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6-2



考え込むレイを見て、




「確信はないが……」




とエリオットが言うと、レイは顔を上げた。




「"鑑定"の時、お前に精霊のシンボルを見た。それが答えになるのかは、わからない」




エリオットが静かに目を伏せる。


それを見ながらレイは、母の事をもっと知りたいと思った。




もしかしたら、精霊が見えていたのかも……自分と母の繋がりに、レイは少し嬉しくなった。




レイの雰囲気が明るくなったのに気付いたエリオットは再び口を開いた。




「続けるが、魔力の量は遺伝が多い。中には特異体質で量が多い者もいるが、お前の場合は、間違いなく遺伝だろう」




エリオットの言葉にハッとするレイ。




(遺伝……ドラゴン…父親の事、だよね)




レイは複雑な思いを抱きつつ、話を聞く。




「人間以外の種族は、大体が魔力を保持している。それは、もうひとつの心臓---『真臓』と呼ばれる臓器が遺伝しやすく、自然の力を与えられやすい環境にいたからだと言われている」


「もうひとつの、しんぞう…?」




レイが復唱すると、エリオットは頷く。




「そうだ。真髄の臓器と書いて、『真臓』ーー最近では心臓との区別をつける為、『魔法の核』とも呼ばれる。この中に魔力が溜まるんだ」




レイは無意識に左胸に手を当てる。




「"鑑定の儀式"は、この魔法の核ーー真臓の中に浮かぶ、種族のシンボルと魔力を見るんだ。並大抵の者では難しいがな。俺達も訓練して把握出来るようになった」


「へぇ…そうなんですね」




レイは、鑑定された時の感覚を思い出す。


覗かれているような感覚は、この事かと納得をしていた。




「昔は人間も皆、真臓を持ち合わせていたが、技術の発展と共に減少し、今では魔力保持者も四半以下となっている」


「……かなり少ないって、事ですか?」




レイが問うと、目を伏せ、「あぁ」と返事をするエリオット。




「人間は、昔から技術の発展させるのが得意だった。我々では分からない仕組みを構築し、魔法を使わずして動く機械も創作している」




(セントラルは、機械で溢れてたもんな……)




レイは小さい頃に行ったセントラルの記憶を思い出す。




「ただ最近、セントラルに住む人間とのハーフの子供は、魔力を持たず生まれる事も増えてきた。一説だが、人間の繁殖能力が高い故に真臓の継承がされにくく、更にセントラル内では自然の力が薄いからだと考えられている」


「そうなんですね……」




(僕もハーフなのに、魔力があるけど……)




レイが眉をひそめていると、エリオットが険しい表情を見せた。




「あと、中には『古代ドラゴンの呪いだ』という輩も居る」


「古代ドラゴンの…呪い?」




声色の変わったエリオットに、レイは少し緊張する。




「あぁ、人間が古代ドラゴンの逆鱗に触れた事で、魔力を与えられなくなったという、低俗な説だ」




ギラリと瞳を光らせるエリオットに一瞬驚く。




「て、てい…」




(エリオットさん、気に入らない事には、お口が悪くなるらしい……)




エリオットの一面に内心気付きながら、レイは表情を変えず、端麗なエリオットのしかめっ面を見つめる。




「古代ドラゴンは神でも何でもない。そんな力があったら世界を壊す事も簡単だった筈だ。だが1000年前、世界は滅びる事なく、今もこうして営まれている。これは古代ドラゴンが神ではない証拠だ」




力強く言い切るエリオット。レイはそんなエリオットに尊敬の眼差しを向けた。




(そんな事、考えた事もなかった……!)




レイが目を輝かせていると、




「すまない、話が逸れたな」




エリオットが前髪を払い、話を戻した。




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