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駅弁大学のヰタ・セクスアリス  作者: 深海くじら
第14章 原町田由香里2
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第94話 うちは旧いだけです。

 宴会の主役は、当然のことながらファインだった。

 なにしろ、英国留学中に参戦したダイハン世界大会で見事優勝したパーティーの紅一点だったのだから、当たり前だ。むしろ、祝勝会がこんな地方都市の小さな店で行われる方がおかしいくらい。



 ファインたちのパーティー『Rap_Element』の戦績(リザルト)は、逸郎もネットで見知っていた。

 リーダーのDuke.Rを筆頭に、CAP2010、ChemyJoe、そしてファインが操る|Jill_Fairytaleジル・フェアリーテールの猛者四名。国籍も年齢も性別も異なりネットでしか繋がっていない正体不明のその四人による快進撃は、ここ二年、留まるところを知らない。実際、国際的ゲームレビューサイトでも何度か取り上げられているほどだ。いわく「完全無欠のカルテットによる奇跡のジャムセッション」、いわく「CAPとChemyによるライトニングダブルと一撃で喉を切り裂くFairytaleのかまいたち、そしてそのすべてを指揮し演出するDukeの統率力」、いわく「タイムラグ・ゼロのパーフェクト・エレメント」等々。

 だが、逸郎だけは知っている。その三人こそが、合意の上でファインを集団強姦(レイプ)するチームなのだと。そしてパーティー名の本当の読み方はフランス語で『Rape Le Ment』(偽りのレイプ)であることも。

 自分だけが聞かされた数刻前の会話を、逸郎は酒席で回想していた。


          *


「おじさまったら、世界大会のために二人も呼んでたのよ。屋敷の一室、ていってもウィンブルドンのセンターコートくらいの広さがあるんだけど。そこに、これよりもさらに一世代新しいPCコンポーネント四セットと同期用のサーバが用意してあるの」


 逸郎が陣取るソファの向かいにいかにも高価(たか)そうなゲーミングチェアを転がしてきたファインは、部屋の一角に設えたタワーPCのセットを指差しながらそう話した。


「四つのコンポのそれぞれに収まった私たちは、有線で繋がってるHMDと専用のコントローラーやキーボードを駆使してプレイしたの。普通ならネットを通してやりとりする音声指示なんかも、すべて肉声かイントラで。そりゃタイムラグもあるわけ無いよね」


 バスローブ姿のままでゲーミングチェアに腰掛けたファインは、逸郎の目の前で優雅に足を組み替える。

 もちろん、と、ふくみ笑い。


「その部屋で『嘘じゃない方』もしたよ。優勝が決まった直後に」


 ね。と締めたファインは、逸郎にウィンクを見せた。


          *


「しかし、まだ信じられないよな」


 いつの間にか隣に座っていたシンスケが独り言のように言った。


「ホントですよね。ファイン先輩が、諸先輩方が束になってもまったく歯が立たない超絶弩級のゲーマーだということは、あたしも何度も目にしてますから知ってましたけど、まさか世界一とは。人生において世界一の人物の知己になるってのは、全人口の何パーセントに入るんでしょうかね」


 後ろには由香里もついてきている。

 こいつら、いつの間にこんな仲良しさんになってるの?


 ファインは先輩たちに囲まれてダイハンのレアステージ攻略法を伝授している。男性に囲まれるのは好きじゃない、と前に言っているのを逸郎は聞いたことがあったが、ファインの恋愛忌避を十分に知った上でゲーマー仲間として扱うサークルメンバーたちとの宴は、ファインにとっても気楽で楽しめるものなのかもしれない。


「ああやって皆の中心になって講釈垂れてる姿は、普通の人気者なんだけどねぇ」


「なに言ってるんですかシンスケ先輩は。あんな美人さんが普通なワケないじゃないですか。学業もトップクラスで教授陣の覚え良く、由緒正しい家柄で賃貸ではないマンションにおひとりで住んでいる。その上にどどんと乗っかる世界一。言ってみれば、ザ・勝ち組オブ勝ち組ですよ」


 (はた)で聞くとやっかみだが、ゆかりんの場合は心酔と云った方が近い。


「おまえさんだって家柄は良いじゃん」


 シンスケのツッコミにも由香里は秒で言い返した。


「うちは旧いだけです」

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