表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/90

ズズズ…ボールン騒動

巨大な岩が立ち並ぶ荒野にて…激しい戦いが繰り広げられていた。



…そこでは、黒い鉄球が、地面にクレーターを刻みながら跳ね回っている、非日常的な光景があった。


更にその鉄球目掛けて、ナイフを構えながら飛んでいく紫の長髪の女、ライフルを構えて鉄球に弾を放つ緑のサイドテールの女。


二人の戦士が未知の存在と戦う様は、我々から見ればあまりにも非現実的。しかしながらこの世界では有り触れた光景だ。

「ズズズ…」

その鉄球は、重々しい呻き声を発しながら、飛び跳ねて逃げていった。無論、あれは鉄球などではなく、生物だ。

二人は岩の地面に降り、去りゆくその鉄球生物を見つめる。

「逃がしたか…深追いは危険だな」

その紫の女はナイフを悔しそうに握りしめながら、その鉄球を見送るしかない。

緑の女もまた、惜しむ表情で頭を掻いている。




…二人は、ある事務所へと戻る。

その事務所はテクニカルシティにあり、街の中でも目立たない場所に建設されている。


玄関を開くと、菓子のような甘い香りが扉をすり抜け、客人を歓迎する。

ソファーにテーブル、テレビに棚。どこにでもあるような家庭的な空間が広がっていた。



しかし、そこもまた、不思議な場所だった。正確には、ここにいる者が不思議なのだが…。


「あ、ラオン、葵。帰ったんだね」

れながソファーから手を振る。

そう、ここはれな達の拠点なのだ。日々戦いを送ってる彼女らは、ここで様々な依頼を受け付け、そこから戦いに出向く。そして依頼の報酬を頂き、それを生活へと繋いでいく。これが意外と上手くやっていけるのだ。

紫の髪の女…ラオンは、ため息交じりにソファーに腰掛ける。

「あのボールンとかいうモンスター、中々厄介だ。あいつを放置してたら街が次々に潰されちまう。その癖逃げ足も早い。どうすりゃあの野郎のアホ面をしばけるか…」

見ての通り、ラオンは荒れた性格だ。一方の葵は、落ち着いた様子で状況をれなに話す。

「ボールンはあの山の付近の村や町に既に被害を出しているわ。早くボールン撃退依頼をこなさないと、また被害が出てしまうかも」

れなは腕を組み、わざとらしい頷きを挟みながら話を聞いている。


あの鉄球モンスター、ボールン。やつはあの大きさで素早く動き回る厄介な相手だ。やつを倒してほしいという依頼が来たのだから、手を焼いていた。


「うーん…」

三人は腕を組んで、唸る。


「あ!そうだ!」

れなが指を鳴らす。何かを思いついたようだ。

「何か良い案があるの?」

葵の質問に笑顔で頷き、れなは玄関へと進む。



そして…二人を連れて、テクニカルシティに存在する、とある店に辿り着いた。

そこは、狩人が使う狩猟道具を中心に扱う、狩猟専門店。戦士も多く集まるこの街では、かなり繁盛している店だ。


壁にかけられた猟銃に目を輝かせながら、葵はれなに聞いた。

「れな、どうやらかなりの計画を練っているみたいね!狩猟道具は私達を裏切らないわ」

「れなにしては中々考えてそうじゃねえか」

二人に挟まれ、れなは恥じらいながらも、ある道具を指差した。

「あれを使うんだ」







え、と声を揃える二人。

人差し指の向こうには…銃でもナイフでもなく、トラバサミが棚に置かれていた。

沈黙する二人…れなは、専用のビニールに包まれたトラバサミを手に取り、胸を張る。

「これでそのボールンってやつを捕まえる!!以上!!」

れなは単純だが…まさかここまでとは。


「馬鹿か!!あいつはめちゃくちゃでかいんだぞ!?めちゃくちゃ重いんだぞ!!?こんな当たり前の事言わせるな!!」

それに対し、れなは壊れたラジオのように同じ事を繰り返す。

「これでそのボールンってやつを捕まえる!!以上!!」

呆れ返るラオン。いや、トラバサミが弱いと言いたい訳では無い。ただ、ボールンに対してトラバサミはどう考えても相性が悪いのだ。

店員の困惑した視線を感じながら、葵はため息をつく。

「もう、無駄足じゃないの…」

拍子抜けした雰囲気が店内に広がる…。



と、その時。



突如、棚に陳列された商品が揺れだした。

「えっ!地震!?」

慌てるれなの横で、葵が眉をひそめる。ラオンも同じ顔だ。

この地響き…間違いない。やつだ。





店から出て、遠くへ視線を寄せる三人。


黒い鉄球が飛び跳ねている…ボールンだ!ボールンがここまで来たのだ!

