君が僕に残していったもの
付き合ってるときは、「全然趣味が合わない」と友達に愚痴っていた。
ホイットニー・ヒューストンも、村上春樹も、
インドっぽいキラキラが付いた変なカバンも。
美術館でアクビばかりする僕に君は呆れていたよね。
僕は君の趣味に合わそうと努力したつもりだけど、
君は僕の趣味にほとんど興味を示さない。
と思っていた。
あの日、ケンカをするまでは。
「たまには野球の試合に応援に来るとか、ゴルフのレッスンに行ってみるとか、
僕の好きなことに興味を持ってくれてもいいんじゃない?」
そんなにキツい言い方をしたつもりはない。
だけど、彼女は大きな目に涙をいっぱい浮かべて僕に言い返してきた。
「私もそう思ってる。ゴルフもできるようになろうと、お父さんに練習に連れて行ってもらったこともある。でも、努力しても私は出来なかったの。私はそういう人なの」
僕の知らないところで、努力をしていた君。
それを知らずに、無神経な言葉を投げつけた最低な僕。
どうして、それを察してあげられなかったのか。
刺々しい気持ちは一気に収まり、僕はひたすら彼女に謝るしかなかった。
そのときは、2人の仲はなんとか収まった。
が、長くは続かないことも薄々わかっていた。
一年後、僕は案の定、彼女に振られた。
だけど、一生彼女のことを忘れることは出来ないだろう。
なぜなら、ホイットニー・ヒューストンも村上春樹も美術館通いも、
僕の大好きな趣味になり、その都度、君を思い出すから。
君が僕の中に残していったものは、あまりに大きい。




