第9話 二十日目
小説というよりは音声作品の台本をイメージして書きました。
小説だと思って読むと文がぐちゃぐちゃなので台本だと思って読んでください。
気分が乗ったら続きを書きます。
あっ、ご主人様。おはようございます。
今から私が起こしに行こうかと思っていたところでしたのに、今日は自分で起きられたのですね。
いつもは私が起こさないと起きられないご主人様が自分で起きているなんて、今日は大雨でしょうか。
ふふ、冗談です。ほら、ちょうどご飯の準備ができたところですよ。一緒にいただきましょう?
ごちそうさまでした。
ご主人様、今日は朝からお仕事でしたよね。……朝からずっとご主人様がいないのは久しぶりですし、ちょっと寂しいです。
いえ、大丈夫です。私のことはお気になさらず、ご主人様はお仕事を頑張ってきてください。
ただ、行く前に……その、ぎゅってしてもらえると、ご主人様が留守の間も頑張れる気がします。
…………ぎゅ〜〜。
……ありがとうございます。なんだか安心できました。
行ってらっしゃいませ、ご主人様。どうかお気をつけて。
〜〜〜
……はぁ……
ご主人様にああは言ったものの、やっぱり寂しいです。ここのところずっと一緒でしたし。
家事はほとんどもう終わってしまいましたし、今日は適当な小説でも読んでご主人様を待ちましょうか。
……あっ、そういえば調味料の買い置きがもう無くなっていたんでした。使いたい時にないと困ります。今日は1人で買い物に行ってきましょう。
天気もいいですし、買い物の前に少しお散歩するのも気分転換になっていいかもしれません。
鍵は……よし、ちゃんと閉めました。戸締りはばっちりです。
普段ならこの道は通りませんけど、今日は散歩がてら少し遠回りをしてみましょう。あまり遠くに行かなければ、迷子にもならないはずです。多分……
それにしても普段通る道と比べて、人通りが少ないです。お店よりお家が多い道みたいですね。
あれ?あんなところに大きな箱が落ちています。配達員さんか誰かの忘れ物……でしょうか。
もし忘れ物なら、冒険者のギルドに持って行って預けた方がいいですよね。も、もしかしたらギルドでご主人様に会えるかもしれませんし、確認してみましょう。
……あれ?変ですね、箱が開いています。配達員さんの忘れ物なら箱は閉まっているはずなのに……
もしかして中は空っぽで、ただのごみだったのでしょうか……きゃっ!
……ね、猫さん?な、なんで猫さんが箱の中に……?
かわいい……ですけど、なんだか元気がないみたいです。弱っているんでしょうか。
あっ、猫さんと一緒に小さいお皿が入っています。お皿に餌が入っていたあとはありますけど、もう何も残っていません。全部食べちゃったみたいですね。
も、もしかしてこの子、捨てられてしまったんでしょうか。まだこんなに小さい子猫なのに……
いつからここにいるんでしょう。この近くにはお家がたくさんありますし、誰かがすぐ気づきそうなものですけど。
うちに連れて帰るのは……いや、ダメです。これ以上私のわがままでご主人様にご迷惑をかけるわけには……
かといって、この子をこのまま放置するのはあまりにもかわいそうです。とにかく何か食べさせてあげないと、すぐ死んでしまうかもしれません。
そうだ、餌を買ってきてあげましょう。もう少しでお店に着きますし、元々買うものも少ないので時間もかかりません。すぐ戻ってきますから、少しだけ待っていてくださいね。
えっと、猫さんの餌は……あっ、これですね。私がここに来ている間に、誰かいい人に見つけてもらっているのが1番いいんですけど……
心配です。調味料ももう買い終えましたし、急いであの猫さんのところに戻りましょう。
……あっ、あれっ?雨?
