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第十九話 グングニル





「‥!‥‥お、お前!‥‥死んだんじゃ?」

ノエルは驚いて思わず声が出る。シーマは頭や腕など包帯で巻かれていて、痛々しく見えるがしっかり立っている。

「‥輝京の法力医達が総出で治療に当たってくれた。この命があるのも、そのおかげだ」

シーマは言いながらムーンソードを抜く。

「ノエル、一対一だ。剣を抜け。これで全てのケリをつけよう」

シーマはそう言うと剣を構えた。ムーンソードは刀の形をしている。

「‥やってやるよ。この手で殺してやる‥」

ノエルはそう言うと短刀を抜いて構える。何も恐れる事はねぇ。あいつはまだ怪我人だ。全力で動ける訳がねぇ。全力を出せなければ、俺でも勝てる。それに俺には、もしもの時のアレがある‥。ノエルが全力で斬り込んだ。シーマは下がりながら素早く斬り返す。ノエルはしゃがんでかわすと、低い体制でシーマの足元を連続で斬りつける。シーマは小刻みに飛びながら下がってかわす。そして連続してノエルに斬りかかる。ノエルが辛うじて避けきるが、刃が服を掠めていく。危なかった‥。どこが怪我人だ?ほぼ全力で動けるじゃねぇか?こいつは計算外だ‥。仕方がない‥‥アレを使うとするか‥。ノエルはシーマの鋭い斬り込みを、後方宙返りでかわすと大きく距離を取った。そして懐から小瓶を取り出す。

「‥『死霊の灰』だ。生きてる者には意味がないが、死んだ者に触れると‥‥」

ノエルはそう言って小瓶の蓋を開け、中身の粉状の物を空中にばら撒く。その粉はあっという間に風に乗り消えた。

「‥妖華刺から、もしもの時に使えと貰ったんだ。ここなら沢山あるからなぁ‥」

すると、遠くから何か声が聞こえ始める。そしてノエルの背後から、煙に紛れて何かがこちらへ来るのが見えた。人だ。大勢の人々が大勢こちらへ歩いてくる。ゆっくりと足を引きずる様に向かってくる。これは一体‥?

「‥死体だよ。ベリアルの砲撃で死んだ北州の奴らだ。この『死霊の灰』は死体にかかると死体が蘇る」

ノエルは得意げに言う。死体の群れがシーマを見つけると、一斉に奇声を上げて走り出す。

「どこまでも卑怯な奴だな‥」

シーマはムーンソードを右手に持ち構える。そして

「デュエット」

と呟くと左手にもムーンソードが現れ、両手で構える。そして襲いかかる死体の群れを斬っていった。だが数が多い。斬っても斬ってもキリがない。それに人間と違い、斬られても動じる事なく向かってくるのだ。首を斬り落とさないと動きを止めない。流石のシーマも押され始めた。

「あははは!まだまだ来るぞ!いつまで耐えれるかな?」

ノエルは近くの家の屋根に登り、高見の見物をしている。

「あの時と同じだな?第三部隊が全滅した森と同じだ!沢山の魔物に囲まれて、遺体まで食い尽くされて何も残らない!おんなじ状況で死ねるなんて幸せだな?あはははは!」

シーマは死体達に囲まれた。そして死体の群れが一斉にシーマに襲いかかる。その時だった。死体達が次々と煙となって消えていった。一人、また一人と煙になっていく。そして声が聞こえた。

「‥違う。同じじゃない。あの時は、みんなお前を信じていたばかりに、お前の入念な策略にハマってしまった。でも今は違う。入念な策もなければ、お前を信じてもいない。だから結果は大きく変わる」

煙の中からアストリアが現れた。光る大きな剣を右手に持って歩いてくる。死体がアストリアに襲いかかる。だがアストリアが剣を振るうと、死体は煙になって消えたのだ。一振りするだけで、周辺の死体が何体も煙となる。あっという間に死体の数が減っていった。

「‥!‥お前‥!アルバトスに殺されたんじゃ?なんでお前まで?それにその剣は‥‥?」

ノエルがアストリアを見て驚く。アストリアも腕に包帯が巻かれているが、いつもとほぼ変わらない姿だ。

「‥シーマを見た後だから、そこまで驚く事でもないでしょ?法力医の方達のおかげだよ」

そして剣を前へ突きだし、剣先をノエルの方へ向ける。

「白虎の剣。宝来に代々伝わる退魔の剣だ。劉禅陛下からお借りしたものだ。破邪退魔の力がある」

龍禅は法力の治療を受けて動けるまで回復した僕に、この剣を授けたのだ。

「白虎の剣は魔を打ち滅ぼす力がある。人外が相手なら、持っていくと良い。きっと何かの役に立つ。だがその剣は退魔の神事に使われる模造刀だ。刃がない為、人間を斬る事は出来ないがな‥」

