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後悔の念が込められるのを感じ、レイはもどかしくなり、少し声を強めて言う。
「責めませんよ。僕は、エリオットさんに助けてもらったので」
エリオットはピクッと反応する。
「それにマリーさんも、条件付きですけど、許してくれましたよ」
レイが言うと、エリオットはゆっくりと顔を上げる。相変わらずの綺麗な顔立ちは、暗闇の中でもよくわかった。
(やっぱりイケメンは、どこに行っても映えるな……)
レイがそんな事を思っていると、
「今、余計な事を考えただろう」
と、エリオットが端正な顔を歪めながらレイを見ていた。
「ま、また、顔に出て……?」
レイがハッとしながら手で顔を包む。
「いや、冗談だ」
「え、え〜……」
エリオットのまさかの発言にレイは戸惑った。
「変な事考えていたんだな」
レイは「うっ」と反応し、弁解の言葉を探す。すると、エリオットが溜め息を吐いた。
(あ、いつものエリオットさんだ)
そう思いながら、レイはどこか安堵を覚える。
「エリオットさん、晩ご飯食べましょう」
切り替えるようにレイが声を掛けると、
「食事はいらないと、いつも言っているが」
と、目を泳がせるエリオット。
レイは(まただ)と、マリーとエリオットのやり取りを思い起こし、内心笑った。
「マリーさん曰く、お腹を空かせてたら、何にも出来ないらしいですよ」
レイが注意するように言うと、怪訝そうなエリオットの顔が向けられる。「同じ事を…」と言わんばかりの呆れた眼差しに、レイは思わず微笑んだ。
するとエリオットは何故か驚いた顔を見せる。
「?」
レイが首を傾げると、「仕方ないな」と、エリオットがゆっくりと立ち上がった。
「悪かったな。お前の部屋に居座って」
エリオットが謝罪を述べる。それに対しレイは横に首を振った。
「いいえ。……僕の部屋、エリオットさんの居場所でも良いですよ」
レイがいつもの無表情だが、柔らかい口調で言うと、エリオットはフッと笑った。
「不思議だな。お前は……たまに、大人の顔を見せる時がある」
「え、そうですか?」
レイは目を瞬かせ、エリオットを見る。
するとエリオットが、口元に拳を当て頬を上げた。
「はは……その顔は子供っぽいな」
エリオットが声を上げて笑う。それを見てレイは目を見開いた。
(エリオットさんも、こんな風に笑うんだ…!)
初めて見たエリオットの表情に、レイは嬉しくなる。
そして、思い出したように口を開いた。
「エリオットさん…!」
名前を呼ばれ、エリオットはレイを見る。
「まだ、魔法を使うのは、怖いんですけど……魔法の事、これからも色々教えて下さい…!」
レイが「お願いします」と頭を下げる。
すると暫くの沈黙。
ダメなのかな…と諦めの気持ちで頭を下げ続けていると、頭上から溜め息が聞こえた。
「……出来る限り、お前の力になろう」
「!」
その言葉にレイはパッと顔を上げる。そして胸の奥から何かが込みあがり、思わずガッツポーズをしていた。
エリオットはそれを見て驚いたようで、コホンと咳払いし、視線を逸らした。
「……そんなに、嬉しいのか」
ポツリと呟くエリオット言葉に、レイは、自分が満面の笑みになっているのに気付いた。
(こんなに嬉しいのは、エリオットさんから学べるから…? それとも、魔法を使いたいから?)
レイは自分でも驚きながら、首を傾げた。
すると、エリオットが扉の方へと足を向ける。
「おい、何を突っ立ってる。下に行くんだろ?」
「!」
エリオットがドアノブに手を掛けながら振り返る。
レイはエリオットの後を追い、マリーの待つ一階へと降りて行った。
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