ルキウスのお見合い
セレスタンが校門へ向かうと、プリスカとギュスターヴが待っていた。
「あれ、ガス兄もでしたか」
「お邪魔させてもらうね」
最近彼とは顔を合わせていないので、断る理由など無く快諾。3人でオープンしたばかりというカフェに行く。
プリスカとセレスタンが並び、ギュスターヴが向かいに座る。さて注文を…とメニューに目を通した。
「セレス君、これオススメですよ」
「わあ、美味しそう!」
「デザートはこっちのケーキにしようか」
「わーい!」
「こっちのパンケーキ、クリームたっぷりですよ」
「わあ〜…」
「このパフェ、セレスの好きなアイスがいっぱい乗ってるよ」
「あの…」
「飲み物は紅茶だけでいいのかしら?ジュースもミルクもなんでも頼んでくださいね」
「ちょっと…多いかと…」
「見てごらん!期間限定500gのステーキが…」
「食べれるかーい!!」
ついに突っ込んだ。大人達は「もちろん奢るから、好きな物を好きなだけ食べてね!」と満面の笑み。
どこまで話が知れ渡ってるんだ…と羞恥から頬を染める。夕飯前という事で、パンケーキのセットを注文(ちなみにギュスターヴは500gステーキ)。
「お姉様とガス兄はピアスって開けてますか?」
「ええ。ほら」
「僕も」
2人の耳を見てほえ〜と感心した。確かロッティも開けてたっけ…と唸る。
そんな彼女はアリスティドを思い出す。いくつものピアス…格好いい!強そう!と憧れは強まるばかり。
「開けたいのですか?お医者さんにしてもらえば安全ですよ」
「うーん…」
セレスタンは自分の耳を触りながら、躊躇いの表情を見せる。痛そう…怖い…でも…と尻込みしているようだ。
もっと酷い怪我など何度もしているのに、だ。
「僕…初めてだから。痛くされるのはやだなぁ…」
「ぼひゅっ!!…んぐ、げっほぉ!!」
「………」
その発言にギュスターヴは肉を噴き出す寸前。狙ってるのかな!?と言いたくても咽せていて声が出ない。
そしてプリスカは眼鏡を光らせ…呼吸を荒くしながらセレスタンの両肩を掴む。
「うふふ…オネエサンに任せて…さあ、私の部屋にいきましょうか…?」
「お姉様がやってくれるのですか?その…優しく、お願いします…」
「ブフ…っ!!!」
セレスタンは身体を震わせて伏せ目がちになり、右手で口元を覆った。
ギュスターヴは飲んでいた水を唇の端から溢し、プリスカは鼻血を垂らして意気揚々と立ち上がる。
「大丈夫大丈夫!優しくしますからね!!」
「やめなさいアラニウスさん!!!」
このままではお持ち帰りされる!!とテーブルの向こう側から腕を伸ばして引き止めた。
※
「セレス君、私も家に招いてくれません?」
「うーん…と…」
座り直してデザートタイム。精霊屋敷に遊びに行きたい…とお願いされセレスタンは迷う。
「(まだお姉様にはバレてないし…いずれ言うつもりだけど…)ごめんなさい…」
「(しょぼくれてる…可愛いいい…!)そうですか…残念です」
困ったように笑いながら、プリスカとギュスターヴは少し前の出来事を思い出していた。
〜セレスタンが引っ越して数日後、ルキウスの執務室にて〜
「つー訳で!俺は今日も夕飯にお呼ばれしちゃいましたー!いえいっ!!」
「「「ぐううぅ…!!」」」
ハーヴェイも仲間に引き入れて、ルキウス、ギュスターヴと4人で話し合いをしていた時の事。
自分だけちゃっかり認められたハーヴェイは3人を煽る煽る。
「何故私は入ってはいけないのだ!?」
「あ、それについて爺ちゃんから伝言がありまっす。えー…こほん。
『皇太子殿下は如何なる理由があろうと認めません。
ですが…貴方様が愛してくださった事、お嬢様にとても良い影響を与えてくださいました。それは感謝してもしきれません。盗撮は決して許しません。