龍禅はそう言って剣を渡したのだ。僕はシーマに

「死体達は任せて。シーマはノエルを‥」

と言った。シーマは頷いてノエルを見る。

「‥ラズベリア第三魔物討伐部隊隊長、シーマ・シュタイナー!参る!」

シーマは叫ぶと走り出す。ノエルは慌てて屋根から屋根へ飛び移る。逃げる気だ。だがシーマは予測していた。先回りして屋根に飛び乗る。

「チッ!くそっ!」

ノエルがナイフを数本投げつける。シーマはナイフを払い落とす。その間にノエルが一気に間合いを詰めた。斬りかかるノエル。だがシーマは左手のムーンソードで短刀を払う。そして右足でノエルの足を払った。不意をつかれたノエルは仰向けに倒れる。そしてシーマが両手でムーンソードを振り上げる。

「第三部隊の皆の無念!今こそ果たそう!ノエル・ベルッチ!貴様を討つ!」

シーマが両手の剣を振り下ろした。




ベリアルの操舵室ではミルコが叫んでいる。

「違う違う!そっちじゃない!右だって!」

するとルドガーが

「うるせぇなぁ!わかってんだよ!やってるんだって!」

と叫ぶ。ルドガーが操縦桿を握り、ベリアルの舵を取っていた。ミルコは魔導出力の制御をしている。どうやら大きな建物の近くに停泊を試みているようだ。ヒルダとラファエルも操舵室にいた。船内のドルギア兵は、全員縛り上げた。ネロとバドも厳重に縛り上げた。なのでどこかの建物に下ろしたいのだが、ベリアルの細かい操縦が上手くいかない。ベリアルの搭乗口では、神楽と阿右と左吽がネロ達を下ろす為に待っている。

「もうちょい右じゃ。右右右!」

ヒルダも思わず叫ぶ。

「‥あ、ぶつかっちゃうよ‥」

ラファエルが呟くと同時に、ベリアルが振動する。

「‥まぁ、とにかく今のうち‥」

ルドガーが苦笑いする。大きな建物に食い込んでるような形だが、建物に降ろす事は出来そうだ。搭乗口を開けて、神楽達が兵士達を建物に降ろし始めた。その最中

「‥あ!あそこ!誰かいるよ!」

ミルコが双眼鏡を見ながら叫んだ。



シーマの剣はノエルの喉元に刺さる寸前で止まっていた。

「‥!‥な、なんで?‥‥なんで殺さない‥?」

ノエルが呟く。シーマは剣を引く。

「‥‥貴様が憎い。ひたすらに憎い。だが、貴様を裁くのは私じゃない。ラズベリアに連れて帰り、ラズベリア軍の軍法会議にかけ、それに基づき貴様を裁く。それが第三部隊を裏切った貴様への正当な制裁だ‥」

シーマがそう言うと、ノエルは笑顔を浮かべる。

「‥ククククク。本当に甘いよな、あんたは‥あははははは!」

辺りにノエルの笑い声が響く。極刑は免れないだろう。だがノエルの事だ。なんとしても逃げようとするはずだ。生き延びるチャンスを与えてしまう事になる。

「‥これでいいのか?私は間違っていないか‥?」

シーマが誰かに尋ねる。するとシーマの背後から声がした。

「‥‥うん。間違ってないと思う‥」

シーマがチラリと背後を見る。マリリアが立っていた。マリリアはエザリアが使っていた杖を持ち、シーマの少し後ろに立っていたのだ。首元の包帯が痛々しい。その後ろには刃もいる。

「‥こいつは巴も殺したんだぞ?それでも‥‥」

シーマがマリリアに言う。マリリアは

「‥私も本当は許せないよ‥。巴は私が巻き込んでしまったから‥‥。でも憎んで殺したら、その人と同じになる‥。巴もそんな私と友達になりたくないと思うから‥。‥‥私はこの人を許します‥‥。そして生きて償ってもらう‥」

と静かに言う。刃も頷いた。その時だった。ノエルが突然、大きな呻き声を上げ始める。

「‥!‥あ、がぁぁぁぁ!‥‥く、うぅぅぅぅ!」

苦しそうに、のたうち回っている。するとノエルの体が膨れ上がる。肌の色がみるみる赤色に変わっていく。腕や足も膨れ上がり、小柄なノエルがあっという間に大男に変わっていく。顔も歪に腫れ上がっている。

「‥な、なんだ!‥‥なん‥だ‥これは‥?」

ノエルは自分の両手両足を見て叫ぶ。

「‥死霊の灰を使っているのが見えた!我がオルタナの聖ボルト教会の言い伝えでは、死霊の灰を生きた者が吸い込めば、グールになってしまうとあるわ!」

マリリアがノエルに向かって叫ぶ。すると刃が

「‥つまり死霊の灰をばら撒いた際に、吸い込んでしまったと言う事か?それでグール、つまり悪鬼になってしまったのか?」

と言う。

「‥ば、バカな!‥妖華刺は生きた人間には無害だと‥!」

ノエルが化け物に変わり果てた姿で叫ぶ。

「‥トカゲの尻尾切りだな。見捨てられたんだよ‥」

シーマが呟く。

「ウガァァァァァァ!」

ノエルが咆哮と共にシーマに襲いかかる。

「‥トリオ」

シーマが呟くと右手のムーンソードの柄から下へ刃が現れた。続けて

「カルテット」

とシーマが呟く。今度は左手のムーンソードの柄から刃がもう一本現れる。一つの柄から上下に二本、刃が出ていて双刃刀の形になった。それが両手に二本。双刃刀の二刀流だ。ノエルが大きく膨れ上がった腕で闇雲に殴りつける。シーマが素早くかわしていくが、屋根が次々と破壊されていく。凄まじい力だ。ノエルは完全に化け物と化していた。刃は慌ててマリリアを抱えて地面に飛び降りる。

