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皇国の精霊姫  作者: 雨野
訣別編
93/102

「さあ友達になろう!!」



 それはセレスタンにとって大切な思い出。

 生まれて初めて、男の子から花を貰って…女の子扱いしてくれた。


「思い出してくれたか…?」


「……えと」


 その思い出の少年、パスカルはセレスタンの腕を掴んだ。彼女も逃げることなく、ただ目を見つめ合う。

 言われてみれば、面影がある…気がする。


「……いつから…?」


 掠れた声で、そう訊ねるのが精一杯だった。パスカルは目を伏せて口を開く。



「……入学した時から、もしかして?とは思っていた。でもシャーリィは女の子で、セレスタンは男だった。

 シャルロット嬢が…?とも考えたけど、どうにも腑に落ちなくて」


 腕から手を離して、彼女の頬を撫でる。


「確信したのは合宿の時。正直…君が男であることに愕然とした。何せシャーリィは、俺の初恋だったから」


「え…え!?」


 ぶわっと一瞬にして、顔に熱が集まった。セレスタンはパスカルを格好いいなと思ってはいたが、恋愛対象として見たことはない。


「今だから言うけど。俺はあの時…「大きくなったら、僕のお嫁さんになって」と言いたかったんだ。恥ずかしくて無理だったけど」


 彼は照れくさそうに笑う。その表情は嘘を言っているようには見えなかった。

 触れられている頬が、更に熱を帯びる。



「…その。ごめんなさい…僕、すっかり忘れてて…」


「ああ、構わない。ただ…俺は君と友人になりたい」


「僕と…?」


 パスカルはにっこりと笑い、セレスタンから手を離した。

 最初は恋心だったけれど、この数ヶ月の間に気持ちに区切りはつけられた。だから…

 長く想っていたから、まだしんどいけれど。きっと良い友人になれる…とパスカルは願っている。



 セレスタンは唇を噛んだ。彼女は、これ以上誰とも親しくならないと決めたから。


「……ごめ──」


「あ、ラサーニュ。ちょっと……あれ?」


 ごめんなさい、と最後まで言えなかった。何故なら…エリゼが会話に割って入ってしまったのだ。

 彼は校門の外から姿を現し、パスカルは丁度壁で見えない位置だったようだ。

 頬を染める2人、特にセレスタンは涙目で…どう見ても異様な雰囲気。

 まずった…またタイミングを誤った…!とエリゼは即座に理解。滝のような汗を流し、無言で踵を返そうとしたが──


「ま、待ってラブレー!!パスカル様、ではっ!」


「はあ!?」


「あっ!?シャーリィ!!」


「行ってセレネ!」


「ほいだぞ」


「ぐええっ!?」


 セレスタンは慌ててエリゼを追い掛け離脱、パスカルの上に巨大なセレネが降ってきて足止め。

 エリゼは「いいの!?」と戸惑うも、腕を引っ張られて一緒に逃げた。



「シャーリィイイイっ!!」


「だから、お前は遅すぎたんだぞ。もうちょい早ければ…なあ」


「なんの!?友達になるチャンスなんて、いくらでもあるだろう!?」


「友達なら…な」


 セレネはフー…と大きく息を吐き。セレスタン達が遠くへ逃げるまでパスカルを潰していた。



 ※



 逃げた2人はカフェに避難していた。これぞパスカルが憧れていたシチュエーションである。


「その…ごめん、ラブレー。パスカル様から逃げたくて…」


「……いや。ボクもお前に用事あったし」


 僕に?とメニューを見ながら首を傾げた。それぞれ注文し、飲み物が運ばれて来たところでエリゼは続けた。


「お祖父様に聞いたんだけど。お前、こないだの報酬全部領地に贈ったんだって?」


「う…!噂になってるの…?」


「…一部でな。そりゃお前の金をお前がどう使おうが自由だが…機会があったら聞いてみたかったんだ」


 セレスタンはコーヒーをちびっと飲む。彼に事情を説明する必要は無いが…

 彼のおかげでドルテカルナと出会い、白金貨を貰えたのだ。全くの無関係では無い。



「……あれは、僕にとって泡銭じゃん。セレネと精霊研究会の会長さんを引き合わせただけ、それにしては報酬が大きすぎる。

 だから…ドリーさんには申し訳ないけど…」


「…負い目なんて感じるな。オルディアレスさんだって納得するだろうよ」


「オル…?誰?」


「お前も今言っただろ!ドルテカルナ=ハスミン=オルディアレスさんだよ!!」


「ああ!…君が敬称使うの珍しいね?」


「ボクのことなんだと思ってんだ…?」

 