もしも権力を使い無理矢理…となった場合、こちらも最終手段を使うところでしたなあ、ほっほ。
これから先お嬢様の幸せを願ってくださるのであれば。まず貴方自身が幸せにおなりなさい』
…です!盗撮ってなんすか?」
「「「…………」」」
3人は口を結んだ。
とにかく…セレスタンの家に行けるのは、彼女の秘密を知っている事が大前提。なのでプリスカとギュスターヴは…
「実はねセレスさん、私も貴女が女の子って知っているんです」
「ごめんね、僕もなんだ」
周囲の客に聞かれぬよう、小声になりカミングアウトした。
「え…えええっ!?」
「ふふっ、ルキウス殿下に聞いたんです。あの方の副官であり、口の堅い私に相談してきまして」
「そ…うだったんですか〜…」
以前だったらセレスタンは顔面蒼白で必死に許しを請う状況だっただろう。だが今は照れくさそうに「バレちゃったかあ」と笑っている。相手が信頼している兄姉だからというのもあるが…その変化に2人は嬉しくて笑顔になる。
「ちなみに僕は君本人から聞いたよ。寝惚けるのは大概にしなさいね」
「………なんて?」
その後詳しい話を聞き…セレスタンは頭を抱えた。あの時そんな事が…自分が間抜けすぎる!と後悔するも後の祭り。
お馴染みのメンバーから許可を貰い、この2人も精霊屋敷への訪問許可権ゲット!
「ここまで来ると…ランディ兄にも言うべきかあ…?」
プリスカ&ギュスターヴ帰還後。
「「いえーーーい!!!」」
「くっそおおおおぉ…!」
自分だけ仲間外れ…分かってはいるけれど、感情が追い付かないルキウスであった。
※※※
「いや、其方治癒魔術が使えるんだろう?それではピアス穴を開けてもすぐ塞がるらしいぞ」
「そうなんですか!?」
昼食時、ルシアンがそう教えてくれた。適性者は自然治癒力が高いから、1時間もしないうちに塞がってしまうのだ。
ピアスをつけっぱなしは嫌だな…と思い断念。じゃあ髪にメッシュ入れるか?逆立てるか?シルバーアクセサリージャラジャラするか?完全にアリスティドをお手本に考えてしまう。
「あー…ルキウス兄上、見合いが上手くいかないんだ」
「…そうなんですか?」
話題を変えようと、ルシアンがそんな事を呟いた。セレスタンも一度は好きになった相手だ、幸せになって欲しいと願っている。
「光の精霊様の刻印を授かってから、国内外の貴族から話が殺到しているんだが…全員兄上の笑顔で逃げている」
「……そか」
セレスタンは複雑な心境だ。そしてあの極凶悪な笑顔に隠された優しさに気付けないような人、駄目駄目だよ!とどこか優越感に浸っている。
どうか彼の内面を見てくれる女性が現れますように…願わずにはいられなかった。
「今日はリシャルの令嬢と見合いかな…」
「リシャル…王国。そっかあ…」
空を見上げて、今頃…あの悪人面を披露しているのかな…と。そう考えては笑いが込み上げてきてしまうのであった。
その頃、皇宮。見合いの為VIP用サロンに集まった人々がいた。
「…遥々ご足労いただき感謝する」にこぉ…
「い、え…お会いできて光栄ですわ…」ドン引き
ルキウスは頑張って笑顔を作るが、令嬢は「嫌われているのかしら…?」と解釈した。彼女の侍女や騎士も同様に青褪めている。
「ち、違います!この人は笑顔が怖いんです!!」
「顔は怖いけど優しい人なんです!」
「これでも子供好きの動物好き、可愛い物好きなんです!!悪人面だけど!!」
「とにかく顔が怖いだけなんです!」
「笑顔だけは空前絶後の極悪人…」
「いい加減にせんかっ!!」
上からランドール、プリスカ、ギュスターヴ、ルクトル、ハーヴェイである。彼らは見合いが失敗続きのルキウスをフォローするべく集まった有志なのだ。
