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竜血少年は、力加減が難しい  作者: moai
第一章:始まりの儀式
25/98

8-1



教会内の時が止まる。




レイの背中をさするサムも、「え?」と動きを止め、耳を疑った。




ダニエルの声が耳に入った瞬間、エリオットの苛立ちは爆発しそうなる。




「馬鹿がッ、 この事態だけは、避けたかった……っ!」




エリオットはグッと目を瞑り、苦しい表情を見せる。




ローレンヌも驚きを隠せない様子で、先程鑑定したエリオットを急ぎ見る。




エリオットの力であれば、種族の鑑定は出来ていた筈だが、先程の鑑定で結果を濁していた。




何か理由がある…。




それが、まさか1000年前に地上を離れた、あの『ドラゴン』だとは思いもしなかった。




エリオットの様子を見てローレンヌは、ダニエルの情報が真実であると確信した。




「なんと…っ」




あり得ないと思っていた事が、目の前で起こっている。


その場にいる全ての者が信じられずにいた。




騒がしくなる教会内。




信じられずに居たのは、まさにレイも同じだった。




(ドラゴン……? 1000年も前に、天界…ドラゴンヘルへ、移ったんじゃ、なかったの…ッ)




痛む頭を抱えたまま、ただ呆然とする。




(う、嘘だ…よね…?)




「嘘だと、言って……!」




吐き捨てるように震える声で呟いたレイの心は、音を立てて砕け散った。


それと同時に、ピクリと身体を震わせる。




「レ、レイ…?」




それに気づいたサムが恐る恐る声を掛けた。




その時---




ーブワッ




「うわっ!!」


「な、なにッ…!?」


「キャァアー!」




レイを中心に魔力の突風が吹いた。




サムを始め周囲にいる人々、長椅子が少し吹き飛ばされ、宙に浮かぶキャンドルの火も消えてしまう。




突然の事で誰も対応が出来ず、教会に悲鳴が響き渡り、全員がパニックになっていた。




「まずい…ッ、魔力が暴走している…!」




エリオットは叫ぶと、前に出て戦闘態勢を見せる。


その背後にコリーとマッシモも並び、皆レイの様子を伺った。




レイは頭を抱えたまま、自分の置かれた状況を受け入れられずにいた。




(ドラゴンは…いないんじゃなかったの…?)




そう思った瞬間、奥から込み上げる力が一気に身体を包み込んでいく。




「うぁっ……ぐっ…!」




溢れる力はレイの身体からゆらゆらと漂い出てくる。




「うぅ……」




呻き声をあげながらレイは、ゆっくりと顔をあげ、目を開ける。




「「「「「ッ!?」」」」」




様子を伺っていた者達は、レイの瞳を見て驚愕する。




その瞳は深緑ではなく、黄金に輝き、瞳孔が蛇のような縦長となっていた。




見た事のない瞳にサムやローレンヌ、司祭達、見た全員が驚く。




そんな中、エリオットはこの目に見覚えがあった。




「あれは……ッ」




約400年前、24歳の時に見た事のある瞳。




かつて隣の領域で暮らしていた種族。




鋭い爪を持ち、鱗に覆われた肢体、筋肉質で巨大な身体に大きな羽根を羽ばたかせ、身体から伸びゆく首。




その頭に、ギラリと輝く目が離せなくなるような瞳。




(っ……やはり、ドラゴン…ッ!)




あり得ない事への動揺で表情を険しくする。




その様子をレイは落ち着きなく見ていた。




(みんな、どうしたんだろう……?)




周囲の視線がレイに突き刺さる。


驚きと怯え、混乱が、その目に混ざっていた。




(みんな、僕を……怖がってる?)




レイの血の気が一気に引いていった。




(僕は……普通じゃ、ない…?)




レイの体はワナワナと震え出し、徐々に呼吸が荒くなっていく。




(僕は…、なんでっ……!)




レイは自分の身体を抱え込みながら、抑えられない震えを必死に止めようとする。


すると、柔らかく静かな声がレイに掛けられた。




「レイ・シェルマン、落ち着くんだ」




その声の主は、エリオットだった。




「大丈夫だ。ゆっくり呼吸しろ」




落ち着かせようと優しく声を掛けるエリオットに、レイは少し安堵感を覚える。




しかし、それを憚るように高らかな笑いが教会に響き渡った。




「ははは! 私が…、この私が見つけたッ! この子供の力、祝福の力を……ッ!!」




ダニエルが嬉々として喜ぶ。




すると突如、ダニエルの身体に極太の光の縄が現れ、両手首、両足、そして口に縄を咥えるように縛られていく。




「もがッ…!?」




ダニエルは突然の事で抵抗できず拘束される。


そこに急いで近付いてきたのは、デビットだった。




「ダニエル、貴方の始末は後で決めます。地下牢で頭を冷やしなさい」


「ッ!」




そう言ってダニエルを引っ張り起こし、他の司祭に預けた。


ダニエルは抵抗しながらも、そのまま地下牢へと連れていかれる。




レイは、そんなやり取りをただ呆然と眺める。


ダニエルの言葉を聞き、レイの心は一気に地の底へと落ちていた。


そして、自分の置かれている現状に当惑していた。




「はぁ…はぁ…っ」


(いやだ……認めたくない…っ)




金色の瞳からは、光が失われていた。




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