 セレスタンは手をポンっと叩いて感心した。

 だがエリゼが敬称と敬語を使うのは…セレスタンの知る限り皇族と祖父に対してのみだった。

 それを指摘され、エリゼは咳払いして顔を逸らす。



「…別に、騎士には卿付けてるし。爵位とか夫人とか呼ぶし。

 それ以外は…ボクが認めた人だけ敬ってんだよ」


「ドリーさん、そんなにすごいの?」


「ああ、あの人は魔塔に所属する魔法使いだからな!」


「まとう?まほう…?魔法陣のこと?」


「全く見当違い…でもないな」



 エリゼは呆れながらも教えてくれた。


 そもそも人間が使う魔術は、魔法という技術の完全劣化版なのだ。

 本来魔法とは、古代において神々と選ばれた人間のみ使えた神秘。

 それを魔法を極めた当時の大賢者と呼ばれる者が、誰でも使えるように改良したのが現在の魔術なのだ。


「大賢者…クランギル?」


「そうだ。古来より人間は魔力を持っていても、それを使う手段がなかったんだ」


 大賢者及びその弟子達が、魔法の効果を図形に起こす事に成功し…魔術が生まれたのだ。故に魔術陣ではなく魔法陣。

 それから長い年月が流れ、魔術が主流となり。魔法は廃れてしまった…と言われている。



「だが現代にも魔法使いは存在する。全ての魔術師の憧れ、最終到達地点なんだ」


「魔術とは違うんだ?」


「根本から違う。魔法は魔法陣なんて必要ないし、もっと自由なものなんだ」


「…魔術も練成されると陣が不要になるじゃない?それは魔法じゃないの?」


「んー…」


 エリゼは言葉に詰まった。魔法とは違うのだが、どう言えばいいのか悩んでいる。

 何しろ彼自身未だ魔法の領域には至っていないし、感覚によるところが多いから言語化するのが難しいのだ。



「……そうだなあ。樽に入った水を体内の魔力…小源(オド)とする」


「ふ?ふんふん…」


「蛇口が魔法陣。水を使いたければ樽に蛇口を取り付けて、外してを繰り返しているようなもん。

 陣の省略は…蛇口を付けっぱなしにして、ハンドルを回すだけで水が出せるようになる状態かな」


「ふんむ…なんで毎回外さなきゃいけないの?」


「喩えだよ!!ったく…!

 でだ、蛇口を捻らないと樽の中の水は出せない、だろう?」


「うん」


 怒んなくてもいいじゃん…と思いながらも、セレスタンは真剣に聞く。


「魔法は体内(たる)魔力(みず)を自在に操って、魔法陣(じゃぐち)を必要とせず水を取り出す。

 樽に小さな穴を開けて、そこから必要分だけ水を外に出し。また栓をする…ってところか?あくまで比喩だ、感覚で理解しろ」


「……どうやって、水を操るの…?」


「それは簡単に言い表せない。だが…魔術の中に、ひとつだけ魔法陣の要らないモノがあるだろう?

