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でっかいアンドロイド パープルG

テクニカルシティにて。

ビルが立ち並ぶ中、豪快な戦いが行われていた。


一つは、ビルよりも高い背を持つ巨人だった。岩山のような筋肉に、髭を生やした原始的な容姿の巨人だ。

その巨人は両腕を振り回しながら、目の前の相手に向かっていく。


そしてその相手は…紫色のツインテール髪を持ち、どこか無気力な顔の少女だった。

だがその少女は普通ではない。彼女もまた、ビルよりも背が高いのだ。

彼女の名はパープルG。テクニカルシティの科学を結集させて作り上げた、巨大アンドロイドだ。

彼女の周りでは、市民が大声で応援している。白熱する彼等とは裏腹に、パープルGはあくび混じりに伸びをする。

そんな呑気な彼女に、巨人は容赦なく向かう。

一見頼りないパープルGだが…彼女は巨人の攻撃をヒラリとかわし、足払いを仕掛けた。

前に倒れる巨人。観戦していた人々が驚いて逃げていく。

パニックに陥る彼らのどよめき声の中、一つだけ、ハッキリとした怒号が聞こえてきた。

「おいコラー!敵を無闇に転倒させるなと言っただろ!」

それは、ビルの屋上から聞こえてきた。見ると、パープルGの横にあるビルの上から、赤い髪、眼鏡を掛けた女が怒声をあげていた。

彼女はルミ。誰あろう、パープルGの開発者だ。

彼女は地団駄を踏んだり両手を振り回したりしてパープルGにあれこれ指示を出していた。落ち着きのない姿だが、巨人同士の戦いが巻き起こる中、正確な指示を出せるあたり、見かけ以上に落ち着いているようだ。

「今だー!そいつのブサイクな顔面にストレート!」

その指示と同時に、パープルGは巨人の顔面に華麗な拳を叩き込んだ!


巨人は唸り声をあげながら天を見上げ…痛みに苦しみながら街の出口へと走り去る。

見事、撃退に成功した。


人々の歓声が、街を一層明るく彩る。





戦いの後、パープルGはテクニカルシティにある施設の一つ、秘密倉庫へと格納される。

この倉庫は、何と異次元に建設された疑似世界に通じており、パープルGは普段はここで暮らしているのだ。

この疑似世界は草原が広がる美しい場所。大きなパープルGでも走り回れるくらいのスペースが設けられているのだが、のんびり屋な彼女はよくここで寝そべっている。

巨人との戦いが終わり、ルミはパープルGの膝の上にのって彼女を褒め称えていた。

「やはりお前は私の自慢だ。お前がいれば、街は安泰だ!!」

どんな言葉をかけられても、パープルGは依然として無気力な顔のまま。ルミは少し気まずそうにしながら、彼女に何か欲しい物がないか聞いてみる事にした。

「なあ、何か欲しい物はないか?たまにはご褒美をやろう!」

それに対して、パープルGはそっと答えた。

「熊ちゃんが欲しい」

熊ちゃん…熊のぬいぐるみだろう。そんな物は、日々研究によって大成果を出して儲けているルミの財布の前ではその辺のホコリのような物だ。

早速ルミは秘密倉庫から出て、コンクリートの地面へ足を踏み出した。



その頃、テクニカルシティの近くの平原では、ある戦いが起きていた。


…あの巨人が、また暴れていたのだ。テクニカルシティで撃退された事で苛立っており、先程以上の勢いで動いてる。そんな巨人の前を飛び回ってるのは…赤い髪の悪魔少女、デサイアと紫の髪の悪魔少女キュバス!

彼女らもまた、以前のクリスタルワームの件で尖りに尖った気分だ。巨人の拳にも全く恐れず、巨人の腕へ蹴りを放っていく。

巨人をスピードで翻弄する二人。さしもの巨人も見えない程の速度で彷徨かれてはどうにもならない。がむしゃらに拳を打ち込んだその隙に、二人は電撃弾を投げ込んだ!

巨人の背中に当たる電撃弾。瞬時に強力な電流を流し、巨人を麻痺させた。これでしばらくは動けないだろう。

その時、巨人は何かを落とす。

落としたのは…熊のぬいぐるみだ。キュバスが拾い上げる。

「あら、可愛い趣味してるわね」

しかし、熊のぬいぐるみは人間が片手で持ち歩くような大きさ、巨人からして見れば虫にも満たない大きさだ。持てていたのが奇跡に近いレベルだ。体の何処かに偶然引っかかっていたのかもしれない。

どんな物でも、何かを入手できれば嬉しい。それが二人の思考だ。このぬいぐるみも、今では以前目にした宝石のように輝いて見えている事だろう。

熊のぬいぐるみを交互に抱きかかえる二人。デサイアは気分が良くなってきたようで、拳を振り上げてポーズをとる。

「よーし!誰でも良いから人間を襲撃しまくって、盗みまくるわよ!」

仲良くぬいぐるみを渡し合う二人。


そんな二人のもとに、早速カモが来た。

見ると、こんな広々とした草原を不用心に歩くメガネ女が。

「やりぃ…」

指を鳴らすデサイア。



「おい!そこのクソアマ!アンタが今持ってる物全部渡せ!!」

デサイアが大きく出る。後ろからはぬいぐるみを大切そうに抱えるキュバスが続く。

そのクソアマこと…ルミは、顔をしかめて二人を見る。

「何だ君たちは…失礼なんてレベルじゃないぞ…ん?」


ぬいぐるみ…!

パープルGが求めるぬいぐるみが、今目の前に。

更に幸運な事に、二人はルミに近づいてきたのだ。拳を握っており、やる気満々だ。

「力付くでも奪うわよ…」

二人が拳を振りかぶったその時!



突如、二人の全身に凄まじい熱が走る!


「うああ!?あぢいいい!!!」

転がりまわる二人。ルミは無防備に見えて、実は熱光線銃をポケットに備えていたのだ。

「ふん、正当防衛だから、良いよな?」

二人を撃ち抜いたルミは、キュバスの手から熊のぬいぐるみを取り上げた。


「ふふふ。これで私の財布の節約になるぞ」




ルミは鼻歌を歌いながら、秘密倉庫へと帰還した。

扉を潜り抜け、中にある一台のドアを開ければ、その先はすぐに異次元空間、広大な草原が広がっている。

パープルGは、律儀に正座しながら待っていた。

「おい!お前の為にこれを持ってきてやったぞ!!感謝しろ!」

ルミが掲げるぬいぐるみを、大きな指先で優しくつまみ上げるパープルG。

手の平の上に乗せた、小虫ほどのぬいぐるみを見つめる…。


「…これ、変な毛がついてるよ」

彼女の言葉に、ルミは困惑。差し出されたパープルGの手の平から、ぬいぐるみを見てみると…。


「うっ、何だこれは!!?」

まさにその通りだった。


このぬいぐるみ、よく見ると毛の隙間に黒い毛がいくつもついていたのだ。


「それ…巨人の毛だね。大体股間についてたやつかな」

首を傾げながら言うパープルG。

…あの巨人は、このぬいぐるみをズボンの中にでも隠していたのだろう。

巨人が持っていたという事を知らないルミでも、何か嫌なものを察知した…。


「な、なんかばっちいいい!!」

ぬいぐるみを投げ、ルミはパニックに陥ったのだった。




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