「クレッシェンド!」

シーマが叫んで両手を振り上げ飛び上がる。その瞬間、ノエルの大きく膨れ上がった腕が斬られて宙を舞う。

「ガァァァァァァ!」

苦痛で叫ぶノエル。シーマは空中で一回転すると双刃刀を構える。

「‥ノエル、貴様をラズベリアに連れて行けそうもなくなったな‥。哀れだな‥苦しいだろう‥今、楽にしてやる!」

そして地上に落下しながら斬りつけて叫ぶ。

「今こそ貴様との因縁に終止符を!フェルマータ!」

シーマが着地すると同時に、ノエルが血飛沫を上げて倒れた。




「アストリア!」

僕がベリアルの操舵室に入るとミルコが抱きついてくる。僕らはノエルを倒し蘇った死体達を片付けると、ベリアルが大きな建物にくっついているのを見て近づいたのだ。すると操舵室から手を振るミルコに気づき、大きな建物伝いにベリアルの中に入ったのだ。

「よかったぁ!心配したんだよ!死んじゃったかと思ってさぁ‥」

ミルコが歓喜の声を上げると

「バカ!操縦桿から手ぇ離すな!」

ルドガーが慌てて操縦桿を握る。

「‥ごめん、心配かけたね。もう、大丈夫。刃や内大師先生達のおかげだよ‥」

と、僕が言うと刃が

「‥いやいや、三人とも奇跡に近い。法力医のほとんどが覚悟を決めてたぐらいだ‥。これも三人の生命力の強さだよ‥」

と感心したように言う。そしてヒルダがシーマに近づくとシーマが

「‥往生際が悪い、とか言いたそうだな?」

とヒルダに言う。ヒルダはシーマを見つめ

「‥全くじゃ。‥‥でも良かった‥」

と呟いた。シーマは

「‥すまん。心配をかけたな‥」

と言った。そして神楽がマリリアに抱きつく。ラファエルは腰が抜けたようで、その場に座り込んでいる。

「‥あぁ‥‥良かったぁぁぁ‥‥」

ラファエルが吐き出すように呟く。きっと心の中では、相当心配していたのだろう。神楽はマリリアに抱きついたまま、離れない。

「‥か、神楽‥?‥い‥痛い‥‥」

マリリアが呟くと、我に帰った神楽が慌てて離れる。

「はっ?ご、ごめんなさい!嬉しくて、つい‥!」

神楽は顔を真っ赤にしてマリリアに謝っている。そして改めて阿右と左吽が紹介され、僕らも刃を紹介する。刃もネロに斬られた傷は、だいぶ良くなっていた。刃は早速、左吽や神楽、ラファエルの治療を始める。ミルコはルドガーから変わって操縦桿を握っている。ベリアルは建物から離れて、北州の上空にいた。ドルギアの兵士は全員、建物に下ろしてきた。ベリアル強奪成功の報は使い鳥を飛ばしたので、龍禅に伝わったはずだ。いずれ宝来の大軍が北州奪還に押し寄せる。そしたら捕虜として扱われるだろう。そしてミルコが

「グングニルってドルギアのどこに行け‥‥‥」

と話し始めた時だった。空から一筋の大きな光が地上に落ちた。そして立て続けに、遥か遠い所や比較的に近い所まで、計五回の光が空から降り注いだのだ。その内の一つがすぐ近くの地上に落ちた。その瞬間辺りが一瞬明るくなり、その直後に凄まじい爆音と共に巨大な爆発が起こったのだ。凄まじい爆風でベリアルが揺れる。

「うわぁ!みんな何かに掴まって!」

ミルコが操縦桿を必死に握って叫ぶ。全員が壁や計器類に掴まり堪える。爆風が収まると、前方の窓から様子を見る。すると光が落ちたと思われる所は煙に包まれ、キノコのような大きな煙が空高く上がっている。きっと辺り一面、炎に包まれているのだろう。

「‥‥グングニルじゃ。『天から降り注ぐ悪魔の槍』‥古い古文書にそう記されてあった‥」

ヒルダが低い声で呟いた。




その少し前、ドルギアの首都ハリードにあるトルメキア城のすぐ隣には巨大な塔が現れていた。トルメキア城よりも高く、頂上辺りに巨大な砲門のようなものが付いている。月黄泉はトルメキア城の王室の間にいた。アルバトスと妖華刺も同じ部屋にいる。月黄泉は石板のような物を両手で持っていた。その石板に青龍の鍵が差し込まれていて、石板から光が出て王室の間の床を大きく照らしている。床に照らし出された光は、東の大陸の地図の形をしていた。

