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プロローグ
とある街の中心に佇む教会。
本来なら祝福される筈の”鑑定の儀式”の日–––。
1人の少年は教会の中心で、暴走する魔力の制御が出来ず、
そして、その魔力の多さにより与えられる痛みに苦しんでいた。
もがく少年の瞳に映るのは、息を飲む司教や驚愕の表情の親友、そして、恐怖と好奇の入り混じった目で見つめる、名も知らぬ人々。
(こんな力、僕は、いらないのに……!)
平和に生きたい、ただそれだけを願っていた少年は、
内側から張り裂けんばかりの苦痛を与えてくる力になんとか抗おうとする。
だが、海の荒波のように押し寄せる魔力の波に耐えられず悔しさを滲まし、
ついに溢れ出る慣れない力を抑えきれなくなる。
「ぅう、くっ、ァアアァァアアアアアアアアア…!!」
少年に不釣り合いな黄金の瞳に鈍い光が宿り、教会を震わす程の叫びが響き渡る。
悲痛の叫びが、周囲を硬直させた。
少年は自分の運命を恨んだ。
なぜ、力を与えられたのか。
なぜ、他の誰でもなく自分なのか…。
なぜ、自分が、”ドラゴンと人間の混血”なのか–––と。
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