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駅弁大学のヰタ・セクスアリス  作者: 深海くじら
第4章 ヤリスちゃんねる
19/164

第18話 皆さんお待たせしました、ヤリスちゃんねる第22回のはじまりでーす。

■シーン1:導入部


・カット1(00:00:00.00~00:01:40.22)

─────────────────

3カメ:マンションの玄関ドアに固定したスマホカメラ

─────────────────

 短い廊下の奥、開け放しにされたリビングダイニングのドアの奥にソファの端が覗き、男の裸足らしきものが僅かに見える。部屋の音は綺麗に拾っている。ギシギシ揺れるソファベッドの音と激しい呼吸音、喘ぎ声、そしてなにかを出し入れするときの粘り気のある音。

 ドアベルの音。喘ぎときしみ音が止まり、耳を澄ませている様子。息を整えようとする深呼吸にかぶさり、もう一度チャイムが鳴る。


「マーチちゃん、出てよ」


「……え」


「上に乗ってるんだからさ」


 のそのそと動く気配がし、ソファベッドの上から白い脚がおろされる。


「そこのシャツ羽織るだけでいいじゃん」


 床に落ちた白いYシャツを拾いあげる白い腕。肩まで見える。ボブカットの髪がかかる裸の肩甲骨も。おろしたままの左脚は湿り気を帯び薄桃色に染まった内腿を遠景で見せてくれるが、肝心の部分は入口のドアフレームに隠れて見えない。

 シャツに袖を通す腕。立ち上がった女性の後ろ姿。男物Yシャツの裾から伸びる素足。三度目のチャイム。

 ボタンを下から留めながら、部屋を出てこちらに近づいてくる女性。口元には顔半分を覆う黒いマスク。目元はそのまま。お馴染みマーチちゃんである。相変わらず清楚系で可愛い。振り向いた時点ですでに下から二番目と三番目のボタンは留められていたが、廊下を進みカメラに近づきながらのボタン留めには手間取っている様子。合わせの隙間から胸の間に流れる汗が光る。ブラは付けていない。逆光で体の線が影になってYシャツを透過する。均整の取れた素敵なプロポーション。

 近づき過ぎて画角から消える女性。小声で返事をし、施錠を外してドアを開ける音。女性の顔を舐めながら外側に回転する画面。LAA(エンジェルス)のキャップにマスク、サングラスの男が画面に入ってくる。


「ごめんください……って、生マーチちゃんじゃん」


 男の後ろ姿。頭だけがゆっくり上下動。対象を舐めるように見ているのか。


「しかも生裸Yシャツ。もしかして、下も履いてないの?」


「……」


 リビング側からヤリスの声。


「山田さんですか? ようこそいらっしゃい。あんまり遅いんで、ちょうどふたりで運動してたとこ。いいから入って入って」


 マーチをすり抜けるようにリビングに向かう山田。すれ違いざま、わざと胸の先に触れるようにひじを上げる山田。躰をこわばらせるマーチ。




・カット2(00:01:40.23~00:02:00.05)

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2カメ:ヤリスの手持ちのGoPro

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 リビングの入り口を塞ぐように立つ山田。大柄で、上腕や胸の筋肉がTシャツを押し上げている。


「そんなとこ突っ立ってないで中入ってよ。マーチちゃんが入ってこれないじゃん」


 カメラが立ち上がり、ソファベッドに座ろうとする山田を回り込むように部屋の中央に移動。ソファベッドの手前側端に腰かけた山田は、横に放り出されているショーツを摘まみ上げ、軽く匂いを嗅ぐ。


「ここで、つい今しがたまで仲良くおふたりで運動されてたんですね?」


「そうそう。まぁウォーミングアップってとこかな。馴染ませといた方が面倒なくっていいでしょ、山田さんも」


 そう言いながら、マーチに山田の隣に座るよう促すヤリスの手。マーチ、山田の右隣に座る。浮いてしまうYシャツの裾の中身をカメラに映さないよう気を付けながら。

 ヤリス、ソファベッドのふたりを背景に自分が写るようカメラを置き、番組開始の案内をはじめる。


(タイトルC.I.)


