1
(ここは、何処だろう…?)
気がつくとレイは宙を漂っていた。
周囲を見渡すと何も無いただの白い空間が広がる。
身体を捻り、勢いを付けて回転してみる。
意外と勢いがあったようで、くるくるっと2回転ほどした。
(何も、無い。そして、ちょっと楽しい…)
レイは何度か回転してみた後、身体を謎の浮遊力に任せてフワリと漂う。
無垢な空間は何処か心地良さを感じた。
その温かさにレイは静かに目を閉じて身を委ねる。
(この温かさ……身近で感じた気が……)
不意に眠気を覚え、考えるのをやめるレイ。
しかしーー
ーバキバキ、バキン
突然空間が大きく振動し、激しく割れるような音が聞こえた。
その瞬間レイは目を開ける。
するとレイの身体は、黄金の球体に包まれていた。
「!?」
レイは慌ててその球体に近付き、手を当ててみる。外からは完全に隔離されており、叩いてみても壊れる様子はない。
焦るレイは、何が起こっているのかと外を見る。
すると、白い空間には大きな亀裂が至る所に入っており、今にも崩れそうだった。
亀裂を辿って下の方へ目をやると、金色に輝く光が近付いていた。
(まさか……あれって……!)
レイはだんだん姿が露わになっていく光に驚愕する。身体が震え、血の気が引いていく。
「ド、ドラゴン……!」
レイが真臓に飲み込まれた時に見た気がした、黄金のドラゴン。
そのドラゴンがこちらに向かって飛んでくる姿を目にする。
(逃げなきゃ!)
そう思った時、咆哮が響き渡る。
その振動はヒビの入った白い空間をいとも簡単に粉砕した。散っていく白い破片は、レイを包む黄金の膜に容赦なく降りかかる。
破片がぶつかる度に、球体は大きく揺れたが、レイはピクリとも動かない。
レイはドラゴンの叫び声を聞いて、身体が思うように動けなくなっていた。
(な、なんで、動かないの…?)
焦るレイは、重い頭をなんとか動かし、上空を見上げる。
すると、鋭い破片がレイを目掛けて落ちて来ていた。
「あ……っ!」
レイは無表情を崩し、顔を歪める。
(ここで、僕、死んじゃう……?)
逃げられないもどかしさと、何処か諦めにも似た気持ちが折り重なる。
これも一つの選択なのかも…レイが近付く破片を茫然と見つめる。
すると突然、黄金の球体が変形し、襲いかかる破片へ向かって盾のように形を変えた。
「え…?」
レイは目を見開いて、その様子を見つめた。更に驚いた事に、盾の前にドラゴンが現れ、破片に向かい打つ体勢を取っている。
何故ドラゴンが…と、目を丸くするレイ。
するとドラゴンは破片に向かい、再び咆哮した。
その瞬間、ドラゴンの身体が金色に光り輝く。
その眩さに、レイは思わず目を瞑った。
すると、頭に直接声が聞こえた。
『待っている。お前が求める時を』
『待ってます。私達を必要とする時を…』
「!」
.




