7-5
「あなたは……まず、魔力を持っています」
「……っ」
その瞬間、レイは顔をしかめた。
望んでいなかった答え。
想いと反する結果が、レイの胸にズンと重くのし掛かる。
エリオットはそんなレイの表情に気付いた。
(ローレンヌ司教の言った通り……魔力は望んでいないようだな)
レイの様子にどこか納得した表情を浮かべつつ、エリオットは淡々と続ける。
「その魔力は、かなり質が良いです。その純度の高さから専属魔力と呼んでも良いでしょう。
そして、その属性は、"光"。
かなり希少なものです」
「……」
レイは、険しい目つきでエリオットを見つめ返す。
その背後では、ざわめく声が教会に広がっていた。
「すごい…!」
「光属性だって」
「羨ましい……」
称賛と羨望の入り混じる声。
その一つひとつがレイの胸に棘のように突き刺さる。
(こんな魔力……欲しいなら、くれてやりたいくらいだ……)
レイの心は、暗く深い底へと沈んでいく。
だが、エリオットの声は容赦なく続いた。
「種族については、魔力量が多く、真髄の完璧な把握に至りませんでした。わかったのは、人間と……異種族の"混血"である、という事です」
「……混血……?」
レイは目を見開き、戸惑いに満ちた目でエリオットを見つめた。
"ハーフ"だと、一度も考えた事のないレイ。
その現実をなんとか受け入れようと、"混血"という言葉を心の中で何度も繰り返す。
「それと、精霊のシンボルも見えました。今後、何かをきっかけに、精霊と心を通わせる事があるかもしれません」
(精霊……!)
昨日聞いた不思議な声を思い出し、レイは少し腑に落ちたような表情を浮かべる。
教会内の人々は、今回の儀式で初めて出た"精霊"と言う言葉に、一層騒がしくなる。
「精霊!?」
「珍しい……」
「あの子は何者…?」
レイが、ざわめく声や気配に気を取られた…
その時---
「レイ・シェルマン」
声を掛けられると同時にエリオットからグッと手を握られる。
驚いたレイはハッと顔を上げると、目の前にエメラルドの瞳があった。
「この後もう一度、鑑定をしましょう。もう少し時間を掛けて、あなたの事を見させて下さい。宜しいですか?」
その声は穏やかだが、眼差しは真剣だった。
ジッと無言で懇願してくるエリオット。
レイは戸惑いながらも小さく頷く。
「は、はい…」
それを聞いてエリオットは頷くと、握っていた手をゆっくり離す。
「ご健闘を、お祈り致します」
そう言ってエリオットは微笑んだ。
その表情と優しい言葉に、レイは少し申し訳ない気持ちを抱く。
(嫌なエルフさん、じゃなかった……そう思ってて、ごめんなさい)
レイは色んな意味を込めて、エリオットにペコリと頭を下げる。
そして、背中に突き刺さる熱い視線を感じながら振り返った。
羨望、嫉妬、期待---様々に送られる眼差しが、レイにとっては煩わしかった。
(魔力なんて、欲しくなかったのに……)
頭を上げず下を向いたまま、レイは足早に席へ向かう。
そして、心を落ち着かせる為、席に着いた時のサムを思い浮かべた。
(サムは、どんな反応するだろう……)
そう思った時、レイの中に、ふわりと温かい気持ちが込み上げた。
レイは、少しだけ足取りが軽くなり、歩みを進める。
そして、ちょうど身廊の中央に差し掛かった次の瞬間---
ガシッ
「!?」
不意に、背後から肩を掴まれる。
レイは反射的に身体を震わせ、すぐに振り返った。
そこには居たのは、濃い紫色の髪を揺らしながら、射抜くような藍色の瞳をレイに向ける青年。
教会内の空気が、一瞬にして張り詰めた---。
.




