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竜血少年は、力加減が難しい  作者: moai
始まりの儀式
3/43

1-2




「司教様、レイを連れてきました」




サムが司教の前に立つと、少し後ろにいるレイをチラリと見た。


それに合わせてレイがペコリと頭を下げる。




「おぉ、ありがとう、サム」




司教は、ニコリと優しく微笑み二人を見た。




「さて、まず儀式の話の前に…」




そう言って司教は、柔らかな表情のままレイを見据える。




「レイ、君はいつも寝てばかりじゃ……その理由を教えてくれんか」


「理由……ですか?」


「そうじゃ」




司教の柔らかな表情の中に見せる真剣な眼差しに、レイとサムは背筋を正した。


そしてサムがレイに小声で耳打ちする。




「おい…! 司教様にもバレてんぞっ!」


「そんなつもりは、無かったんだけど…」


「何を話しておる?」




コソコソと話す二人に司教は眉をひそめた。


その様子にサムが「何も!」と慌てて司教に向かって背筋を伸ばした。それを見て司教はレイの方へ視線を移す。




「レイ、どうなんじゃね?」


「……」




レイはゆっくり空を仰ぐと、無表情だが芯のある眼差しを司教に向けた。




「この木漏れ日と葉の擦れ合う音、そして涼やかな風が眠気を誘うんです」




レイは堂々とした姿勢でジッと司教を見つめる。




(おいぃ…! 正直に言い過ぎじゃねぇか!?)




隣に立つサムは、レイの発言にヒヤヒヤした表情を見せる。




「なるほど……」


(これ、怒られるパターンだろ…)




トーンの低い司教の声色に、サムは怒られるのを覚悟で身構えた。


しかし、続く言葉はサムの予想外の言葉だった。




「わしの授業がつまらない--という訳では無いのなら、許そう」


「え、良いんですか…!?」




サムは思わず拍子抜けした。




「ありがとうございます」


「堂々とお礼言うのもおかしいぞ、レイ」




レイが頭を下げるのを見て、さらにサムはツッコむ。それを見て司教は「ほっほっほ」と笑った。




「ではレイ。今日わしが話した、”この世界の成り立ち”を簡潔に言えるかのぉ?」




司教が少し悪戯な微笑みを見せながら投げかけると、レイはキョトンと目を瞬かせる。




隣のサムは、ギョッと目を見張り、レイを心配そうに横目で見た。




(レイの奴、大丈夫か……?)




だが、レイはゆっくりと落ち着いた口調で話し始める。




「この世界には、人間、エルフ、獣人そして、ドラゴン、の四種族が存在し、それぞれの領域で暮らしています。


1000年前、この世界は古代ドラゴンによって均衡が保たれていましたが、人間が古代ドラゴンの逆鱗に触れてしまい、滅亡の危機に見舞われます」




レイは落ち着いた様子で、しかしハッキリとした口調で続ける。




「しかし四種族が力を合わせ、古代ドラゴン封印し、その後はドラゴンにより均衡が守られています。そのドラゴン達は”ドラゴンヘル”と呼ばれる雲よりも高い山の天辺へと移り住み、僕たちを見守ってくれています」




「そうじゃな」と司教は頷いた。




「かつてドラゴンの暮らしていた領域は、人間、エルフ、そして獣人の領域の中心地にありました。この地を巡って、三種族同士で争いが起こり、大きな戦争へと発展しました」




「うむ」と司教が静かに目を閉じる。




「300年間の戦争の末、三種族は平和条約を結び、共存していく事を決めました。


 争っていたドラゴンの領域は、”セントラル”と呼ばれる中心都市にし、人間もエルフも獣人も、分け隔てなく暮らせる都市へと生まれ変わりました。


 そして、このセントラルにある中枢機関で、三種族の代表者が話し合い、差別ない平和な世界を作るように努めている…、って感じでしょうか?」




レイが言い終えると、司教とサムは「おぉ!」と感嘆を漏らす。




「お前、ちゃんと言えてるじゃん!」


「うむ! そこまで言えるとは思っておらんかったわ」




二人の反応を見てレイはホッと胸を撫で下ろした。


司教は何度もこの世界の成り立ちについて話していた為、レイはこの説明を覚えていた。


表情に感情が出にくいレイだが、サムはレイが安心したのだと気付きニヤリと笑う。




「実は不安だったんだな」




サムは肘でレイをつついた。




「レイもちゃんと話を聞いているようで安心したわい。…それでは、ようやく本題じゃ」


「そうだった!」




司教に呼ばれた理由を思い出し、サムとレイは改めて司教に向かって姿勢を正した。




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