さっきまで晴れていたのに、なんで急に雨なんか降るんですか。急いで猫さんのところに行かないといけないのに。
どうしましょう、雨具は持ってきていません。でも、このままだとあの猫さんは雨でびしょ濡れになってしまいます。それにあの箱、濡れたらすぐダメになりそうでした。
……っ!考えている暇はありません。急いであの場所に戻って、猫さんを濡れない場所に避難させないと。
……はぁ……はぁ……
もうちょっと、もうちょっとだけ待っていてください。
私が、すぐ助けに行きますから……
…………きゃっ!
うぅ、なん……で。なんで私はこんな時に、転んだりなんかしちゃうんでしょうか。
あっ、せっかくご主人様に買っていただいた服が……
ご主人様、ごめんなさい。私……
……いえ、今はとにかく急ぎましょう。あの猫さんを救えるのは、きっと私しかいないんです。
……はぁ……はぁ……
やっと、やっと着きました。ああっ、猫さんの箱が雨に濡れてぐしゃぐしゃになっています。どこか、どこかに雨を凌げる場所は……
…………いえ、雨を凌げる場所に連れて行ってご飯をあげても、結局この子は何も変わりません。
こんな場所に捨てられているんです。きっと何人もの人が気づいたはず。でも、誰にも拾われなかった。
ここで私がこの子を拾ってあげないと、もうこの子は誰にも救われずここで死んでしまうだけ。ご主人様だって、きっとわかってくれるはず。
猫さん、もうちょっとだけ我慢してください。
今私が、暖かいお家に連れて行ってあげますから……!
……はぁ……着きました……
えっと、どうしましょう。私も猫さんもびしょびしょですけど、確か弱っている猫さんをお風呂に入れるのは良くないんですよね。
とりあえず身体を拭いて、餌と水をあげて……
あっ、すぐ食べ始めました。やっぱりお腹が空いていたみたいです。
ふふ、いっぱい食べていいですからね。
とりあえず適当な箱にタオルを敷いて、ご主人様が帰ってくるまで猫さんにはここにいてもらいましょう。猫さんは狭いところが好きと言いますし、こういうところの方が安心してくれるかもしれません。
ふぅ、とりあえず猫さんのことは一息つけました。私も急いでお風呂に入らないと。流石にこのびしょびしょの格好で家の中を歩くわけにはいきません。
……今日着ていた服、少し破れてしまいました。
それに色々なところが汚れてしまっています。せっかく私のために買っていただいたのに、ご主人様になんて言えばいいのでしょう。
今は……お昼ごろですか。ご主人様が帰ってくるまでまだ時間はありますね。とりあえずお風呂に入って、今日のことをご主人様にどう説明するか考えましょう。
〜〜〜
……ふぅ。やっぱりお風呂に入ると身体が温まります。
猫さんはちゃんと箱の中で大人しくしているでしょうか。怖がってどこかに行ったりしていないといいのですが……
あ、あれ?ご、ご主人様!?
なんでご主人様がもう帰ってきているんですか!?
仕事が早く終わった……って、早すぎです!せめてもうちょっと、もうちょっと後に帰って来てくれれば……!
ああいえいえ!違います違います!ご主人様に会いたくなかったわけではなくて、これは、その……
あっ、待ってください待ってください!その箱はダメです!その箱のこともすぐ説明しますから、ご主人様はとりあえずソファに座って待っていてください!
……ふぅ……あの、えっとですね。ご主人様に言わないといけないことが何個かありまして。
まず最初に……今日外で転んでしまい、ご主人様からいただいたお洋服を一着破いてしまいました。せっかく買っていただいたのに、申し訳ありません。
えっ?私自身は少し擦りむいたくらいで、そこまで大きな傷にはなっていませんので大丈夫です。
……ご主人様はいつも私の身体のことを心配してくださるのですね。せっかくの服を破いてしまったのに。
……優しいお言葉、ありがとうございます。
えっと、次が本題なんです。あそこの、あの玄関に置いてある箱の中身のことなんですけど。ご主人様、まだ見てませんよね?
