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神様が人間に興味を持つ日

女は神の子供みたいな柔和な顔に付いていて薄く、リップクリームを塗っているような艶やかな唇を動かして紡いだ言葉に唖然としていた。あまりにも現実離れしている内容だったからだ。


「(私が御伽話に出てくる英雄になれる、、、。

いや、英雄は私みたいな非俗な奴ではなくもっと高貴な人がなるはずだ。私なんかになれるわけないし、なりたいとも思って、、、ちがう!

英雄なんて幻想的に美化されたものじゃなくて、私は!)」


女は下を向いていた顔をあげ、赤と緑の双眸をこの世界に見せる。


「英雄という言葉はやっぱり私にはしっくりこない。私は結局飢餓で死にかけている子供にも手をさし伸ばさない愚者だ。だから、まずは私だけがこの街で幸せにならないといけない。誰もが羨むような人生を謳歌している姿をこの街の腐りかけた人々に見せつける。」


神はただただ落胆と失望の瞳を浮かべていた。女な話はただの自己満足しかない。自分だけが幸せに?その姿を見せつけたい?それでは民衆は動かない。民衆を動かすには自己顕示欲ではなく永久不滅の意思が必要だ。今の女の話を聞く感じ意思ではなくただの希望的観測を言ってるにしか聞こえなかった。神はこの女を英雄する以外に飯を食える方法を空を見上げながら思索する。今から違う国に行くのが一番合理的なのかもしれないが、今にも胃袋が固形物を求めて咆哮を上げている。


「ただ、、、」


神が空を見上げて今後の方針を考えていると、女は先ほどの言葉の続きを口から吐く。神は視線から空から女に移す。神は金色の瞳を大きく広げる。女の瞳が神に対して「こっちを見ろ!」

と問いかけているような意思がそこにはある。


「私が人生を謳歌する姿を見て、勝手についてくればいい。結果的にこの街を救い出し、この糞みたいな街から不幸という暗雲を薙ぎ払い、幸せに満たされて、私のことを英雄と呼ぶ者が現れたら言わせとけはいい。」


神の腹にはもう空腹感が感じられなかった。逆に、熱い者が胃液をも逆流させ流れてくる。神はこの正体を知っている。それは形はないくせに不乱に変わる。遺伝子をも凌駕する完全な人間のアイデンティティ。それが女の赤と緑の瞳から溢れ出し、神を満たしている。女な瞳には確実に宿っている。永久不滅の意思が。

「人間の身分は生まれた瞬間に決まって一生変わらない。人間はそんな圧倒的に不利な勝負を無責任に浴びされられる。私もそうだ。誰も救えないスラム街の愚者だ。だから、私がこれからこの街を救ったとしても一生愚者のままだ。だからこの街、、、いやこの世界に挑まれた圧倒的に不利な人間に見せつけるんだ」


女は腕を広げて最後の言葉を言う。神には広げられた腕が雛鳥のちっぽけのの羽に見えた。確実に世界に羽ばたくちっぽけの羽を。神は、とっくに女の言葉しか鼓膜に入ってきてなかった。


「私がその不条理を噛み殺す愚者であることを。」


神はそこに英雄を見た。まだ女は言葉にしただけであって、目立った行動を一切してはいないが、神は見てしまった。あの瞳に宿る輝きを。神はたまらず笑みをこぼした。それは人の形をした生物がやっと人間に孵化したことへの喜びからである。神には本来人間如きで心踊りはしない。それは人間という生き物は自分勝手な解釈によって都合よく善悪を変えるからだ。権力者による同調圧力によって善悪や意志が変わることもざらにある。そんな弱い人間がこの世界を跋扈した現状を最初に見た神はただただ悲しかった。神が最初に創り上げたアダムとイムとは雲泥の差があったからだ。人間はいつの間にか権力者と庶民という二分化した構図を作り上げたせいで、意思の価値が尊重されず、歪曲されていった。今目の前の女は権力者に犯されない意思がその瞳に宿っている。女の永久不滅な瞳がいまだに神を貫いている。


