっくりと目を閉じて、手を組み祈りの姿勢を取る。




(5日ぶりになるのかな、やっと挨拶に来れたよ、母さん。それとウィア)




レイは心の中で墓碑の下に眠る母と、ウィアという飼っていた小鳥の名前を呼ぶ。




小さい頃、マリーから聞いたことがある。


母のルナは、『自分が死んだら埋葬は必要ない。跡形もなく燃やしてくれ』と冗談とも本気とも取れない事を言っていたらしい。


マリーは流石にバチ当たりだと『そうなった時は、火葬して、裏庭にひっそりと骨を埋葬する』と話を付け、ここにルナを埋葬したのであった。




墓前にひざまづいたまま、レイはこの数日間の出来事を心の中で母に語りかけていた。


鑑定の儀式での出来事、サムやエリオットとの事、マリーへの感謝の気持ち、そしてーー




「母さんは、父さん…と、どうやって出会ったの? 母さんは、精霊が見えていたの?」




母に対する、たくさんの疑問もぶつけた。




もちろん、返事は返ってこない。




レイは静かに目を開くと、空を見上げる。


裏庭の土の湿気と近くの森の匂い、そして春の花の香りが、風に乗ってフワリとレイを包み込む。




(平和……な、はずなのに……)




どうしてかレイの心は、不安な気持ちがなくならない。




その原因は、自分でもよくわかっていた。




"ドラゴンの血"




これが、自分の心の重い枷になっている。そして、昨日見た"黄金の瞳"が不安と恐怖心を煽ってくる。




レイは、ざわめく心を振り払うように、パッと顔を"ルナ"と書かれた墓碑に向けた。


暫くして、ゆっくりと立ち上がる。




(母さん、戻るね)




そう語り掛けると、レイはマリーとエリオットの待つ家の玄関へと足を向けた。




その時、レイは怯える視線に気が付かなかった。




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