……実はなんですけど、あの中に猫さんが入っているんです。
はい、捨て猫でした。とても小さくて、かわいくて、でもすごく弱っていました。そんな時に急に雨が降ってきて、今すぐ助けてあげないとこの子はもう助からないって、そう思ったんです。
なので、咄嗟に家に連れてきてしまいました。ご主人様の許可も取らず、勝手な行動をしたことはわかっています。でも、この子を助けたいと思ってしまったんです。
ご主人様、どうかこの子をこの家で飼わせていただけないでしょうか。
…………えっ?
いいんですか?そんなにあっさり……
い、いえ、とても嬉しいですし、ご主人様ならそう言ってくださると思ってはいましたけど、ここまであっさり返されるとは思っていませんでしたから。
ありがとうございます、ご主人様。私がちゃんとお世話して、大事に育てます。
あっ、この話をする前に直接見せるべきでしたね。猫さん、ご主人様も見てみてください。今は少し汚れてしまっていますけど、とってもかわいいんです。
かわいいですけど、やっぱりまだ怖がっているみたいです。早く慣れてくれるといいんですけど。
え?この子を今から病院に?
た、確かにそうです。見た感じ怪我はしていませんでしたけど、飼うならちゃんと病院で診てもらった方がいいですよね。
な、なんで病院のことを思いつかなかったんでしょう。もし病気にでもなっていたら大変です。すぐに行きましょう、ご主人様。
〜〜〜
……はい。ありがとうございました。
よかった……病気にはなっていないみたいですね。
たくさんご飯を食べて休めばちゃんと回復するらしいので、安心しました。すぐ診てもらえてよかったです。
はい、そうですね。この子のご飯や道具を買ってから帰りましょうか。
到着、と。いろいろ買い物をしていたら少し時間がかかってしまいました。猫さんを飼うには色々なものが必要なんですね。
とりあえずこれでこの子を飼う準備はできました。あとはこの子がこの家に慣れて、回復するのを待つだけです。
え?ご主人様、私まだ何か忘れているでしょうか。
あっ、そうですよね。いつまでも「猫さん」と呼ぶのはおかしいです。この子に名前をつけてあげなくては。
猫さんの名前、名前……
ご主人様、何かいい案はないですか?私は自分で名前をつけた経験がありません。ご主人様は私に素敵な名前をつけてくれましたし、猫さんの名前も……
うぅ、そうですよね。私が飼うって決めたんですし、この子の名前は私がつけるべきですよね……
ご主人様、少し待ってください。なんとか今日中には決めますから。とりあえず、今はさっき買ってきたものを家に配置しましょう。
……決めました!
ずっと悩んでいたらこんな時間になってしまいましたけど、ようやく今決まりました。
ご主人様、聞いてください。今日から私たちが飼うこの猫さんの名前は「あめ」ちゃんです!
実は、1番最初に思いついた名前がこれなんです。やっぱり今日の雨はこの子と関係が深いですし、それにこの子のねずみ色の毛にも合っていると思います。
どうでしょうか。ちょっと暗い感じになるかもしれないとは思ったんですけど……やっぱり最初に思いついたこの名前が1番似合いそうに感じたんです。
はい!ありがとうございます♪
では今日からこの子はあめちゃんです!
まだ怖がってあの箱から全然出てきませんけど、いつかはあめちゃんと一緒に3人でお昼寝したりしたいです。
あめちゃん……あめちゃん♪
……それにしても、名前を決めるのってすごく大変なんですね。少し疲れてしまいました。さっき見たところあめちゃんももう寝ているようですし、私も寝ようと思います。
ご主人様もお眠りになるのですか?
あの、それでしたら。今日はお仕事だったり病院だったりであまりご主人様とくっつけなかったので、一緒のベッドで寝てもいいですか?
あっ、今日はえっちなことはしませんから!そういうお誘いじゃありません!
今日はご主人様とくっついて眠りたい気分なんです。もちろんご主人様が嫌でなければ、ですけど。
はい。ありがとうございます。それではご主人様、今日は一緒にぎゅ〜ってしながら眠りましょう。
ぎゅ〜〜っ。
ご主人様とのぎゅ〜、やっぱり安心できます。ご主人様の匂いも大好きです。
それではご主人様、おやすみなさいませ。