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神様が聖典を読んだ日

あれから何百年経ったのか。最下層の白一色の壁や床にはゴミどもの臓物やら血液が粘り気強く張り付いている。ゴミどもも数が増えればそれなりに厄介だ。日本人がこういうことを「塵が積もれば山になる」って言うことを思い出す。もう疲れた。この最下層で毎日毎日毎日毎日毎日ゴミどもの腹を貫き、そして切り裂いて、死体はほうきで集めて一箇所に集めて燃やすの繰り返し。この循環を繰り返すのか。神は死ぬことはないが、このままでは心が死んでしまう。青い炎で死体を燃やしながらそんな事を考えていると、横からトボトボと床を這って近づいてくる私のペットのアザラシが一冊の本を食らえてやってきた。


「クオ!クオ!!」


「腹が減ったからって本なんて食べちゃダメだぞ。」


私はアザラシから本を没収する。私はその本の表紙にやたら長いタイトルが羅列している。

私は長い長いタイトルを一文字目で追っていく。そこには「転生したらIQカンストしたので言葉を武器にして魔王を倒したいと思います。」

と長々と書かれていた。


「日本はアニメ大国だとは聞いていたがついにネタ切れでこんなタイトルしか浮かばなくなったのか」


私が毎日毎日人間ないし世界のためにこの赤黒い部屋でで心を削って頑張って世界を平和にしてやっているのに人間はそんな安息な地にいながらもこんな体たらくな本しか書けないことに憤慨した。私は本を青い炎の中に投げ捨てようと思ったら、横からアザラシが焦ったような様子で「クオ!クオ!」と言ってくる。私はアザラシの訴えで試しに本を読むことにする。本を開くと黒と白で描かれた絵に吹き出しがついている。本の内容はIQ999の男子高校が異世界でその持ち前の知識で多種多様な武器を作り出し、敵を倒していくものだった。人間の管理は他の神々に一任していたので人間の創作物に触れるのが初めてで私はどこから読んでいいかわからず、上から下へと読むことにし、話が噛み合わないところは違う場面で話が通りそうなところを探し読んでいった。半ば強制的に読んでいたが、気づいたらページを捲る指と文字を追う眼球が止まらなくなって、あっという間に本を完読してしまっていた。私は恐れを感じていた。神々が作り出した安息な地という鳥籠から脱獄し、天界の私に感動という攻撃を喰らわした人間に。鳥は鳥籠というと狭量で生きずらいところだからこそ脱獄し自由を求めることがセオリーなはずなのに、自由があるはずなのにそれに飽き足らず、地球から乖離されたこの天界までにも羽を広げようとするのか人間は。まるで自由という甘美な言葉をも食らう知的好奇心の化け物じゃないか!。私はアザラシことホォシリスに本の続きを催促するが、ホォシリスは首を横に振るだけだった。私は再び表紙に目を向け、そこに描かれている「1」という文字を睨む。


「数字が描かれているということはこれは一巻で完結しないタイプの本であるはず」


私はこの続きのことで頭がいっぱいになっていた。そして心も同時に暖かいもので満たされていた。私達が管理対象であった人間がまさかこんなに私を満たしてくれるとは到底知らなかった。しかし私は今確実に知ってしまった。そして溢れ出しそうなほどの人間への好奇心が止まらない。好奇心が止まらず胸が吐き裂けそうだ。そしてこの好奇心は私が自害しない限り止まりそうにない。人間が私のところまで羽ばたいたのであれば、私も人間たちのいるところまで羽ばたこうじゃないか。

「天使の双翼によりて「廻」を生み出し、輪廻転生を凍死させる。」


私は詠唱を唱える。背中からは神々しい巨大な羽が生える。私は詠唱の最後の言葉を呟く。


    「ーアンゲルス・アルゲオー 」


ふかふかな翼は氷の翼へと変わり、その翼から発せられる冷気で空気に含まれる水蒸気が徐々に凍っていく。

「すぐ凍りつくのが欠点だな」

空気中の水蒸気が完全に凍る前に翼を羽ばき、冷気が壁に激突して粉砕される。こんな豪華に破壊する必要もなかったが新しい門出には相応しいだろう。


「この姿も変えてみるか」


私は氷の翼で私の全てを覆う。私から俺へと変わるために一回全細胞を凍死させ、新しい細胞に作り変える。覆っていた氷の翼を靡かさせて、元の位置にする。そこから元々あった豊満な胸がない代わりに、男性特有の筋肉で引き締まった胸が現れ、豊胸の胸がなくなったことにより服がガバガバになる。顔も女性の顔から男性の顔に骨格から変化する。俺は壊した壁まで歩き、乖離した世界と繋がるゲートまで歩いていく。まさか俺が作った最下層を俺自由が破壊するとは思わなかった。いや違う。破壊させられたんだあの本の作者に。あの本の放つ魅力によって俺は思うがままに壁を破壊した。一切の躊躇なく。あの作者はもしかしたら俺自身も物語の一要因として利用する気なのかもしれない。そう思った瞬間俺はものすごく興奮していた。俺を楽しませる存在は今まで数人いたが、まさか俺を駒にする相手とは会ったことがない。この本は俺に何かとてつもない出会いや経験を与えてくれる確信がある。


「この本は俺の運命を天秤に乗せる聖典!」


俺は見えるはずもない天秤の左の皿に俺の運命を乗せる。

ゲートの前につき、笑みを浮かべながら叫ぶ。


「さぁ人間諸君!左に俺の運命を乗せたぞ!お前たちは右に何を置く!。」


俺は吸われるようにゲートに入っていった。


俺は目を覚ます。そこには左右で色の違う瞳の少女がまるでこの地球を俺に見せてやるっとでも言ってくるように俺に手を差し伸ばしる。 

  俺は迷わずその手を取った。


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