「‥ではでは。グングニル復活のお祝いとして、試し撃ちでもしてみようかな〜?」

月黄泉が石板を動かすと、床の大きな地図上に赤い印が現れる。月黄泉が動かすと、その印も動く。月黄泉の手の動きと連動しているようだ。

「‥う〜んと。ここと、ここ!」

月黄泉が地図上の赤い印を動かし、五ヶ所ほどに印をつける。

「では、発射〜!」

月黄泉が石板に付いてる突起を押す。すると巨大な塔の砲門が動き出す。月黄泉達はトルメキア城の窓からその様子を伺う。砲門は角度を上に上げていく。そしてある一定の角度まで砲門を上げると止まった。砲門の先に光が集まっていく。そして凄まじい轟音と共に魔導砲弾が五発、上空に向けて発射された。一発発射される度に、地響きが起こる。そして遥か上空まで上昇し、弧を描く様に落下していく。そして落下した遥か遠い地上付近で光った後、キノコのような大きな煙が上がった。

挿絵(By みてみん)

「あははははははは!凄いねぇ!これなら輝京も紅都も一撃だね!」

月黄泉が望遠鏡を覗きながら歓喜の声を上げた。

「次の魔導の充填までどのぐらいかかるの〜?」

月黄泉が妖華刺に聞く。

「半日ぐらいかと‥。それと指定した場所と実際に着弾した場所の誤差の調整もあります。本格的な発射には、もうしばらく時間を‥」

妖華刺が答える。

「わかった〜。いや〜早く撃ちたいなぁ」

月黄泉は子供の様にワクワクしている。するとアルバトスが不機嫌そうに

「‥なぜリーゼルを北州に向かわせなかった?」

と言う。リーゼル・グレイブ率いるドルギアの本隊は、まだハリードにいたのだ。

「リーゼルが宝来軍を片付けちゃったら、つまんないじゃん?せっかくグングニルとベリアルがあるのにさ〜」

月黄泉は笑顔で言う。

「キミもしばらく待機でイイよ〜。グングニルが世界中を蹂躙する様を高見の見物でもしてるといい‥」

月黄泉がニヤけながらアルバトスに言う。

「‥ふん」

アルバトスは踵を返して部屋から出て行った。アルバトスが部屋から出ていくと、月黄泉が真顔になり低い声で呟く。

「‥いずれキミもリーゼルも用済みだ‥。ハーディング国王もな‥」

すると妖華刺の背後から人影が現れた。

「‥阿修羅か‥?どうした?」

妖華刺がチラリと背後を見て言う。妖華刺と同じ様な着物を着た男性だ。スラリと背が高く、目が鋭い大人な顔立ちだ。妖華刺の様に怪しげな雰囲気が漂う。

挿絵(By みてみん)

「‥ベリアルの羅刹と夜叉からの定期連絡がありません。何かあったのかと‥」

阿修羅と呼ばれた男性が報告する。

「‥まさか。羅刹と夜叉が倒された‥?‥誰がそんな事を‥?」

妖華刺が不思議そうに考え込む。

「‥カマリアにいたヒルダだ」

月黄泉がポツリと言う。妖華刺が月黄泉を見る。

「‥‥‥業火のヒルダ‥‥‥‥気をつけないと‥‥」

月黄泉は目を閉じて上を向いている。

「‥それとアストリアを、そろそろどうにかしないとね〜」

月黄泉は目を閉じたままニタリと笑った。

「アルバトスとリーゼルに、トルメキア城とグングニルの守りを全軍で固めろ、と伝えろ!」

月黄泉が阿修羅に指令を出した。



 

「えぇっ?」

ミルコが驚きの声を上げる。僕はミルコに伝えた事を繰り返す。

「‥だから、ベリアルをグングニルに衝突させる」

グングニルの威力は実証された。だがさっきのはまだ試し撃ちだろう。本格的な砲撃が始まれば、大勢の人が住む輝京か紅都のどちらか、もしくはその両方が標的になる。そして宝来を叩き潰した後は、ラズベリアやマルセルトを標的にしていくはずだ。

「あれだけの威力の魔導兵器じゃ。きっと連射は出来ない。問題は次の発射までの魔導の充填時間じゃ。どれぐらい時間が掛かるのか見当もつかん。だが、次の発射までにどうにかせんと、確実に大勢の人間が犠牲になる」

ヒルダが言うとシーマが

「‥このままベリアルでドルギアの首都ハリードまで行き、グングニルを見つけ次第ベリアルを衝突させてなんとか沈黙させる訳か‥。そしてトルメキア城に突入して、月黄泉から青龍の鍵を奪い返す‥‥。無数のドルギア兵とアルバトス達を相手にか‥‥」