 適性のある者だけ使える、アレだ」


「…治癒魔術?」


 そうだ、とエリゼは頷き紅茶を飲む。


「治癒の適性者が、古代で言うところの魔法使いなんだ。つまりボクもお前も素質はある」


「僕も!?」


 まるで信じられず、自分の手を見つめた。だが確かに、治癒だけ魔法陣が要らない理由として納得できる。


「患部に触れる際手から魔力を流しているだろう。

 魔方陣に流す場合は必要分勝手に持っていかれるが、治癒は無意識に自分で「このくらいかな」と制御しているんだ。

 で、魔力ってのは血のように体内を巡っている」


「へえ…?流れは感じないけど…集中すれば自分の中に「どのくらい魔力が残ってるか」は解るじゃない?それはなんか違うの?」


「それは空腹感と近い、と言われている。

 腹減った〜とか腹いっぱい、は解るだろ?でもさっき食べた物が身体の中で今どうなっているか…は解らない。といった感覚だ」


 ほへ〜…となんとなく理解するセレスタン。

 どうやったら魔力の流れを感じられるの?と訊ねる。


「そこは特訓次第だな。ボクも魔術を使う時に流れを意識していたら…少しずつ感じ始めた。まだまだだがな」


「すごい、ラブレーすごいね!!」


 曇りなき眼差しで見つめられ、エリゼはうっと怯んだ。別に凄くないし…と言いづらい雰囲気だ。


「こほん…魔法には詠唱が必要になる。これは決まった定文は無く、自分の心で自然に語り掛ける感じ…らしい」


 先程の喩えで言うと。

 魔法で出した水に「熱くなれ〜」と語り掛けると熱湯となる。

 魔術は最初から『熱湯になる蛇口を取り付ける』のだ。



「魔法の規模が大きければ大きい程、詠唱は長くなる。例えば…オオマキラ大陸の、箏国の王妃殿下」


 箏、という単語を聞き、僅かにだが身体を震わせた。エリゼは気付いていないのか続ける。


「もう亡くなっているが、その王妃は時間を止める魔法を使えたらしい」


「え…す、すごい…」


「だろう?だがその分、詠唱には完全に集中しても1分は掛かるとされていた。それが他に気を取られていたら、更に長引くだろうな」


 それでも充分凄いのだけれど。術者が亡くなっているので、詳細は不明である。



「魔塔というのは、選ばれた魔術師のみが招かれる場所。魔塔で学ぶ事こそ、魔術師最高の誉れなんだ!

