6-2
「ウィア、大丈夫ですか?」
ロリエンの声が聞こえ、レイは目を開ける。
だが視界は白く霞み、ロリエンの姿どころか、輪郭まで捉えることが出来なかった。
どうやら朝が来たようだ。
目はほとんど見えないが、眩い光だけが強く感じられた。
それに呼応するように、胸の奥で金色の光が揺らいでいる気もした。
「ロリエン、さん」
レイが身体を起こそうとするが、身体が鉛のように重く起き上がれなかった。更に、ズキズキと頭が激しい痛みに襲われ、レイは苦しむ。
すぐにロリエンに制止された。
「起きてはダメです。酷い熱ですから」
ロリエンの声は穏やかだったが、その裏に焦りの色が滲んでいた。
(え……こんなに身体が熱いのに、寒気は全くない?)
レイが不思議に思っていると、そっとロリエンの手が額に触れる。ひんやりとした感触が心地良く、レイは思わず目を閉じた。
「……今ギルミアが食べやすいものを作ってくれています。それを食べて、解熱剤を飲みましょう」
ロリエンが心配の色を含めた声色で伝えてくる。
レイは素直に頷いて見せた。
ここ数日の体調不良……何かが押さえ付けられているような、この感覚はーー。
レイの思考が停滞している中、ロリエンが頭を撫でてくる。レイはその心地良さに、頭痛が少し和らいだ気がした。
すると、ロリエンの声が耳に入ってくる。
「ウィア。昨日のダイモンリリーの蜜を採る際、何か感じましたか?」
「え……?」
痛む頭を回転させ、昨日の事を思い出す。
「甘い……香りが、しました」
「そうですか」
ロリエンがゆっくりと息を吐く。
「……やはり、これが限界ですね」
その呟きには、何かを見極めたような響きがあった。
その声色は暗く、レイは不安を覚えた。
この日、解熱剤を飲んでも熱は下がらず、レイは1日中ベッドの中にいた。
ギルミアとロリエンは、ポーション作りを中止して、順番にレイを診てくれていた。
レイは、時折目を覚ます度に、二人への申し訳ない気持ちが胸に広がった。
この日のギルミアは、怒る事なく、優しく接してくれた。
無言でタオルを絞り、レイの額にそっと乗せてくるギルミアは、ぶっきらぼうに「…何かあれば言えよ」とだけ言って、常に気遣ってくれていた。
(ギルミア、昨日より優しい気がする……)
レイは苦しむ中、心の奥で温かな気持ちを抱いていた。
夜は、ロリエンが調合した薬を飲んだ。
その薬には睡眠薬が入っているようで、薬が効き始めると、レイは急激な眠気に襲われる。
その時ーー。
「ウィア、もう、時間がありません……」
ロリエンの静かで低い声が耳に入ってきた。
「明日は、少し覚悟しておいて下さいね」
霞む視界の中、ロリエンからそう言われ、レイは嫌な予感を胸に、深い眠りにつくのだった。
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