6-1
森を抜けてたどり着いたのは、アクリ村よりも人口が多く、賑わいを見せる街––アルラユ。
レイとサムは、この街の中心にある教会へ向かって歩みを進めた。
月に一回礼拝の為に訪れるレイとサムにとって慣れた道である。しかし、今日が『鑑定の儀式』の日の為か、通りのあちこちが華やかに飾られており、2人の心をふわりと和ませた。
大通りを抜け、街の中心の広場が現れる。
「ついに、きたな」
足を止めて教会を見上げるサムに、レイは頷く。
教会前は、鑑定の儀式に参列する子供達、またその両親らで溢れかえる。
「「ふぅ…」」
2人は同じタイミングで息を吐く。
「き、緊張してきた…」
レイがげっそりした表情を見せると、サムはバシッとレイの背中を叩く。
「いッ…!」
「おいおい、辛気臭い顔すんなよ!」
サムが緊張を吹き飛ばすように声を張る。
レイはサムの腕っぷしの良さを恨みながら「そうだね…」と歩みを進めるサムの後をついて行った。
*
教会の扉の前には机が置かれ、集まった者はそこで名前を書いている。サムとレイも同じように列に並ぶ。
すると、サムが違和感に気付き、レイに耳打ちした。
「おい、レイ。さっきから司祭様に見られてねぇか?」
「え?」
サムに小声で言われ、顔を上げるレイ。
サムの言う通り、行き交う司祭達からチラチラと見られていた。
「レイ、いつの間に有名人になったんだよ? それとも、ブラックリストにでも載ってんのか?」
「……僕、何も、した覚えないけど…」
謎の不自然な視線を受けるレイ。
その視線の意図が分からず不可解に思うレイとサムは早く中に入ろうと急いで名前を書き終える。
2人がそそくさと開かれている重厚な扉を潜り中に入ると、舞踏会のような盛大な飾り付けが2人を迎えた。サムとレイは目を輝かせる。
「すっげー! いつもの教会とまるで違うな!」
「そうだね…!」
サムに賛同しながら教会の隅々を見渡す。そして、いつも座る後ろの席へと腰掛けるレイ。サムも隣に座り、辺りを見渡していた。
いつもと違うのは、飾り付けだけではなかった。
レイは、昨日から感じる視線や話し掛けられているような感覚を覚える。
(…昨日より、すごく沢山感じる…人が居るからかな?)
レイもキョロキョロと周りを見る。
すると、ジッとこちらを見てくる耳の尖った金髪の司祭に気が付いた。
その視線は、まるで何かを探るような眼差しだった。
(え……僕を見てる?)
そう思いながら、凝視してくる司祭からゆっくりと視線を外すレイ。
自分の何が気になるのか、思い当たる節を巡らせる。
しかし心当たりが見つからず、レイはこの視線の理由をもんもんと悩んだ。
その間もエルフの司祭は、まだ視線を送り続けてくる。
(僕、一体、何したんだろ……?)
.