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竜血少年は、力加減が難しい  作者: moai
第一章:始まりの儀式
22/78

7-4



一方その頃、エリオットは、丁寧かつ慎重にレイの魔力を辿っていた。




(……この魔力、すごい量だ)




エリオットは、レイの身体を巡る膨大な魔力と、経験の無い未知の魔力の流れに、驚きを隠せなかった。




うねりを上げるようにうごめく魔力は、一般的に見る魔力ではなく、良質で澄んだ色をしていた。




それを見て、エリオットは更に眉間の皺を深くする。




(どういう事だ……この魔力、量も質も卓越している。もはや、専属魔力と言っても良い程だ)




見たことの無い魔力に、思考を巡らせるエリオット。




( これで覚醒をしていないという事は、種族に秘密があるのか?)




エリオットは、自問自答を繰り返し、あらゆる可能性を考えながら、不思議なレイの魔力を探っていく。




そして、魔力の流れの先に現れる大きな光の塊---"魔力の核"を見つけ、核の中を覗き見る。




(覚醒がまだなら、核の"蓋"を開け過ぎないようにしなければ。魔力が一気に溢れ出し、暴走する可性もある……)




更に集中力を高め、慎重になるエリオット。


エリオットは、核の隙間から核心に触れようとしていた。




(核の底に浮かぶ"真髄"さえ見えれば、種族や魔力の属性がわかるんだが……)




核を覗くエリオットは、またも顔をしかめる。




(核の底が、深過ぎて見えない……っ!?)




初めて経験する現象に、エリオットは焦りを覚えた。




(しかも魔力が多過ぎて、真髄が見つけられない……こんな事が、あるのか?)




エリオットが疑問を浮かべながら息を呑む。


そして一度、核から離れ、レイの身体を流れる魔力を観察する。




(この色、温もり、感覚からして……"光"。


 かなり珍しい属性だ)




柔らかく、温かく、そして手強い。


エリオットは、そんな太陽の陽だまりのような"光の魔力"を感じ、只者ではない事を直感する。




(これ以上は危険か……? いや、もう少し"蓋"を開けてみるか)




周囲の鑑定の気が消えるのに気付きながらも、一気に集中力を上げ、レイの真髄の探索に再び挑むエリオット。




(この筋の魔力の流れが均一だ……これなら真髄が、見れるか?)




エリオットの額に汗が浮かぶ。




それを見ていたコリーとマッシモ。


その表情は、真剣なものに変わっていた。


教会内も、長引く鑑定にざわつき始める。




そんな教会の様子にも気を取られず、エリオットは遂に見つけ出す。




(見えた……真髄だ)




ついに、魔力の奥底。




光の中に浮かぶ象徴---それは、人間のシンボルと……もう一つ、精霊のシンボルを見たエリオット。




そして、珍しい事に人間のシンボルが、精霊のシンボルを包み込んでいた。




見た事のない象徴に、エリオットは再び驚かされる中、その奥に潜むシンボルに意識を向ける。




(そして、もう一つの力の根源が……)




エリオットが核と魔力の隙間をぬってシンボルを目にするが---、




「ッ……!?」




レイのもう一つの根源を見た時、エリオットは衝撃のあまり目を見開いた。そしてすぐに、光に包まれるレイの姿を驚愕の眼差しで呆然と見つめる。




エリオットの突然の反応に、コリーとマッシモは何が起きたのかと眉をひそめ、エリオットとレイの様子を見つめる。




今までで一番長い鑑定に、教会内は異様な雰囲気に包まれていた。




エリオットは、一瞬苦虫を噛んだような表情を見せるが、スッと表情を元に戻すと、鑑定を終わらせた。








レイは身体をまとう風が消えていくのに気付き、ゆっくりと目を開く。




(長かった、気がする)




そう思い顔を上げると、エメラルドの瞳とぶつかる。その瞳は何処か迷いを浮かべ、揺らいでいるように見えた。




「?」




不思議に思うレイに、エリオットが心配の色を見せ、小声で話し掛ける。




「鑑定が長くなった…気分は悪くないか?」


(気を、遣ってくれてる……?)




レイはエリオットの態度に驚きながら、コクリと頷いて見せる。それを見て、エリオットは安心したように少し笑みを浮かべた。だが、すぐに真顔になると、顔を上げコリーとマッシモに合図をする。




エリオットが浮かべる初めての表情に、コリーは動揺しながらも鑑定の結果を目の前の少年に伝える。




そして、訪れる静かなる沈黙---。




その静けさ破るように、エリオットの低く凛とした声が、教会内に響き渡る。




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