腕組みをして言う。確かに強引な計画だ。敵地のど真ん中に飛び込む訳だ。だが時間がない。多少の無理をねじ伏せる覚悟で行かないと、甚大な被害が出てしまう。すでにこのベリアルの砲撃で北州の街が丸ごと消え、大勢の人々が亡くなった。さっきのグングニルの試し撃ちも何処かの街を直撃してるかも知れない。これ以上の被害は絶対に出せないのだ。

「月黄泉はトルメキア城にいるはず。そしてグングニルは呼び出した者の近くに出現するという。つまりトルメキア城の近くにグングニルは出現してるはずじゃ。古文書には大きな塔のような容姿で描かれておった。見つけるのは容易いはずじゃ」

ヒルダが言うと僕は

「ベリアルを衝突させる事で大きな混乱が生まれる。上手くいけば、トルメキア城にいるドルギア兵の大軍の分断が出来るかもしれない。その勢いに乗っていくしかない。とにかく速さが大事になる。ベリアル衝突から月黄泉の所へ行くまで、最短で行かないといけない。龍禅陛下から預かったこの白虎の剣は、青龍の鍵と供応する。つまりトルメキア城に突入出来れば、後は白虎の剣が青龍の鍵の所まで導いてくれる‥」

僕は一息ついて続ける。

「月黄泉もベリアルに何かあった事に気づいてるかもしれない。というか気づかれている、という事を前提で行動した方が良いと思う。ハリードの守りも固められていると見ておこう」

と言った。

「でもさ‥ベリアル自体が攻撃されない保証はないよね‥?」

ラファエルが心配そうに言う。

「‥保証はない。地上からの攻撃は届かないと思うが、月黄泉がベリアル用に何か対策を講じている可能性はある‥」

僕が答えるとマリリアが

「ベリアルへの攻撃は私が防ぐ。エザリアの杖があるから‥」

エザリアの杖を見ながら言う。神楽がジェイガンから預かった、エザリアが使用していた杖だ。ヒルダの話しでは、エザリアの気遣いでマリリアのタクトに細工がしてあったのだ。本来は魔力を増幅させる為に杖やタクトを使うのだが、マリリアのタクトには魔力を抑え込む作用があったのだ。マリリアが魔力を使いすぎない様に、との思いではないだろうか?との事だ。いずれ大人になれば、普通の杖を渡したのだろう。するとシーマが

「‥トルメキア城へ突入後は、アストリアが月黄泉を目指せ。全員でアストリアの援護だ。後はどこでどういう状況になるか次第になる。臨機応変に対応しよう。アルバトスが出てくれば、私が相手をする」

と言った。すると刃が

「青龍の鍵を奪還後は、幻獣玄武で脱出する。全員で生きて帰ろう!」

と力強く言う。するとラファエルが

「これを皆さん付けて下さい‥」

と言って何かを取り出す。手首に付けるような小さい数珠だ。

「竜鱗寺の海蓮大僧正達が、御祈祷してくれた数珠です。退魔の効果があるそうです。少し多めに貰ったので、人数分あります」

と言った。続けて神楽が

「トルメキア城を包んでいる霧、魔香も魔の力。退魔の力があるこの数珠を付ければ、トルメキア城内にいても魔香の影響を受けなくなります」

と言った。そうか。何もしないで城内に入れば、魔香の影響を僕らも受けてしまうのか‥。全員が数珠を付けるとミルコが

「‥じゃあ、首都ハリードに向かうよ?」

と全員に確認するように聞く。僕らは大きく頷く。

「よぉし!目標、トルメキア城!全速前進だ!」

ルドガーが叫んで操縦桿を倒す。



月黄泉と妖華刺はトルメキア城の玉座の間にいた。玉座にはドルギア国王のハーディング・ダグリウス三世が座っている。銀色の鎧に身を包み赤いマントを付けている。その隣にはアルバトスが立っていて、並んでドルギア将校達が部屋の入り口までズラリと立っている。

「月黄泉。トルメキア城の守りを固めろ、とはどういう事だ?」

アルバトスが対面に並んで立っている月黄泉に聞く。

「‥そのままの意味だよ〜。トルメキア城の守りを固めて欲しい。なのでハーディング陛下にも戦の準備をして頂いた」

月黄泉はアルバトスに言うと、一段と声を張り上げる。

「魔導戦艦ベリアルが敵の手に落ちた可能性がある!このトルメキア城が強襲を受けるやもしれない!各自、強襲に備えトルメキア城の防衛に務まれたし!」

途端に将校たちがざわつき始める。するとアルバトスが

「‥ベリアルにはネロとバド、それにノエルもいる。貴様の部下も乗っていたはずだ。宝来の手に落ちるとは思えん‥。確かな情報なのか?」

と聞く。

「‥可能性があると言うだけだよ〜。まだ確証はない。でも用心しといた方がイイと思ってね‥」

月黄泉が答えるとハーディングが口を開く。

「‥‥全てお主に任せる。このトルメキア城に何人たりと近づけるな」

そう呟くように言うと立ち上がった。すぐに妖華刺がハーディングの脇に立ち、二人は連れそう様に玉座の間を後にする。

「では、ボクも備えないといけないから失礼するよ〜」

月黄泉も玉座の間を後にする。アルバトスの左隣にはドルギア四強の一人、リーゼル・グレイブが立っていた。

挿絵(By みてみん)