それもルキウスの一喝によりきゃーきゃー騒ぎながら散って逃げる。騎士が逃げてどうする!!とまた怒った。
「……ふふっ」
だがそれで令嬢の緊張も解れたようで、思わずといった風に笑った。ルキウスはやや頬を染めながら「見苦しい姿を…」と謝罪した。
「いいえ、貴方は部下からとても慕われていらっしゃるのですね」
「その…ありがとう」
くすくすと楽しげに言われ、嘲笑のような感じではなかったので褒め言葉として受け取った。
お相手はリシャル王国の高位貴族令嬢、マルケス・エルミニア。リシャルはファミリーネームが先にくる為、エルミニアが名である。
2人は暫く当たり障りのない雑談をする。時折ルキウスが笑顔になり、その度にエルミニアは顔を引き攣らせる。それでもこれまでの令嬢に比べれば中々好感触、プリスカ達は心の中でガッツポーズを決める。
だがルキウスは、彼女がどこか一線を引いていると感じていた。
使用人や付き人、騎士も一旦席を外して2人きりになる。
「その…マルケス嬢。失礼だが…あまり気乗りではなかったか…?」
「あっ…」
今日が初対面だし、緊張しているだけなのかもしれない。そう思い訊ねてみたが、エルミニアは悲しげに目を伏せた。
「申し訳ございません…大変失礼致しました」
「いえ、そんな事は。笑顔が悪人面というのは自覚しているつもりなのだが…かと言って無表情だと怖いと言われるし…」
「そ…違いますわ!その……殿下は私の事をとても気遣ってくださいますし、お顔は…少々怖いですけれど。私などには勿体無い程の…とても素敵な男性ですわ。だからこそ気後れしてしまいますの…」
その「私などには」という発言に、ルキウスはセレスタンを重ねてしまう。
「その言い方は良くない」
「え…」
「貴女は私が不快にならないよう気遣ってくれているし、退屈にならないよう様々な話題を提供してくれて…とても楽しい時間だった。
…私の横に立ってくれる女性が…貴女のような方であれば…と願ってしまう程に」
エルミニアはその言葉に頬を染めて、小さく「ありがとうございます…」と返事をした。だがルキウスはそれ以上に真っ赤であるが。
これまで見合いだけでなく、学園や社交の場で沢山の女性と知り合った。その中で…「この女性となら…」と思えたのは2回目だったのだ。
「あー…コホン。その…もし令嬢さえよければ、また会いたい…のだが」
「え…」
「もちろん嫌なら断ってくれて構わない!散々見合い前から「顔が怖くて無理」と言われてきたので耐性はついている!」
「それついては駄目なやつでは?…ふふっ」
拳を握り力説するルキウスに、エルミニアは小さく吹き出した。見合いの最中もずっと微笑んでいた彼女だが…最初以外、初めて本心から笑ってくれたなとルキウスは感じた。
それでもエルミニアは見合いに後ろ向きのようだった。この日は別れ、10日後にまた交流の場を設ける。
再度顔を突き合わし、エルミニアはルキウスの悪人面にも慣れ始めていた。侍女は目眩を起こして運ばれていたが。
マナーも仕草も完璧で、社交性もある彼女。皇后としての資質は申し分なく、彼女となら…とルキウスも本気で考え始めた。
2人きりの時間になり、ルキウスは少し踏み込んでみる。
「その…貴女はこの縁談についてどう思っているのだろうか?私は貴女となら、互いを尊重し合える関係を築けると感じている」
「…私からお断りする理由などございません。ですが…このような女が皇国の国母など…相応しくありません。
私は、その…成人したら修道院で生涯を過ごそうと考えていたのです。ただその前に、親戚が有り難くもこのお話を持って来てくださいました」
思いがけない発言に、ルキウスは目をまん丸にした。彼女は現在17、リシャルの成人は18歳。まだ若いのに何故修道院に…と聞きたくてもそこまで深入りは出来なかった。
