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駅弁大学のヰタ・セクスアリス  作者: 深海くじら
第9章 パレード
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第53話 お前それ高かったんじゃねぇの。

 どれくらいそこに立ち尽くしていたのでしょうか。

 イツローさんたちは、とっくの前に姿を消していました。ふたりがどこに行ったかなど、もう私には知るすべもありません。私は抜け殻になっていました。



 気づいたら、誰かが私に話しかけていました。

 ふたりの男の人でした。ふたりとも見知らぬ顔。たぶん二十代半ばくらいでしょうか。最前から彼らは、しきりに私に尋ねていたようです。どこかいいお店を知らないかとか、お茶飲みに行かないかとか、メシでもいいよとか、なんなら歌うんでもとか。

 肩に手を置いてきたりしてはいるけど怖そうな感じでもなかったので、私は逆に時間を尋ねました。七時過ぎでした。

 そこではじめて私は、ゆかりんのことを思い出すのです。きっと今は懸命に私のことを探していることでしょう。でもどこを探しているのかは私にはわからない。そういえば、見失ったときの待ち合わせのことを話していたはず。

 たしか、八時にたわわ書店。


「お茶も食事もカラオケも行きません。お友だちを待たせることになるので」


 ふたりの顔を交互に見上げながら、私はそのあとの言葉を紡ぎました。


「するだけでいいなら、行きます」


 半信半疑だったのでしょうか。男の人たちは顔を見合わせてから、私に向き直りました。


「マジで?! どこか、ホテル知ってる?」


 どうやらふたりとも旅行者のようでした。

 私は自分がなにをしたいのかはわかっていました。でも、それがどういうことになるのか、私がどうなってしまうのか、そんな未来のことには、まったく興味を失っていたのです。だから、淡々と答えました。


「ホテルなんかに行ってる時間はありません。お友だちが待っているから。私の知ってるとこでしましょう」


 そう言って私は歩き出しました。確固たる目的地をイメージして。



 歩いている間中、ふたりは私に話しかけてきます。すげぇ可愛い、芸能人みたいだ、とか、いくつ? もしかして高校生? とか、ほんとにしちゃっていいの? とか。そのひとつひとつに対し、私は、ほぼ無言で応じました。両側に立ち、肩や腰を抱いてくる男たちの手は煩わしく感じていましたが、いちいちなにか言うのも面倒だったので放っておきました。それでも調子に乗って胸を触ってきた方に、私は言いました。


「避妊はそちらでちゃんと責任持ってください。そうすればあなたたちの名前も連絡先も聞かなくて済むので」


 本当は最初に言ってもよかったのですが、やっぱりあとにしたのです。あのとき近くにあったコンビニは、イツローさんたちがパピコを買ったあのお店しかなかった。同じレジで、見ず知らず男たちであっても自分を貫くための避妊具を買って欲しくはなかったから。

 男のひとの片方が途中にあったコンビニに走って行って、コンドームを買ってきました。

 0.01ミリ×1ダース。

 お前それ高かったんじゃねぇの、とか、ばか、こんだけ可愛い()がタダで姦らせてくれるんだぞ、できるだけ薄い方がいいに決まってんじゃん、とかを私の頭の上で言い合っています。


          *


 河畔公園の茂みの奥にある、周りからは目隠しになっている狭い空き地を私は知っていました。前に槍須さんの動画撮影で使った場所です。

 声を掛けられてからここまで十五分くらいだから、あと三十分くらいはあるのかな。私はぼんやりと、そう考えていました。


 少し離れたところに立っている街灯の薄明りに照らされながら、私はスカートの中の下着を脱いで、横にあった枝に掛けました。クロッチが濡れて糸を引いていました。

 写真や動画は撮らないで、服は汚さないで、と念押ししたのを聞いていたのかどうか。じゃんけんで勝った男の人が、勢い込んで下着も一緒にチノパンを脱いだので、反り返ったものがばね仕掛けのように飛び出してきました。そのあとで思いだしたかのように避妊具のパッケージをいそいそと開け始めています。先に開けとけばよかったのに。

 男の人は、焦った手つきで装着しました。知らないひとのもの。大きさは槍須さんと同じくらいかな。ところどころ皮が裂けて滑らかな部分が剥きだしている名前も知らない木の幹に手を付き、少し脚を開いて尻を突き出しながら、私はそんなことを考えていました。

 下着を着けてないあそこが、短いスカートの中を巻く風で気持ちよかった。


 と、男のひとの手が私の腰をかかりました。ホントにいくよ、と言いながらスカートをまくり上げて。夜気に晒された裸の尻が、一瞬だけ震えます。私は無言で首だけ縦に振りながら、いきなりくるのかな、と思っていたら、尻全体に圧力がかかり、敏感なところに濡れて柔らかいものが当たってきました。ぺちゃぺちゃと水音がします。

 余裕があるときならばむしろ有り難いことなのですが、時間が少ないのだから前戯なんて省略してさっさとはじめてくれてもいいのに。そう思いはしたものの、久しぶりはやはり気持ちのいいものです。私も芯を刺激する細やかな動きを愉しむことにしました。いや、そんな悠長なものではなく、とても良かったのです。だって私は今日、イツローさんにこうして欲しかったのですから。この可愛くて短いワンピースだって、彼がどこででも、すぐに私を自由にできるよう選んだのだから。

 今ごろ彼はどこか私の知らない部屋で、ポニーテールの彼女に同じことをしてるのかもしれない。そうでなかったら、彼自身をあのパピコのように味わってもらってるのかもしれない。でもそんなことは知らないしどうでもいい。私の「イツローさん」はいま私の柔らかいところを犬のように舐め上げていて、ほどなく硬くなったもので私を貫いてくれる。


 最初の男のひとが入ってきたとき、私は悦びの吐息を漏らしました。

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