鎧に身を包み、長い髪に立派な髭を生やしている。四十代ぐらいだろうか、体格はアルバトスと引けを取らない。

「‥あの女が現れてから、陛下はおかしくなってしまわれた‥すっかり骨を抜かれ、まるで別人のようだ‥」

リーゼルが小声でアルバトスに言う。

「‥カマリア侵攻をコーネリアス一人に責任を負わせて処刑したのも、陛下のお達しだとか‥。あの二人が来てから不可解な事が多すぎる‥」

アルバトスも小声で返す。するとリーゼルが自分の左隣りに立っている将校に

「近衛師団長のお前が調べてもわからんのだろう?ワグナス‥?」

と聞く。ワグナスと呼ばれた将校は、金色の長い髪でこちらも鎧に身を包んでいた。リーゼルより若い男だ。

挿絵(By みてみん)

「えぇ‥。ただ、この霧が関係している可能性が出てきました。魔導や魔法に詳しい者によると、この霧は『魔香』ではないかと‥。魔香は人に催眠や洗脳のような効果をもたらすとか。陛下もそれで別人のようになられたのではないかと‥」

と、ワグナスが言うと

「なんだと?では我々も知らない内に操られてるとでも言うのか?」

と、リーゼルが驚く。するとアルバトスが

「‥だが我らは陛下のように別人のようになるほど、心を支配されてるとは思わんが‥」

と、言うとワグナスが

「‥おそらく、陛下には我々よりも強い催眠魔法がかけられている可能性があります。あの女、『人ならざる者』やもしれません。得体の知れない部下達も、おそらくは‥」

と言うと、リーゼルが

「‥人ならざる者‥すなわち悪魔か‥‥。地下牢に閉じ込めてあるアイツと同じか‥‥」

と言う。すると今度はアルバトスが

「‥地下牢‥‥アンダカか‥‥。とにかく、我らだけでもしっかりしなければ‥。あの女には近づかない方がいい。この事に気付いているのは我ら三人だけか?」

とワグナスに聞く。ワグナスは

「はい。ですが以前、仮面を付けた傭兵がコソコソ嗅ぎ回っていましたが、最近は見かけません。始末されたのかもしれませんね‥」

と、言うとリーゼルは溜息をつき

「‥今はトルメキア城防衛に全力を尽くす。月黄泉と妖華刺の件は事が片付いたらだ。くれぐれもあの二人には注意しろ。すぐに全軍を城内各所に配備するぞ。アルバトスとワグナスも防衛にあたれ」

と伝えた。アルバトスとワグナスも軽く頷いた。



ハーディングは妖華刺に手を取られ、城内の廊下を歩いている。これから自室へ向かうようだ。その少し後ろを月黄泉が歩いている。大きな窓が並んでいる廊下で、外の景色がよく見える。すると後方から兵士が一人、走ってきた。

「申し上げます!城内の物見櫓の兵が、南の上空にベリアルの姿を確認したとの事です!」

兵士が報告すると、月黄泉がニタリと笑う。

「まさか‥本当にベリアルを落としたのか?」

月黄泉は窓から外の様子を伺う。南の空の方向‥。すると確かに南の空に黒い点のようなものが見えた。すると妖華刺が月黄泉に目で合図を送る。月黄泉は軽く頷くと、報告に来た兵士が下がるのを見届けてから

「‥陛下、身の安全の為こちらへ‥」

とハーディングを促す。

「‥うむ」

ハーディングは妖華刺の手を取ったまま、言われるがまま歩き出した。月黄泉は地下へと続く階段を降りる。細く暗い階段を降りきると、大きな地下通路の様な空間になっていた。そしてその突き当たりに大きな扉があった。その扉を開けて中に入ると大きな部屋になっていた。部屋の至る所に得体の知れない計器のような物が置いてある。そして部屋の奥には、大きな口の巨大な化け物がいたのだ。地面に埋め込まれる様に固定されていて、身動きが取れないようだ。三人を見て動こうとするが、妖華刺が右手を突き出すと大人しくなった。どうやら妖華刺の言う事を聞くようだ。

「な、なんだ?この化け物は?」

ハーディングが化け物を見て驚く。すると月黄泉が笑いながらハーディングに近づく。

「古の魔獣、ヒュドラですよ。魔装具探知機には大量の魔力が必要でね‥。それに、この膨大な魔力がグングニルの魔導の充填にも一役買ってましてね‥。言ってませんでしたっけ?」

月黄泉が言い終わると同時に、ハーディングが血飛沫を上げて倒れた。

「‥この化け物は大食漢でね。なんでも吸い込むんですよ。そして腹の中は異空間に繋がってるんですって。つまりこの化け物に吸い込まれると、二度とこの世界には戻ってこれないんです‥。遺体が見つかると、何かと厄介なんでね〜。失踪してもらいますよ〜」

