表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/98

9-1



エリオットが玄関をガチャリと開ける。




そこに居たのは、アイボリーのフードを目深に被った3人組だった。所々に金色や翠色の刺繍が施されている。


袖に描かれる紋様に、見覚えがあった。




(……早速お出ましか、ゲニウス)




ゲニウスーー古代ドラゴンを崇拝する団体で、当主が代わり、教会と対立する立場をとっている。




エリオットは冷静に3人組を見る。


観察するに、手前はエルフ、右奥は獣人、左奥は人間と察した。




「こちらはシェルマンさんのお宅で、間違いありませんか?」




手前のエルフは女のようで、落ち着いた高らかな声色で尋ねてくる。




「何の用だ」




エリオットは、エルフの質問に答える事なく逆に尋ねた。それに驚いたのか、ゲニウスの3人は一瞬止まる。




しかし、すぐにエルフが話し出す。




「突然の訪問で申し訳ありません。私共は、ゲニウスと言う団体の者です。こちらにいらっしゃる"レイ・シェルマンさん"にお会いしたくて伺いました」


「あの子供は居ない。帰れ」




キッパリと言い放つエリオットは、腕を組みゲニウスを鋭い目で見やる。


またも奥の2人が固まる中、手前のエルフは口元に薄らと笑みを浮かべる。




「そうですか。では何故、貴方のような教会の…しかも力をお持ちの方がいらっしゃるのですか? ……エリオット・ベイクウェルさん」




(やはりそこを突いてくるか)




エリオットは表情を変えず、小さく溜め息を吐く。




「宗教勧誘者を追い払う為だ」


「あら、それは大変ですね」




(……全く動じていない)




言われ慣れているのか、ゲニウスの3人共、口元しか見えないが余裕の態度だった。




「その為の…防音魔法ですか?」




エルフの言葉にエリオットは心の中で驚く。




「そう言う事だ」




(コイツ、魔法に精通してる者だな……)




何の変哲もない部屋……そこに魔法が施されている事に気付けるのは、魔力の強い者か、魔力の研究等を行う者達。




エリオットは、更に目を鋭くし、気を引き締めた。




「我々は勧誘しに来たのではありません。彼に提案、一つの道をお伝えしに来たのです」




(……勧誘ではなく、提案…。コイツらは、あくまで助言しに来たと言う程なんだろう。それが"勧誘"だと言うのに……)




エリオットは内心呆れる。




「レイ・シェルマンさんも、この世の理不尽さを感じる事でしょう。それも、全ては古代ドラゴン『ディグニタス』様のお導きにより救われます。悩みや苦しみは、全て、ディグニタス様のもとで意味をなします」




ゲニウスの3人が、胸の前で左の手の甲に右の手の平を乗せ、腕を水平にする。




「ディグニタス様のもとで学び、力を尽くせば、必ず私共は道を示して頂ける……どうか、その尊き選択を、誤られるように」




言い終えると3人は、まるで祈りを捧げるように暫く黙り、俯く。




だが、エリオットは見逃さなかった。




(後ろの人間、何か話している……)




不審に思い、魔力の動きを気付かれないように確認するが、特に何も感じない。




(……精霊使いか…っ)




エリオットがハッとした瞬間、フワリと柔らかな風が部屋の中に入っていくのを感じた。




それと同時に顔を上げるゲニウス。


すると、エルフの女がつま先立ちで、顔一個分も差のあるエリオットへ顔を近付けた。




「貴方も、苦労をしたでしょう……エリオット・ベイクウェルさん」


「……」




.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