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竜血少年は、力加減が難しい  作者: moai
第一章:始まりの儀式
20/77

7-2



その後も『鑑定の儀式』は、粛々と行われた。




多くの子供達は”人間で、魔力は持っていない”という鑑定結果を告げられ、少数の子供はハーフや、魔力保持者と鑑定されていた。




(やっぱり、魔力が無い人間が多いんだなぁ……)




レイは鑑定の光景を眺めながら、以前に勉強会でローレンヌが言っていた事を思い出す。




––––「エルフと獣人は、生まれながらにして魔力を備え持っている者がほとんどなのじゃよ」




そんな記憶が頭をよぎった時、教会内に響いた声がレイを現実に引き戻した。




「サム・ブラット」


「「!」」




その声を聞き、サムとレイはピシッと背筋を伸ばす。


サムが素早く立ち上がると、レイに向かって意気込みを見せた。




「うっし、行ってくる!」


「うん……いってらっしゃい」




レイは、緊張の面持ちのサムを真剣な眼差しで見送る。


硬い表情だが、堂々と歩んでいくサムを、レイは身を乗り出して見守った。


サムはコリーの前に立つと、軽く促され、コリーの手のひらにそっと手を重ねる。




(サムなら……大丈夫)




レイは、親友の後ろ姿を眺めながら、自分の鼓動が早くなっていくのを感じた。




やがて、司祭達が目配せをする。




次の瞬間––––、




「「「鑑定」」」




重なる声と共に、サムの身体が金色の光に包まれ始める。


サムはギュッと目を瞑ると、そのまま光の中で身を委ねていた。




(……無事に終わりますように)




鑑定されるサムの姿をジッと見つめるレイは、その鑑定の時間を長く感じていた。




暫くすると、マッシモとエリオットは鑑定を終え、光がふわっと消えていく。


しかし、サムは依然として金色の光に包まれたままだった。




(あれ、サムだけ…まだ鑑定中…?)




レイは、サムだけが鑑定されている状況に、不安を覚えた。




他の司祭達も、鑑定を続けるコリーの様子を心配そうに見守る。


教会内も儀式が始まって以来初めての状況に、少しずつ騒めき始める。これまで静かだった教会に、微かな不穏な気配が漂い始める。




「サム……っ」




思わず小さく名前を呟いたレイは、両手をギュッと組み、祈るように胸元で握りしてめた。




やがて、サムの身体を包む黄金の光が、徐々に薄れていく。


同時に、サムとコリーは静かに目を開いた。




「……ふぅ」




張り詰めていた集中が解け、コリーがゆっくりと息を吐いた。その額にはじんわりと汗を浮かべている。


サムは呆然としたまま辺りを見渡しながらも、安堵の表情を見せていた。




(良かった……!)




サムの表情が見え、レイはホッと胸を撫で下ろす。




前方ではコリーが、エリオットとマッシモの方を見て、「お待たせしました」と苦笑していた。


それを見て、2人もやわらかく微笑み頷く。




コリーは2人の表情を見て安心すると、サムに向き直り、ゆっくりと息を吸い込んだ。




「時間が掛かって、すみません。


–––サム・ブラット、あなたの種族は人間。魔力を持っています。そして……”専属魔力”も保持しています」




「「!!」」




コリーの言葉にサムは目を輝かせ、レイも表情を明るくした。




(サムに、専属魔力が……!)




目の前の事実に、レイの胸が高鳴る。




「魔力の量も、かなり多いと思われます。


属性は…”土”。少し珍しい属性なので、私だけでは断定出来ません。この儀式の後に、他の司祭にも確認して頂く事になるでしょう」




「わ、わかりました…っ」




コリーの優しい物言いに、サムは少し戸惑いつつも素直に頷く。それを見てコリーも頷き、サムに目線を合わせ、微笑みを見せる。




「ご健闘をお祈り致します」




コリーの穏やかな声に、サムはジワジワと嬉しさが込み上げてくる。




「ありがとうございます!!」




サムの嬉しそうな声が教会に響き渡る。サムはコリーから手を離し、急いで席へと足を向けた。


コリーは額の汗をそっと拭いながら、その姿を見送った。




続いての鑑定結果が告げられる中、サムは凄まじい勢いでレイの元へと戻ってくる。




「レイ! 聞いたッ––むぐぅ!?」




戻ってくるなり、興奮気味に話しかけるサムの口を、レイが慌てて両手で塞いだ。




「サム、声抑えて……!」


「むぐっぐ……っ」




おとなしく頷いたサムを見て、レイはゆっくりと手を離す。




もどかしさを抱くサムに気付き、レイは小さな声で微笑みながら囁いた。




「おめでとう、サム」




レイはそう言って、お祝いを述べると、拳をサムへ向けた。


サムは嬉しそうにニカッと笑い、




「サンキュ!」




と、同じように小声で言うと、レイの拳に拳をコツンと当てる。




「だけどさ、属性が”土”って……地味すぎじゃね?」




小声を維持しながら椅子に腰掛けるサムは、納得のいかない顔を見せる。




「でも、珍しいって言ってたよ?」


「うーん、まぁそこは……ちょっと嬉しかった」


「ふ…っ、そうなんだ」




レイは、サムの素直な反応に思わず微笑みを漏らす。




そんな中、マッシモの前に立っていた少年が席に戻っていく姿が映る。


そして、コリーが名前を呼び、続いて中央のエリオットがハッキリと名を告げた。






「レイ・シェルマン」






–––その瞬間、レイは一気に表情を曇らせた。




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