月黄泉はハーディングの亡骸を担ぎ上げる。そして妖華刺に合図すると、妖華刺が右手を突き出してヒュドラに見せながら、握ったり開いたりする。するとヒュドラが大きな口を開けた。口の中の奥は黒い闇が広がっている。そしてヒュドラが吸引を始めた。凄まじい風が起こり、ヒュドラの口の中へ吸い込まれそうになる。あまりの吸引力で体ごと持っていかれそうだ。月黄泉がハーディングの亡骸を投げると、ヒュドラの口の中へと吸い込まれていった。そして妖華刺が右手を素早く下ろすと、ヒュドラは口を閉じて吸引はおさまったのだ。

「‥これでよし。自由に動ける様になった。グングニルの充填は?まだ撃てないの?」

月黄泉が妖華刺に聞く。

「‥まだ半分ぐらいです」

妖華刺が答えると、月黄泉が

「‥奴ら、突っ込んでくるつもりかもね〜。折角のボクのオモチャを壊されたら困るんだよ〜」

と言い、少し考えると

「‥宝来への攻撃は後回しにしよう。まずはアイツらを全力で叩き潰すよ〜」

と言った。そしてあの石板を取り出した。

「‥やはり、あの魔女が立ちはだかりましたね?」

妖華刺が少し遠くを見ながら言う。一瞬、月黄泉の手が止まるが、すぐに手を動かし始め

「‥‥通常射撃ではなく直撃させよう‥」

妖華刺に答える事なく、石板の表面を触った。

 


ベリアルの操舵室でミルコが叫ぶ。

「見えた!トルメキア城だよ!」

遠くに大きな城が見えた。そしてその隣に大きな塔の様な物が立っている。あれが‥?

「グングニルじゃ!」

ヒルダが指を指して叫ぶ。

「みんなは降下の準備を!」

ミルコが叫ぶ。グングニルにベリアルを衝突させる為には、誰かがギリギリまで残り操縦桿を握らねばならない。ミルコとルドガーが残り、ギリギリまで操縦する事になった。そして刃も残り、何かあれば玄武の盾で二人を守りながら、最後は幻獣玄武で脱出する手筈となった。僕らは一足先に脱出艇で脱出し、トルメキア城に飛び移るのだ。僕は皆に

「いよいよトルメキア城に乗り込んで、月黄泉から青龍の鍵の奪還する!ここには付き合いが長い者もいれば、短い者もいる!でも僕は皆と出会えてよかったと思ってるんだ!みんなの武運を祈る!必ず全員で生きて帰ろう!」

と言った。全員が頷いて脱出艇に向かう為、操舵室を出ようとした時、グングニルから光が放たれた。

「危ない!みんな何かに掴まって!」

ミルコが叫ぶ。と同時に激しい衝撃が起こる。ベリアルが大きく揺れて、マリリアとヒルダが倒れた。グングニルからの直接の砲撃だ。空に打ち上げてから落下した先ほどの砲撃と違い、直接グングニルから飛んできたのだ。

「くそっ!また来るぞ!」

ルドガーが叫ぶ。するとマリリアが立ち上がり、操舵室の真ん中に戻る。そして前方に杖を構え

「ディザイアード!」

と叫んだ。するとベリアルの前方に巨大な魔法壁が現れる。その直後、グングニルから放たれた光が魔法壁に直撃する。ベリアルはまたも凄まじい衝撃に襲われた。

「うわぁぁぁ!」

ミルコが操縦桿を握りながら、激しく揺れるベリアルを必死に制御する。マリリアも激しく揺れるベリアルの操舵室の中で、必死に立っていた。またもグングニルの砲門が光り、こちらに光が向かってくる。そして魔法壁を再度直撃する。だが、魔法壁は破れない。エザリアの杖はマリリアの魔力を大幅に増幅していたのだ。そしてベリアルの前方の窓から、ハッキリとトルメキア城とグングニルが見える距離まで近づいてきた。

「マリリアも行くんだ!脱出艇に乗れなくなる!」

刃が叫ぶ。

「わかった!みんなも気をつけてね!」

マリリアが叫ぶと走り出す。操舵室を飛び出し、脱出艇があるベリアル中腹の搬入口へと走る。脱出艇にはみんな乗り込みマリリアを待っていた。脱出艇は大きな籠の様な形をしていて、上部に凧の様な大きな帆が貼ってある。これで空を滑空するように降りるようだ。ベリアルの床に穴が空いていて、そこから脱出艇に乗り込む。脱出艇はベリアルにぶら下がっている状態で、ベリアルの下から飛び出すようだ。

「急げ!早く!」

左吽がマリリアに叫ぶ。マリリアが飛び込む様に脱出艇に乗り込む。後は外に飛び出すタイミングだ。最後の左吽が乗り込んだ瞬間、間近に迫るグングニルの巨大な砲門が光る。

「まずいぞ!まだ撃つ気だ!」

シーマが叫ぶ。

「行こう!みんな掴まって!」

僕は叫ぶとベリアルと脱出艇の連結部を切り離す。脱出艇はベリアルを離れトルメキア城へ一直線に向かう。その瞬間、グングニルの砲門から魔導弾が発射された。

ドオォォォン!