「はい、どーも。皆さんお待たせしました、ヤリスちゃんねる第22回のはじまりでーす。今日のヤリスちゃんねるは特別編。お友だちで熱心な視聴者でもある山田さんの持ち込み企画『マーチちゃん、レンタルジョーバに大挑戦』を、これからやっちゃいます」




・カット3(00:02:00.06~00:02:55.11)

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1カメ:部屋の窓側の隅に固定された広角系のカメラ

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 上手にレースのカーテンが掛かった大きめの窓。正面やや右奥の壁に付けて置かれたソファベッド。マーチたちが座っている。その手前には、部屋中央の器具上に置かれたGoProと、それに向かって喋るヤリス。器具の下手のスペースにはベンチプレス用のベンチと、それをまたぐように置かれたバーベルスタンド。バーベルはバーだけで、ウエイトは付けていない。


「山田さんは、それはもう熱心なマーチちゃんファンなんだそうで、今まで出した動画も各回二十回以上ご覧になったとのこと。それだけでなく別とこで提供してるほにゃららな画像とかはにゃららな動画とかも全部購入してくださってるという素晴らしいお客様です。そんな山田さん、見ての通りのご立派な身体をお持ちで、ご趣味も皆さんのご想像通りウェイトトレーニングなんだそうです。で、この度ご自宅の筋トレギアを新しくされたとのことで、今まで使っていた器具を全部、マーチちゃんにプレゼントしたいと申し出てくださいました。その上、ご自身の愛機ジョーバもレンタルするので、チャンネルでマーチちゃんのレンタルジョーバ体験を撮りませんかと提案してくれたのです。パチパチパチパチ~。そこで今回はお礼も込めて、ご用意いただいた器具を使ってのマーチちゃんのインドアトレーニングの様子を、山田さんもご招待したうえで、皆さんにご覧いただこうという趣向なのです」


 ヤリス、話の途中で顔の向きを変え、こちらのカメラにフォーカス。大仰に手を振って、中央の器具を指し示す。


「数ある器具の中、今日マーチちゃんに挑戦してもらうのはこれ、ジョーバ!」


 座面に乗せているGoProを取り上げてジョーバのスイッチを入れるヤリス。ぐいんぐいんというかなり大きな音を立てて、馬の背部分が動き始めた。




・カット4(00:02:55.12~00:03:18.23)

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2カメ:ヤリスの手持ちGoPro

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 ジョーバのコンソールをいじって、より強く大きくなる鞍の動きを三百六十度で見せている。


「ちょっとボクが乗って試してみましょう」


 電源を落とし動きを止めたジョーバにヤリスが跨る。




・カット5(00:03:19.00~00:03:24.08)

─────────────────

1カメ:部屋隅の固定カメラ

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 GoProを片手にジョーバに跨る槍須。


「では、スイッチオン!」


 初期律動から徐々に大きくなる動きに合わせようとして、ヤリスはベストなポジションを探るのに懸命。




・カット6(00:03:24.09~00:03:48.20)

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2カメ:ヤリスの手持ちGoPro

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 ぐるんぐるん動き酔いそうな画面。


「あわわわわわ」


 慌ててジョーバの電源を落とすヤリス、動きが止まる。画面は明後日の方向。

 降り立ったヤリスは、ほんの十秒程度の乗馬にもふらつきながら、なんとかGoProをジョーバに向け、再び電源を入れる。

 無人のままぐいんぐいんと動くジョーバ。


「どうです、この動き。ただでさえ素敵なマーチちゃんのくびれが、さらに締まってビューチフルになっちゃうんじゃね、って感じですね」


 カメラをソファベッドのふたりに振る。山田はうんうんと頷いている。ジョーバの動きに釘付けになっているマーチに画面が寄る。


「どう、マーチちゃん。濡れてきたりしてない?」


 うつむいて顔を赤くするマーチ。




・カット7(00:03:48.21~00:03:56.14)

─────────────────

1カメ:部屋隅の固定カメラ

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 ソファベッドに座り躰を固くしているマーチに向かい、かがみ込んでGoProを寄せているヤリスが空いている左手を使い、早技でマーチのシャツの裾をまくり上げて、その内側に差し込んだ。斜めから捉える画面では、めくれたシャツの内側がノーパンであることはわかっても、白い太腿に遮られて肝心の部分は見えない。だが、背筋に電気が走ったかのように絶句するマーチの反応から、ヤリスが彼女に具体的なナニかをしたことがわかる。隣に座る山田の視線がマーチの股間に釘付けになっている。




・カット8(00:03:56.15~00:04:09.03)

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2カメ:ヤリスの手持ちGoPro

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 悪戯していた手が抜かれ、裾が乱れて露わになったデリケートゾーンを慌てて両手で押さえるマーチの下半身(カットの数フレーム前には間違いなく禁則の映像が撮れていた)をバックに、画面下からヤリスの左の掌が上がってくる。画面の真ん中で指先を合わせて離す濡れた人差し指と中指にピントが合う。指先の間に架かる光る糸。


「やっぱ濡れ濡れじゃん」


(F.O.)

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