 更にトップである魔塔主にお墨付きを貰うと、オルディアレスさんのように『魔法使い』の称号を得る。魔法使いは国家級の権力を持つんだ」


 ボクは権力はどうでもいいけどな、と付け加えた。

 これで説明は終わりだ、満足したか?とセレスタンに問う。



「(すごい…めっちゃ丁寧に教えてくれた。彼ってこんな親切だったっけ…?)」


 なんか普段の印象と違うなあ…と感じた。

 だが、最後の話がやけに引っかかる。


「あの…国家級の権力って。皇族に匹敵する…?」


「流石に上にはならないけど。まあ、対等と言っても差し支えは無い。

 今世界中で認められている魔法使いは、片手で数える程度だ。どれだけ希少か分かるだろう?」


「……………」



 まさか…と拳を握る。


「魔法が使えれば…平民の孤児でも権力を得るってこと…?」


「もちろんだ。身分は関係無い」


 もしもの可能性を考えて喉が渇く。ぐいっとコーヒーを呷り、カップをソーサーに置いた。


「……じゃあさ。グラスが杖を使ってたアレ…魔法とは違う?」


「違うな、アレはもっと単純だ。

 女神の杖が触媒で、使用者のグラス自身が魔法陣の役割をしているんだ」


「そっかあ…」


 魔法じゃ、ないのかあ。セレスタンは小さく呟いた。



 エリゼが何気なく外を見れば、完全に日が落ちて薄暗くなっていた。

 喋りすぎたな、帰ろう。そう言って伝票を手に席を立つ。


「……あれっ!?ちょっと、払うよ!?」


「やかましい。さっさと来い、置いてくぞ」


「え?ちょ、お金…もう!!」


 彼はスタスタと出て行ってしまい、慌てて追い掛ける。彼は頑なに代金を受け取ってくれないので、ご馳走様…とお礼を言った。



「(…ラブレーって意外と、優しいんだな)」


「…なんだ?」


 横顔を見上げていたら、呆れたようにため息をつかれた。以前はそれを恐ろしいと感じていたが…今は全然。


「ラブレーって可愛いと思ってたけど…よく見ると格好いいね!」


「…!うるさい!ボクは可愛いって言われるのが大嫌いなんだ!!」


「だから格好いいっていったじゃん!」


「うる、うっさい!!!」


 エリゼは肩で風を切って歩く。声は怒っているけれど、首まで赤くなっているのを隠せていない。

 セレスタンは小さく笑って、小走りで後を追った。



 精霊屋敷の近くまで送ってもらい、またねと言って別れた。

 学園ではいつも通り距離を置くけれど。彼と過ごすのは…存外楽しいな、と胸が温かくなった。


 それはエリゼも同様だった。長時間セレスタンと言葉を交わして、とても楽しい時間だったな…と頬が緩む。



「…もっと早くから」


「あいつと知り合っていれば」


「言葉を交わして、同じ時間を過ごしていたら」


「「友達に…なれたかな?」」



「……エリゼ」


「……セレス」



 彼らは同時に星空を見上げる。

 きっとそれは…騒がしくも、充実した日々なんだろうな。そう考えながら、それぞれ帰路に着いた。





「エリゼ!!シャ…セレスタンとどこに行ったんだ!?」


「……こいつ忘れてた…」


 エリゼは寮の食堂で、全身に土を付けたままのパスカルに絡まれていた。


「俺なんて…!あの後20分以上セレネのケツに潰されていたのにいいい!!お前はシャーリィとカフェでお茶だと!?羨ましいい!!」


「(……こいつ、普段のクールさどこ行った…?)」


 そこには品行方正の生徒会副会長で、成績優秀で眉目秀麗。女生徒の憧れであるパスカルの姿は、影も形も無いのであった。




 ※※※




「……………」


「おはよう」


「はよ…」


「……おはよう…ございます…」


 校門でセレスタンを待っていたのは。にっこにこのパスカルと、疲れ切ったエリゼ。

 挨拶をさくっと済ませて横を通り過ぎる。だがパスカルは笑顔で追って来た。

 このまま2人を連れて教室に行くのはまずい。そう考え、少々遠回りでも人気の少ない廊下に進んで立ち止まる。



「……あの、友人の件ですけど。僕は…誰かと親しくするつもりは無いんです」


「え……」


 パスカルは分かりやすく絶望した。ガーン…という効果音が見えそうな表情で、セレスタンも思わず前言撤回しかけた。


「だから、無理だって言っただろうよ…」


「だって、だって…俺はただ…放課後一緒に本を読んだり、精霊と遊んだり…

 どこか出掛けてお茶にして…世間話がしたいだけなのに…」


 パスカルのような長躯な男性が、涙目で指をいじっている。セレスタンは……そのギャップに悶えていた。


「(何、この人…!?こんなイケメンが、僕と友達になれないだけでこんな…!

 ヤバい、心臓がめっちゃバクバクしてる!!でも…うぅ、僕はぁ…!)