代わりに…自分の心のしこりを打ち明けると決めた。
「…マルケス嬢に聞いて欲しい事がある。
私はつい3ヶ月前まで…ずっと懸想していた女性がいた」
今度はエルミニアが目を丸くする番だった。ルキウスは紅茶を飲み干して、真っ直ぐに彼女の目を見据える。
「彼女は皇国の伯爵令嬢で…小さな身体で働き者で、努力家で優しい人柄に惹かれた。何より…最初は失神寸前まで怯えていたが、私の笑顔を恐れないでくれたのが嬉しかった」
そこがそんなに重要なのね…と思ったが黙って続きを聞く。
「彼女は出生から苦労が絶えず、非常に自己評価が低かった。だが…私は彼女の無邪気な笑顔に心を奪われて、守りたいという感情も強くなり意を決して告白した」
「そ…それで…?」
エルミニアはごくりと喉を鳴らして身を乗り出す。どうやら恋バナは人並みに好きらしい。
「…その場ではやんわりと断られた。だが事情があって、数年経った後にもう一度チャンスをくれと願った。それが今年だったんだ」
ルキウスはセレスタンが男装しているという事以外、ほぼ全て語った。
聞き終えたエルミニアは顔を曇らせ、なぜその話を私に…?と当然の疑問を口にする。
「…将来伴侶となってくれる女性には打ち明けようと決めていた。知っておいて欲しいし、彼女を隠したくもなかった。
私は確かにその伯爵令嬢を愛していたし、正直なところ今も忘れられない」
「………」
「その上で…私は次期皇帝として妃を迎えなければいけない。ただ条件が良ければ誰でもいい訳ではなく、愛を育める相手がいい」
「殿下…」
「もしも貴女が私に不信感を持つのであれば、見合いは今回で終わりにしよう。貴女と彼女を比較したり、彼女を追う事は決してしないと誓うが…不安は付き纏うかもしれない」
エルミニアは唇を結んで、胸元を握り締める。
「(私に…この人ほどの覚悟はあるのかしら…?)もし…」
何かを言いたげに言葉を切ってしまう。ルキウスは急かさず、ゆっくりと待った。
「……私にも忘れられない男性がいるとしたら。貴方は許せませんか…?」
「いや、それは無い」
その言葉に、彼女は呆けた表情になる。
「自分はよくて、相手は認めないなんてしたくない。今は深く聞きはしないが、忘れられない程強く想った相手なのだろう?私も同じだ。忘れられないし、忘れてと言われても困る。
その上で…もし貴女と婚姻を結んだとしたら、絶対に貴女を第一に想う」
「その、伯爵令嬢さんは…?」
「もちろん大事だが…なんと言ったらいいのだろうか…別の大事さと言うか。妹のようなもの…?とにかく可愛いし幸せになって欲しいが、恋愛感情ではない。ウサギのような…いや私は何を言っている?」
「私に聞かれましても…」
首を傾げるルキウスに、エルミニアはどこか安心感を覚えていた。
まだ会うのは2回目だし、お互い知らない事ばかり。それでも…
「殿下。どうか私の事はエルミニアとお呼びください。そして、よろしければまたお会いしたいです」
「…ああ、エルミニア。私もルキウスと呼んでもらえないか?敬称などは要らない」
「はい…ルキウス」
ルキウスが良かったら庭を散策しないか?と腕を差し出す。凶悪笑顔付きで。彼が心からの笑顔を向けられる日はもう少し先のようだ。
エルミニアは息を呑んでから、これは親愛の笑顔…!と自分に言い聞かせて腕に手を乗せた。
2人が仲良さげに部屋から出て来たもので、廊下で待機していた面々は内心狂喜乱舞した。エルミニアがいなければ実際に大騒ぎをしていた事だろう。
「わあ…青い薔薇ですか」
「ああ、庭師こだわりの作品だ」
皇宮自慢の花園を腕を組んで歩く。エルミニアはどこか儚げで大人しめな印象だったが、こうして目を輝かせていると年相応の少女だと分かる。
