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欲張り悪魔とクリスタルワーム

沢山の宝石が輝く美しい山脈があった。普段からも多くの宝石が取れる輝かしい場所なのだが、その日はある異変が起きていた。


山脈の字面から、青く輝く謎の生物が現れていたのだ。

宝石が連なったような、神秘的な生物。それは紛れもなくモンスターだった。日光を受けて輝くその体を揺らすモンスター。そしてそれを、岩陰から見つめる二つの影もあった。


「あれがクリスタルワームよ、キュバス」

赤い髪のその少女は、相方の紫の長髪の少女に声をかけた。その頭には二本の青い角、更に尻尾も生やしてる。

キュバスと呼ばれた紫の少女は、欲に満ちた笑みでクリスタルワームを見つめた。

「あいつらを手に入れれば私達、更にゴージャスになれるわ。行くわよデサイア…」

デサイアと呼ばれた赤い少女も頷いた。

息を潜め、クリスタルワームを睨み…。


「…おりゃあああ!!」

岩から一気に飛び出した!



…が、クリスタルワームは地中に潜り、速攻で回避してしまう。地面に激突する二人。

「ちくしょー、何でだ!」

顔も赤くなったデサイアが、天に向かって叫ぶ。


「変わらず間抜けだな」

二人の後ろから、冷たい声が聞こえてきた。痛みと悔しさによる怒りのまま、二人が振り返ると…。


黒いツインテールを山脈の風になびかせる、闇姫の姿があった。彼女の後ろには、ドクロマークから手足を生やした姿をした一頭身の兵士達が並べられている。

デサイアとキュバスは、彼女の姿を見るなり直ぐ様構えを取る。

「や、闇姫!?何でこんな所にあんたがいるのよ!?」

キュバスが指を指す。闇姫は首を鳴らしながら答えた。

「てめえらと同じだ。クリスタルワームを狩りに来た。こいつらがいると城が華やかになるのでな」

デサイアとキュバスは顔を見合わせた後、再び怒りの表情を闇姫に見せた。クリスタルワームを目的とする二人にとって、ライバル出現だ。デサイアは片手に魔力を集中し…赤い電撃玉を生成した。

彼女らもまた悪魔なのだ。

「お前なんかにクリスタルワームをとられてたまるか!」

威勢に溢れた怒号と共に、電撃玉を投げる!

が、闇姫はそれを片手で弾き飛ばし、難なく退けた。

デサイアとキュバスは同時に飛び上がり、闇姫に蹴りを打ち込もうとするが…。

「欲望のままに我が軍を裏切ったてめえらに、勝ち目があると思うのか」

闇姫は両手で拳を作り、二人の腹部に叩き込む!

衝撃が辺りに飛び散り、二人は吐血、同時に落下する。

だが悪魔である彼女らは、人間よりもずっと頑丈だ。この状態になっても尚、闇姫に向かおうとするが…。


「闇姫様!クリスタルワームの群れを確認しました!」

その一言で、三人の動きが同時に止まる。

群れ…!先程よりも更に多く出現したのだ。



戦いを中断し、山道を駆け抜けていく三人。兵士たちの案内で走り続けていき、やがて崖に辿り着いた。


崖の下を見下ろすと…そこには無数のクリスタルワームが生えていた。無数の青い光が周囲に反射され、眩しい程だ。闇姫は不愉快そうに目を背けるが、兵士達は大喜び。

「ちっ。目障りな光め。だがあいつらがいる事で喜ぶ兵士達が多い。兵士の為にもやつらを集めてやるか」

背中から灰色の翼を射出し、崖から飛び降りる闇姫。疾走感に満ちた彼女に対し、兵士達はノロノロと岩肌に掴まって降りていく。

デサイアは緑の翼、キュバスも青い翼を射出し、急いで降りていく。

「急ぐわよキュバスー!!」

「分かってるって!」 


早速キュバスは近くにいたクリスタルワームを掴み、強引に引っ張って地中から引き抜く!クリスタルワームは体を左右にばたつかせながら抵抗するが、キュバスの力の前ではどうにもならない。

「やったわ!って、ええ!?」

ある事に気づく。地中から引きずり出したクリスタルワーム…その体は5メートル近くもあったのだ。これだけの長さを、キュバス一人では上手く持てない。

辺りを見渡すと、三十体ほどのクリスタルワームが蠢いてる。全員店に売り払って金を儲けたいところだが、デサイアと協力してもせいぜい六体程しか持てないだろう。しかしながら彼女らの欲望は人並み以上だ。一部だけ持ち去り、後は残す…行儀の悪い事として、彼女らが絶対にやらないと誓っている事だ。

「デサイア、どうしよう?こいつら全員欲しいんだけど」

途方に暮れているその時…!



空から、無数の飛行音が聞こえてきた。直後、空に現れたのは、真っ黒なヘリの大軍だった!

あれは…タイミング的にも色合い的にも、闇姫軍のヘリで間違いない。そのヘリは、無数のワイヤーを射出し、ワーム達を捕らえていく!

重たいワームが軽々と持ち上げられ、ヘリに収納される。ヘリ達は次々に去っていき、北の空へと消えていく。

「うわー!ずるい!」

デサイアは羽を広げてヘリを追いかけようとしたが…闇姫が手の平から黒い魔弾を放ち、彼女を撃ち落とす。

あれだけワーム達で輝いていた大地は、瞬く間に荒野へと後戻りしてしまった。

ポツンと取り残される二人…いや、闇姫と兵士達も一応いたのだが、彼らも既に荒野から去りつつあった。二人に背を向け、歩いていく。


「…収穫無し…?」

寂しく呟くデサイア。横で、キュバスも目が点になっている。



その時…!


周囲の岩石が、突如崩れだした。

「え?」

声を揃える。よく見ると、付近の岩石の根元が激しく震えてる。


…凄まじい勢いで、地中から何かが飛び出してきた。

それは…巨大なクリスタルワームだった!

いや、ただ巨大なだけではない。青い体のあちこちに、小型の宝石がついている。ルビーやエメラルド、トパーズにアクアマリン。生きる宝石とはこの事だ。

「チャーーンス!!!」

二人は飛びかかる!


これだけの大物が現れ、闇姫達が気づいていない訳がなかった。

彼女らは高い崖の上から、その光景を見下ろしていた。

兵士の一人が闇姫に聞く。

「闇姫様。あの大物ワームをひっ捕らえなくて良いのですか?」

「馬鹿か。あんな化け物城に置いておく訳にはいかねえ。それに、通常サイズのクリスタルワームはここでしか手に入らないが、あのデカブツ野郎に貼り付いてる宝石くらいならいくらでも買える」

そうこう話してる間に、デサイアとキュバスはワームの周りを旋回し、電気弾を撃って攻撃していく。ワームは空飛ぶ敵に惑わされ、あちこち這い回っている。

そして、デサイアがとどめの電撃弾を発射!ワームの顔面に直撃し、その一撃が決め手となり、ワームはダウン。



…が、たまらぬとばかりにそのまま地中に潜って逃げてしまう。

「ままま、待ってえええ!!」

後を追おうとする二人だが、ワームは土砂を撒き散らしながら、地面の奥深くへときえてしまった。


「収穫…なし」

キュバスが、ポツリと呟いた。


二人は、今まさにワームが消えた地面に手を置き、涙を流すのだった…。


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