 ……ごめんなさい、さようなら!!」


「あ…っ、シャーリィ!!」


 苦渋の決断で、パスカルを拒絶してその場から逃げた。

 昔はあんなにも友達が欲しかったのに。もっと…もっと早く再会したかった…!と涙を流す。




「俺は諦めないぞ、シャーリィ!!!」


「きゃああああっ!!?」


 涙ながらに全力疾走していたのに、いつの間にかパスカルが並走していた。


「速っ!?僕も短距離は自信あったのに…!足の長さか!!?」


「さあ友達になろう!!手始めにランチを一緒にしないか!?」


「お昼はっ、ルシアンとアリス君がいるのでっ!!」


「じゃあ俺も仲間に入れてくれ!!!」


「いーーーやああーーー!!!」


「待ってくれええええっ!!!」


「ひええ〜〜…」


 だだだだだだ…

 遠ざかる2人の背中を見送るエリゼ。


「あいつ…段々と本性現してきたなあ…ふはっ」


 周囲に誰もいないので、こっそりと笑う。



 1人残されのんびりと教室へ向かう途中。中庭を挟んで、向かい側の廊下にルシアンの姿が見えた。彼は壁を背にして俯いており、髪に隠れて表情が見えない。

 だがエリゼには、静かに憤っているように感じた。


「(なんだ…?)」


 ルシアンは廊下の角におり、彼の背中側では3人の生徒が立ち話をしている。

 エリゼはふと気になって、聴力を強化して彼らの会話を集中的に拾う。



「…第三皇子殿下さー、今なんて言われてるか知ってるか?」

「え、社交界で?知らない」

「聞いて驚けよ!なんと──」

「「えー!?」」

「わわ、声デカい!誰かに聞かれたらどうすんだ!!」

「あ、わり…」


 慌てた3人はそそくさと移動した。



「……マジかよ」


 聞こえてきた内容は、エリゼにとっても驚きの内容だった。それは…




 最上級精霊を従えるセレスタンを側に置き。

 ルシュフォード陛下の黒髪を継いだ美貌の皇子。


 ルシアン・グランツこそが…次期皇帝、皇太子に相応しいのではないか?と一部で囁かれているという噂話だった。



「(そんな話が…?不敬なんてもんじゃないぞ、下手をすれば反乱と見做される。殿下は…っ!?)」



 ダァンッ!!!と、エリゼの耳に鈍く響く。

 ルシアンは強く壁を殴った。顔が歪んでいるのは痛みか怒りからか、エリゼには判別がつかない。



「……私如きが…!兄上よりも皇帝に相応しいなどと、あってたまるか…!!」


「……………」


 彼らは暫く動けずにいた。

 始業のチャイムが鳴って、ルシアンはずるずるとその場に座り込む。



 このまま放っておいていいのか…エリゼは戸惑い、彼のいる廊下まで移動して来た。

 その時ルシアンに近付く、小さくて軽やかな足音。エリゼは咄嗟に隠れる。


「あっ、ルシアンいた!って…血が出てるよ!?」


「……セレス…」


 彼女はルシアンの鞄はあるのに姿が見えず、心配になり探しに来たらしい。

 廊下に膝を突き、痛々しい手を取って治療すると、ルシアンは目に涙を溜めて抱き着いた。


「びゃ…!どうしたの…?」


「……セレス。私は……其方が…いや」


「………?」


「…其方にだけは…嫌われたくない…!」


 セレスタンからしてみれば、全く状況が把握出来ない。それでも微かに震えるルシアンの背に手を回し、優しく撫でる。

 その温もりを感じて…ルシアンは決意する。


 嫌われ者を演じるのなら、いっそ。

 くだらない噂話も立たぬよう…セレスタン以外の誰もから、憎まれるほうがマシだ…!と。



「どうしたの、ルシア…んっ?」


「ぶっっっ!!?」


 ルシアンはセレスタンの頬に手を添えて…唇を重ねた。

 見てたらヤバい…!!とエリゼ逃走。教室に着く頃には肩で息をして…


「(…あいつの恋人はグラスじゃねえのかよ!?)」


 と更新されていない情報に翻弄されているのであった。




「…!ちょっと、ルシアン…!」


「………」


 ルシアンは逃げるセレスタンを離さず、繰り返しキスをしていた。セレスタンは呼吸すらままならず、涙目で酸素を求めてぷはあっ!と口を開く。だがそこへルシアンが…と、最終的に舌を絡める濃厚な口付けを交わしていた。


 セレスタンの心臓は大きく跳ねて、全身から力が抜ける。


「(やば…流される…!)」


 困った事に…恥ずかしいが嫌ではなかった。その為抵抗はささやかで、ルシアンはどんどん調子に乗った。


 だが遂に限界を迎え…


「…きゅぅ…」


「あ…気絶した…」


 脳がオーバーヒートを起こし、彼女は意識を失った。

 ルシアンは残念だ…と思いながら、彼女を抱き上げて医務室へ向かうのであった。


 

エリゼがセレスタンに優しいのは、友達とも違う特別な存在だから。だが互いに恋愛感情は一切無い。

魔法の話に関しては、オタクが早口になるのと同じ現象。

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