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竜血少年は、力加減が難しい  作者: moai
第一章:始まりの儀式
21/77

7-3


「……!?」


「お、次レイじゃん!」




サムが声を弾ませ、期待を込めた笑顔を見せる中、レイの心の内は、驚きと焦りでいっぱいになっていた。




(神様……何故、あのエルフさんなんですか…っ)




無表情を装ったまま、レイの気持ちは鉛のように重く沈む。




前方でレイを待つ司祭----エリオット。




エリオットをチラリと見るレイは、言い知れぬ不安と戸惑いに襲われた。




「レイ、いってこいよ!」


「う、うん……」




(行くしかないっ)




サムの明るい声に背中を押され、レイはやっとの事で足を動かす。




しかし、歩みを進めるレイの足は、足枷がしてあるように重かった。




中央通路を進む度に、両脇に座る参列者から注がれる視線---。


そして、側廊に立つ司祭達からの突き刺さるような気配---。




レイは、その圧に押し潰されそうな感覚を覚えた。




(通路、こんなに長かったっけ……)




レイは、遠くに見えるエリオットを見て、足を止めそうになる。


その様子は、周囲の人々や、正面に立つエリオットからもはっきりと見てとれた。




(レイ・シェルマン、何をモタモタしているんだ?)




レイの異変が気になりエリオットは、訝しげな表情を見せる。周囲からも心配の声がヒソヒソと聞こえてきた。




そんな中、レイは静かに目を見開く。




(あぁ、そうか……。


 僕は、鑑定……されたく無いんだ……)




レイは重い足を一歩一歩進めながら、自身の奥にある心の声に気が付いた。




今まで、魔力を持ちたく無いと切に願ってきた。もしここで、魔力を持っていると鑑定されたら、自分を失ってしまいそう、そんな想いが一気に溢れてきたのだった。




(ダメだ……足が、動かない)




その瞬間だった---。




後ろから軽やかに駆けてくる音が響く。


そして、レイの背中にトンと暖かい温もりが添えられた。




「レイ、大丈夫だ」




「……っ!」




振り返ったレイの目に映ったのは---


いつも通りの笑顔を湛えたサムだった。




レイを見るサムの目は真剣で、それでいて柔らかいものだった。


レイの中に積もっていた不安が一気に溶けていく。




「……うん」




レイの頬は、ふと緩んだ。




そして、前方へ向き直ると、一歩足を踏み出す。


すると足枷のような重みは、すっかりなくなっていた。




(サム……ありがとう)




先程とは打って変わり、軽やかな足取りで進んでいくレイ。


遠くに見えていたエリオットだったが、いつの間にか目の前にたどり着いていた。


既に、コリーとマッシモの前には少年達が立っている。




レイは、エリオットと静かに目を合わせる。




(……綺麗なエルフさんだなぁ)




エリオットの吸い込まれそうなエメラルドの瞳を見たレイは、自分がそう思える程落ち着いている事に、少し驚く。




すると、エリオットが両手を差し出す。




「では、手を」




レイはゆっくりとエリオットの手に自分の手を乗せる。




暫くの静寂---




間もなくして




「「「鑑定」」」




3人の司祭の声が聞こえた。




その瞬間、レイの身体の周りに、柔らかく温かい風が吹き上げてくる。




レイは思わず目を閉じた。




(なんだ、これ……)




レイは、立ち上った風が、そのまま身体の中を巡るような感覚に驚く。




(身体の中を、覗かれてる……?)




何か探られているような、覗き込まれているような、くすぐったいような感覚。


けれど、それは不思議と嫌ではなかった。




今まで味わった事のない体験に、期待と不安が入り混じる。






この風の行方はどこに向かうのか…、


そして、その風は何を告げるのか……。




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