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竜血少年は、力加減が難しい  作者: moai
第一章:始まりの儀式
19/70

7-1



内陣へ上がり、参列者達から見て左側に佇む木製の主祭壇へ向かうローレンヌ。




ローレンヌの姿を、身廊に座る子供達や親達、そして側廊に立つ司祭や信徒達と共に、レイも静かに見守った。




厳粛さと重みを湛えた沈黙が、教会を包み込む。




張り詰める空気の中、ローレンヌが主祭壇の前に立つと、続いて内陣へ上がったデビットが、主祭壇の左斜め前へと移動する。そして、参列者の方へ向き直ると、ゆっくりと顔を上げ、語り始める。




「皆様、本日はお集まり頂き誠にありがとうございます。


本日ここに集まった若者達が、この16年を健やかに生き、成長された事、心よりお祝い申し上げます」




深く頭を下げ、再び顔を上げるデビットの声は、教会の天井高くまで静かに響き渡った。




「この"鑑定の儀式"は、708年の時を重ねてきた、我々にとって重大な伝統の儀式です。


そしてそれは、あなた方の人生の大切な分岐点ともなり得ます」




教会内に緊張を含んだ静寂が広がっていく。


デビットは一呼吸おき、言葉を続けた。




「ですが、どうか恐れないで下さい。


この鑑定で示された特性は、あなたそのものです。拒むのではなく、受け入れてあげて下さい。


そして迷い悩んだ時には、どうか独りで抱え込まず、ご家族や私達、周囲の人々を頼って下さい。


それが、きっとあなたを救う鍵となるでしょう。


---忘れないで下さい」




デビットの柔らかながらも真っ直ぐな眼差しが、参列者一人ひとりに注がれる。




しばしの静寂の後、デビットは大きく息を吸い込み、声を張った。




「それでは、『鑑定の儀式』を執り行います。


鑑定士は、前へ」




教会に響き渡るデビットの声と共に、教会内は期待と不安が入り混じり、空気がピンと張り詰めた。




(……始まった……)




レイは自然と右手を左胸に当てた。


いつもなら緊張する筈の鼓動は、先程のサムの魔法のおかげで落ち着いている。




その時、側廊から3人の司祭––––コリー、エリオット、マッシモが静かに内陣の前に歩み出た。


それを見て、レイは見覚えのある司祭に釘付けになる。




(あの人……!)




レイは、先程食い入るように見てきたエリオットの存在に気付いた。




(僕を見てたエルフさん……鑑定士だったのか……)




エリオットに鑑定されないようにと内心祈りながら、前に整列した3人の司祭を見る。




「これより3人の司祭が、それぞれ名前を呼びます。呼ばれた方は、指定された司祭の前へお越し下さい」




デビットの合図と共に、コリーから順番に名前を呼び始める。


呼ばれた3人の子供が、おずおずと動き出し、各々司祭の元へと歩み出す。




(鑑定って……どんな風にやるのかな……?)




興味と不安の入り混じるレイは、中央通路に立つエリオットを見つめる。


チラリとサムを見ると、サムも身を乗り出し、顔を覗かせて様子を伺っていた。


その姿を見て、レイの頬が思わず緩む。




次の瞬間––––




「「「鑑定」」」




3人の司祭の声を揃えると、司祭の両手に手を重ねる子供達は、瞬く間に黄金の光に包まれていった。




「!」




その光景を見て、レイは息を呑んだ。




エリオットは目を瞑り、黙ったまま何かを読み取っている。


エリオットのまとう空気は、張り詰めたままひと筋の揺ぎもなかった。


少しすると、黄金の光がふわりと消え、エリオットが目を開ける。




(…今のが"鑑定"……すごい…!)




レイは初めて見る神秘的な状景に内心感動していた。




同じようにコリーとマッシモも鑑定を終わらせ、3人が目を合わせると、最初にコリーが口を開いた。




「あなたの種族は人間。魔力を持っています。量はやや少なめ。専属魔力は確認出来ませんでした。––––ご健闘をお祈り致します」


「は、はい!」




明るく返事を返す少年は、魔法が使える事に喜んでか、顔を綻ばせながら足早に席へと戻っていく。


続いて、エリオットが話し出す。




「あなたは、人間と獣人のハーフ。魔力を保有しています。さらに専属魔力を保持しており、属性は”水”です。魔力量も平均的です。––––ご健闘をお祈り致します」


「あ、ありがとうございます!」




少女は微笑むエリオットに言われ、顔を紅潮させながらお礼言うと、席へ戻っていく。


少女が席に戻る姿を見届けたマッシモが、静かに口を開いた。




「あなたは、人間です。魔力、専属魔力は持ち得ていませんでした。––––ご健闘をお祈り致します」


「はい…」




少し落ち込んだ表情を見せる少女は、俯いたまま席へと戻った。


それを見計らい、コリーから順に名前が呼ばれ、新たな3人の子供達が前へ進んでいく。




(なるほど、こんな風に鑑定されるのか)




レイは鑑定の流れを理解し、少し安心する。




そして、最後にマッシモに鑑定された少女の落胆した背中を見つめた。




(……僕も、あんな結果だったらいいのに……)




レイは心の中で羨望の眼差し向けていた。




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