「愚者であるのに英雄になる、、、とても面白い話だが、君は本当にこの不条理の世界を変えられるのかい?その根拠は?具体的な方法は?」


「根拠も具体的な方法もなくていい。私はあなたがいるから。」


女は先程の荘厳な口調から、年齢相応の女の子の口調で言う。


「あなたとなら私はなんとかなると思う、、、

まだ出会って間もないくせに何を言うのって思うかもしれないかもしれないけど、私の魂があなたと共に歩いていきたいと叫んでいるんだ。」


女は恥ずかしいのか頬がピンク色に火照っている。神はこの確証のかの字もない言葉を聞いて納得はしなかったが、運命という点はなんだかしっくりきた。神は好奇心に従うことにした。この女の運命とやらを見たくなったのだ。この醜い世界で生まれたのに、醜さに染まらないあの瞳の正体が知りたい。あの瞳に宿る永久不滅の意思がこの世界を救うのか、破滅に誘うのかが知りたくなった。神はいざってなれば相手の運命すら見通せることができるが、それじゃあつまらない。今神は興に乗っている。神すらこの女の出会いが運命的であると思うぐらいには。神はこの世界に来て初めて微笑んだ。女はそんな柔和で子供みたいな不純物のない綺麗な顔から漏れ出す笑顔を見る。女はなんだかむず痒いさを覚え、なおかつ神に触れてみたい感情が一瞬出たが、神が話出すタイミングと共に消えてしまった。


「君は俺に何を望む?俺は君になんでも与えるとしたら何を渇望する?」


「私をそばで見てて欲しい。」


女は一瞬違う言葉を口にしようとしたが、改めて違う言葉を言った。神は最終チェックの質問をしたが、まんまと求めていた答えが返ってきて安堵したのと同時にこの女が死ぬ瞬間まで見たくなった。この女といるとどんどん好奇心が溢れ出して、困ったものだ。


「いいよ」


神が短く返事すると、女は返事が返ってくるとは思っていなかった様な驚いた顔を浮かべる。


「君の運命を辿って見たくなった。」


女は満面な笑顔をし、赤と緑の瞳には嬉し涙が頬を伝っている。神は新しい本を捲る。紛れもないこの女の運命の本だ。この本はこの女が死ぬまでページが追加されていく。最高でも百年もすればこの本は終末を迎え、この本のタイトルも現れるだろう。所詮百年で終わるなら気長に読み進めようではないか。どんな結末でも。出会った場面が本に書き足される。この本は神の脳が作り出した架空の本だ。


「もう一つ欲しいものがあります!」


女は躊躇う様に口を動かした。指は交互に忙しなく動かしており、瞳もどこかよそよそしいが、先程の願いよりも言葉の力強さは強い様に感じた。神は身構える。これで金やら力が欲しいと言われたら、世界に溢れかえる欲まみれな人間どもと区別つかなくなる。そしたら、先程の好奇心も水泡に帰してしまう。


「名前が欲しいです。」


女は呟く様に言った後、改めて言葉にする。


「私に名前をつけて欲しいです!」


神は身構えでたのが馬鹿馬鹿しいほどの斜め上を行く答えだったのでなんだか拍子抜けした。 

それと同時に名が欲しいと要求してくる人間は会ったことがなかったので新鮮な気持ちになった。神は女の後ろから足音を感じる。ここは草原で草木が生い茂っているので、草木をかき分ける音も同時に聞こえる。肥満な体をし、顔には脂がびったりついているゴミが歩いてくるのが見えた。女はすごく名が欲しいのか、餌を待つ犬の様に神の答えを待っていせいで、迫ってくる男には気づいてないようだった。神はいいことを考えついた。それはとても残酷で、この街にはぴったりなやつだった。


「君が俺の課す試練を突破できたら名をつけてあげよう。」


女は試練の単語が聞こえていなかったのかと疑うほど歓喜の表情を浮かべている。神は女の後ろに目掛け指差す。女はそれに呼応して、後ろを振り向く。女は一気に恐怖に支配された。何故なら殺されそうになって女が逃げてきた不潔な男が確実に女目掛けて迫ってきているからだ。男には殺意と淫乱の感情がブレンドした漆黒の瞳を女に向けている。神は女に好奇心を抱いてることは確かだ。しかし、それだけしかない。女がもしこれで死んだとしてもそれはそれでいいと思っている。神には女の表情はが見えないが、さぞ恐怖していることは、肩が震えていることで容易に想像できる。この不条理を駆け抜けるのか、またもや、、、。神は好奇心が溢れ、微笑みながら告げる。


「さあ、この不条理を噛み殺せるか愚者よ。」










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