葵は隠し持っていたハンドガンを構え、戦闘態勢。

「何故こんな所にあいつが…!ボールンが生息してた山はかなり遠かったはず!!」

暴れるボールンのもとへ駆け抜けつつ、ラオンがナイフを取り出す。

「分からねえ…。あいつ、もしかしたら私達のストーカーかもな」

ラオンの体が宙に浮き、高速で飛行を始める。ボールンはもうすぐそこだ!

ボールンはこちらに気づき、その鋭い目で睨みつけてくる。

「ズズズ…!」

その声には怒りが宿ってるように聞こえた。ラオンと葵が戦ったボールンと同一個体のようだ。

ラオンはボールンのプレス攻撃を巧みにかわしつつ、ナイフを顔面へと叩き込む!

「ズズズ…」

ボールンは一瞬跳ねるのをやめた。一応ダメージは通っているが、見た目通りの硬さだ。

ラオンは飛行を保ちつつ、ナイフを振り回して地上のボールンを威嚇。ボールンはラオンを睨みつけてきたが、その敵意に応えるように、ラオンは更なる斬撃を決めた!

苦しむボールンだが、痛みを無視してまた飛び跳ねる!

葵はハンドガンに自身のエネルギーを込め、集中する。

「流石ラオンね…」

葵の足が、より深く踏み込まれる。ゆっくりとハンドガンを向け…跳ね回るボールンに正確に狙いを定め、発砲!

緑の光を纏う弾丸が銃口から吐き出され、ボールンに直撃!この一撃は効いたようで、ボールンは再び跳ねるのをやめた。

「いけっ!れな!」

葵の落ち着いた声が荒くなる。れなはその一言に答え、ボールンの巨体目掛けて飛行、助走をつけて拳を打ち込んだ!

衝撃が周囲に拡散し、その威力を物語る。ボールンは回転しながらより高く飛び跳ね、全身で苦痛を体現した。

地面に勢いよく落下し、目を回すボールン…。


ラオンはボールンの上に乗って、沈黙を確認する。

「大人しくなったか…これで暴れるとロクな目に遭わないと分かったはずだ」

これで街が穴だらけになるのは避けられた。しかし、どうしてボールンは突然こんな場所に来たのだろうか?



この時三人は気づいていなかったが、彼らの頭上に一台のドローンが浮いていた。

その一部始終の映像は、ここから遥かに北に存在するある国に通じていた。



赤黒い空が広がるその王国は…闇の国。漆黒の城が聳えており、そこの部屋へと映像が送られていた。


暗く、怪しげな部屋にて。

モニターを覗き込む怪人が、ニヤリと笑った。

その怪人は蛙のような顔をしており、白衣を着ている。

その後ろには…赤い目を輝かせる闇姫の姿が。

「闇姫様、ボールン計画は失敗です」

「うむ」

闇姫は深く頷く。二、三秒の沈黙の後、その怪人は次の一言へ繋ぐ。

「次はどうします?」

「お前の意見を聞かせろガンデル。ここは軍一の頭脳を持つお前に判断を委ねる」

ガンデルというその蛙怪人は、顎に手を添えてしばらく考え込み…すぐに返答する。

「兵士たちにボールンの真似をさせれば、もっと被害を出せるかも?」




…数日後。




ドクロマークから手足を生やしたような姿をした、闇姫軍の兵士達が、テクニカルシティに現れた。

彼らは皆、短い足で懸命に跳ねている。

「ズズズ…!ズズズ!!」

ついでに声まで出している。彼らなりに真剣なのだろうが…。



「馬鹿かボケー!!!!」

ラオンに、ナイフを使うまでもなく殴り飛ばされたという…。

ボールンは確か、幼稚園の頃に考えたキャラクターです。こうして小説に出せたのは嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