凄まじい爆音と共に、ベリアルの前方が破壊されるのが見えた。ちょうど操舵室あたりだ。

「そんな!」

マリリアが滑空する脱出艇の中で口を押さえ青ざめる。ミルコと刃とルドガーは?無事だろうか?上空に吹く強い風の中、必死に幻獣玄武の姿を探す。だが、見当たらない。そしてトルメキア城が迫ってきた。僕は脱出艇の帆を広げ、風の抵抗が大きくなる角度に傾ける。そうすれば速度が落ちて着地の衝撃が少なくなるはずだった。だが速度は中々落ちない。みるみるトルメキア城が近づく。するとヒルダが杖を構えて、着地地点付近に炎を発生させる。

「炎の熱気による上昇気流で速度を押さえる!マリリア!」

ヒルダが叫ぶとマリリアが

「ディザイアード!」

と叫んだ。凄まじい炎の熱気で、速度が弱まった脱出艇の下部に魔法壁が展開する。魔法壁で炎の熱気を防ぎながら、さらに着地の衝撃も押さえるつもりだ。

ガサァァァッ!

脱出艇は滑るように炎の中を着地した。ヒルダが慌てて炎を消す。

「‥痛たた‥。みんな無事か‥?」

僕が起き上がりながらみんなに聞く。脱出艇の中でみんなはひっくり返っていた。だが、なんとか怪我人はいないようだ。後はミルコ達が無事ならいいが‥。

「いたぞ!こっちだ!」

「侵入者を捕えろ!」

ドルギアの兵士達の声が聞こえてくる。僕らはようやく脱出艇から出た。すぐ近くにあるグングニルを見ると、ベリアルが突き刺さり、爆発しながらゆっくりと傾いて地上に落ちていく所だった。ベリアルをグングニルに衝突させる作戦は成功のようだ。周りを見るとここはトルメキア城の中庭のようだ。

「‥月黄泉は宝来の攻撃より、ウチらの排除を優先したようだ。グングニルもあれだけ撃てば、またしばらく撃てんだろう‥」

シーマがみんなに言う。

「今の内じゃ。今の内に月黄泉を探し出し、青龍の鍵を奪う」

ヒルダもみんなに言う。

「さぁ、行こう!」

僕は叫ぶと白虎の剣を引き抜く。そして集まってきたドルギア兵士達と向き合った。



少し前のベリアルの操舵室では、ルドガーが叫んでいた。

「もうちょい左だ!まだだ!もうちょい!」

ベリアルの最後の軌道修正だ。だがその時、グングニルの砲門が光を帯びる。

「嘘だろ!こんな至近距離で撃つ気かよ!」

ルドガーが叫ぶ。

「限界だ!ミルコ、ルドガー!玄武に乗れ!」

刃が叫んで玄武の盾をかざす。すると光が集まりだし、光輝く大きな亀になった。ルドガーがすぐに飛び乗る。

「ミルコ!早く!」

ルドガーが叫ぶが、ミルコは操縦桿をまだ握っている。刃も玄武に乗った。

「まだだ‥‥もうちょい‥‥」

ミルコはギリギリまで操縦桿を離さないつもりだ。

「ミルコ!もういい!早く乗れ!」

刃が叫ぶと、ミルコはようやく走り出す。だが次の瞬間、グングニルの砲門から光が発射された。光は操舵室を直撃する。激しい爆風と炎の中、玄武は回転しながら上空へ飛び出していた。着弾寸前に玄武に飛び込むミルコの両手を、ルドガーと刃が掴んだのである。そして玄武は外へ飛び出したのだ。三人は必死に玄武に掴まる。するとベリアルがグングニルに衝突しているのが見えた。

ドガアァァァァァン!

砲門部分にベリアルが突っ込むと、大きな爆発が起こり爆音が響きわたる。そして煙と炎に包まれたベリアルが、グングニルに突き刺さった様な形になると

ギィィィィィ!

と音を立てながらゆっくりとベリアルが傾いていく。そしてベリアルに乗り込んだ時に仕掛けた爆弾が爆発し、炎を上げて地上へと落下していったのだった。玄武は落下していくベリアルの脇をすり抜け、トルメキア城へと向かう。そしてトルメキア城にある高い塔に着地した。着地と同時に三人は地面に投げ出される。

「ぐあっ!」

「いてっ!」

ミルコとルドガーは地面に転がるが、刃は一回転して綺麗に着地する。手慣れたものだ。そして玄武は光の粒となって消えていった。ミルコとルドガーが起き上がると、刃が周りを見渡している。

「行こう!」

刃は叫ぶと塔の階段を降り始める。ルドガーとミルコも後に続いた。




 


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