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神様にあった日

「こんな傷だらけなボンクラでも売れますでしょうか?」 


「こんな汚ねぇメスガキ買う奴は、相当性癖がエグいやつしかいねぇよ。」


私は奴隷商売人に顔を向けないように薄暗くて所々血で赤黒い廊下に視線を下ろした。ここの奴隷商売場は特に貴族中心が生産者であることから、質の高い子どもしか引き受けてくれない。痩せすぎや顔が不細工だったら当然引き受けてくれない。そしてここでは社交辞令や読み書きの有無も採用基準である。私は顔を人並みの女子だし、読み書きもできないから当然採用されるはずもない。採用されなくもない。

「早くお引きください。これから調教がありますので」

奴隷商売人は右手に掴んでいる鉄製の巨大な爪切りのようなものをカチッカチッと音を鳴らす。顔がどんなに綺麗でもここでは貴族の奴隷にふさわしいように調教される。言葉遣い、立ち振る舞いを叩き込まれ、少しでもミスをすれば調教が始まる。


「これをみてくだされば、きっと欲しくなるはずだ!」


私を誘拐して此処に連れてきた全体的に不潔で、髪の毛からは腐敗臭と同時に膿が出、体全体から脂が出ているような肥満で毛深い男が言う。私は横にいるその男から逃げるように踵を返し玄関へと走る。しかし横にいた不潔な男が私の手を掴み、強引に手を引っ張りあげ、私を床へと叩きつける。私は叩きつけられた衝撃で受け身をとったが、足に鈍痛が走り抜ける。

不潔な男はそのうちに私のフードを掴む。私は鈍痛を耐えながらフードが取れないようにフードの端を掴み必死に抗う。しかし、不潔な男に脇腹を蹴られて私の力が緩みフードから手が離れる。その隙にフードを脱がされて、私の目が奴隷商売人に見られる。奴隷商売人は私の露わになった顔の一部に注目を集めていた。 


「これはこれは稀有な目だ!片目ずつ色が異なる瞳はこの最上級の奴隷達でも見た事がない!」


不潔な男は奴隷商売人のこの反応を見て私を金に見えてきたらしく、意気揚々な態度を示す。


「どうだ!何円で買ってくれるんだ!」


不潔な男は唾を飛ばしながら声を張る。奴隷商売人は顎に手をあてて、思索している。


「そうですね。顔や体は我々の奴隷の方が質は明らかに高いが、それをも無視できてしまうほどのこの瞳、、、わかりました。一千万マニーでお引き受けしましょう。」


私が一生いや3回転生しても稼げない程の金額を聞いて呆気に取られていると、今にも踊り出しそうなほど興奮している不潔な男が目に入る。言葉では表せないほどの怒りの絶望感が胸を黒く染め上げる。私の人生はこの不潔の男の私利私欲のためではないし、誰での物でもない。私の物だ。さも私の全てを手に入れたようにはしゃぎ回っている不潔な男が意味がわからなかった。 


「では、今からでも早速引き取らせてもらいたいのでこちらの書類に記載してください。」


不潔な男はそこで何かを思いついたのか、それとも事前に計画されたのかはわからないが、たらこ唇から汚い歯が満遍なく見える程の笑みを浮かべる。


「娘と最後になってしまうので腹一杯ご飯を食べさせてやりたいので、それからでもいいか?」


不潔な男はさも私の父親の如く演じる。奴隷商売人は疑いの目を不潔の男に注ぐ。


「わかりました。終わり次第書類に記載してもらいますからね。」


「わかったよ。」


不潔な男は私の腕を強引に掴み、店を後にする。外は昼間だともかかわらず灰色な空が太陽を隠し、大雨が降り注いでいる。

不潔な男は私の腕を掴みながら、卑しくなおかつ発情期の肉食獣のような目をしている。

私は激しく腕を解こうと抗うが、一向に解けない。


「最後においしい思いしてもいいよな」


不潔な男は下唇をベロで舐める。

私は不潔な男がこれから私に行うであろう下劣な行為を理解し、腕を引っ張っている手に噛み付く。


「いってぇな!ゴミが!」


腕が解けたと歓喜した一瞬に顔面に拳で殴られて後ろに軽く飛ぶ。私は飛ばされながらもそのまま立ち上がり街を走り抜ける。後ろからは一心不乱に不潔な男が私を追いかけてきている。

周りの住民は私達のことを見ているが、我が身可愛さに誰も助けてれない。


「、、、当たり前だよね。」


この平和と断絶されたこの街で他人のことを気にかけていられる人はいない。みんな精一杯なんだ。食べ物を善意で他人に渡したら自分は餓死し、他人を善意で助けようとしたら自分が嬲り殺される。この街は善意を露わにしたら殺される世界だ。善意みたいな綺麗な感情も許されない世界だ!。私はひたすら走る。視界の傍には子供が飢えで今にも死にそうに倒れている。私は足を一瞬緩めるが、すぐ後ろから不潔な男が近づいてくる。私は全力で走る。


「(私も結局同じだ。)」


下唇を思い切り噛み、走り、左右違う色の瞳からは雨が涙がわからない水滴がつく。


「(涙ならいいな)」


涙が出るなら私の中の綺麗な感情はまだ死んでない。この街は人を人たらしめない世界だけれど、私は捨てないこの感情を。いつか誰かが私を救いその方に一生ついていくためにこの綺麗な心も綺麗な体も必要なんだ。ここで負けたら私の身も心も汚れて、その方に合わせる顔もない。

気づいたら周りの喧騒が消え静寂が溢れていた。私は街を抜く出して草原まで来てしまったようだ。後ろを振り向くがそこにはもう不潔な男はいないが、すぐに追いつけられるだろう。

私は傾斜になっている草原を血が滲み出ている足を地につけ歩く。この先には街を一望できる高い丘がある。


「(ひとまずそこで休もう)」


傾斜が厳しい草原を歩く。灰色の空が一様に広がる中、そこに小さな穴が開いてる事に気づく。穴からは隠された太陽の光が降りしきり、まるでこの醜い世界に神様が梯子をかけてくれたように見えた。私はそれに魅力、いや懇願しながらそこまで走り出した。


「誰か助けて、、、」


初めて私の弱い部分が口から漏れた。何故今その言葉が出たかはわからなかった。私は太陽の光のとこらまでたどり着いた。そこは私が目指していた街を一望できる丘だった。あたりは草原と変わらず草木が生い茂っている。私は太陽の光に徐々近づいていく。


「グゥ〜グゥ〜」


近づくにつれこのいびきみたいな音が大きくなっていく。光で日向になっているところを私は見る。そこには足を組み草原をまるでベットのように安眠している男がいた。風がその男の金色の髪を靡かせ、男の顔が露わになる。私は息を呑んだ。とても人間に許されないその柔和かつ子供みたいなあどけない美しい顔に私の異形な瞳が釘付けになる。光の中で寝ているその男に私は無意識に手を伸ばすために光の中に足を踏み入れる。

振り返ればこの時から私は本能的に恋をしていたのかもしれない。私を救ってくれた神様に。



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