7-2
外は、春だというのにひんやりとしている。
肌に触れる柔らかい風は少し冷たく、レイは思わず身震いする。雲に覆われた空からは、所々隙間があり、光を差していた。
ロリエンは家から少し離れた広い庭に出ると、ギルミアとレイを迎えた。
「さて、ウィア。私が一方的に話してしまうでしょうが、違う点があれば、いつでも訂正して下さい」
ロリエンがいつも通りの落ち着いた声色で話しかける。レイは生唾を飲み込み、大きく頷いて見せた。
「ではまず、国家警備機関ーー所謂、警備隊の知り合いの伝手で、『ウィア・ブラット』という子供を探している人はいないかと聞いた所、そんな問い合わせはない、と言われました」
レイは、話の出だしから衝撃を受ける。
まさか嘘の名前である事を最初に言われるとは思ってもおらず、レイの鼓動が一気に早くなった。
ギルミアも驚いたようで、顔を歪めながらレイへ視線を向けてくる。
ロリエンは、話を続ける。
「教会にも知り合いがいるので、同じ事を聞きましたが、そちらも、そう言った話はありませんでした。ただ……」
「?」
穏やかな表情を崩さず、手を顎に当てるロリエン。
レイは首を傾げる。
「『預かっている子供がいるなら特徴を教えてほしい』、と聞いてきました。あちらも察しの良い方ばかりで。まぁ、そこは、上手くかわしましたが……」
ニコリと笑うロリエンに、レイはびくりと身体を震わせた。
「つまり、教会側は、探している子供がいる…という事になります」
「!」
レイは脳裏にエリオットの姿を浮かべる。
「前に、『故郷は、西側辺りではないか』と聞いた時、貴方は頷きましたね」
「は、はい……」
レイが素直に頷いた。
ギルミアは静かに二人の会話を聞き続けている。
「貴方の生活や身なりからして、恐らく街ではなく村に住んでいて……何者かに襲われ、森を通って連れ去られていた……」
ロリエンが一呼吸、間を入れる。
「そして、"鑑定の儀式"以降、教会の者が頻繁に出入りしている村があると、とある筋から聞きまして……そこから、貴方の故郷は、今話題の"アグリ村"ではないかと考えました」
「……!」
レイは目を見開いた。
その情報だけで、アグリ村が出てくるだろうか、とレイは圧倒される。
ロリエンの考察力に、恐怖すら感じ始めた。
「アグリ、村……?」
ギルミアは、村の名前を聞いた途端、明らかに動揺している様子だった。
「ここまでは、良いですか?」
フワリと余裕の笑みを見せるロリエンに、レイもギルミアも緊張の表情を見せた。
そんな二人をゆっくりと一瞥すると、ロリエンは静かに問い掛ける。
「貴方は、魔力を持っていますね?」
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