ただルキウスは駄目だと思いつつ…「もしも今一緒にいるのがセレスタンだったら」と考えてしまう。確か以前、この薔薇を見せた時…
『青い薔薇!?大変ですよルキウス様、昔絵本で読みました!!青い薔薇は魔女の呪いで、その棘で人の生き血を吸い…ひえ〜〜〜!!?』
「……ふふっ」
「?何かおかしかったでしょうか…?」
「あ。いや…すまない、笑える過去を思い出して…」
「…もしかして、例の伯爵令嬢さんでしょうか?」
「……………」
図星で答えられない。これが女性のカンというやつか…?と汗ダラダラである。エルミニアは気を悪くした風でもなく、くすりと笑った。
「(近いうちに…私も貴方に全てを打ち明けます。それでも望んでくださるのであれば…その時は。貴方の横に立つに相応しくありたい…)私も、その伯爵令嬢さんにお会いしたいですわ」
「へ。いや…」
「ふふっ、悪い意味ではございません。ただ…貴方をそんな笑顔にしてくれる令嬢がどんな方か気になるだけです」
「?」
ルキウスは気付いてないけれど。先程セレスタンを思い出していた時は…穏やかに微笑んでいたのだ。
彼の笑顔を引き出せる、どんな素敵な女性かしら?妄想ばかりが膨らむ。
「きっとお淑やかで控えめで、聖母様のような女性なのでしょうね…」
「…………」
それに関してはノーコメントを貫いた。いずれ紹介する…と約束していたら、何やら門のほうが騒がしい。
騎士に様子を見て来るよう伝えると、ナイスタイミングでセレスタンが来たと言う。
紹介するとなると、男装についても説明するべきである。どこから切り出したものか…と頭を悩ませていたら…
「え、私ですか…?」
「はい。アラニウス様にお会いしたいと…」
セレスタンはプリスカに用事があったらしい。プリスカはルキウスと顔を合わせて、ここに来てもらうよう伝言を頼む。
その間に訳あって普段は伯爵令息として過ごしているが、実際は女性である事。簡単に話していたら…泣き顔のセレスタンが飛び込んで来た。
「おねえざまあああ〜〜〜!!!」
「どうしたんですか!?」
プリスカに正面から抱き付き、びええええええ!!と大泣きをする。
今日のセレスタンはセーラー服にハーフパンツという格好。普段から彼女を男と認識していなければ、ただのショートカットの女の子だと思うだろう。
だが何故号泣しているのか、プリスカを訪ねたのか。その場に居合わせた者の疑問は尽きない。
「ひっぐ…!グラスが浮気したあああ〜〜〜!!!」
「「「えーーーっ!!?」」」
プリスカ、ルキウス、ギュスターヴの絶叫が響く。
まさか彼がそんな…でもこの尋常ではない取り乱しよう、只事ではない!とにかく落ち着かせる。
「その…何かの間違いじゃ?」
「違うもん!!!ばっちり抱き合ってるの見ちゃったもん!!!だから…お姉様僕と浮気してええええ!!」
「はい喜んで!!!」
「「喜ぶな!!!」」
「んびゃあああああっ!!!」
ルキウス達も参戦してどうにか宥めようとする。そこへ更に客人が…
「勘違いだって言ってるだろうがあああっ!!!」
「うるさいばーーーか!!!人の恋人に手を出してえ!!」
「「「えええーーーっ!!?」」」
それは…まさかまさかのエリゼだった。
「こっちは証拠もあるんでい!!ルシアン!!」
「任せろ。今すぐこれを現像してくれ」
「だから誤解だ気色悪いっ!!」
ルシアンは持っていたカメラを使用人に渡し、彼に同行していたハーヴェイもニヤニヤしている。
一連の騒動は側から見れば…
◯セレスタン(男)にグラス(女・詳細不明)という恋人がいる。
◯エリゼ(男)がグラスと浮気?
◯絶望して自棄になったセレスタンが、プリスカ(大人のお姉さん)に泣きついた…つまり。
エリゼがクズ野郎なのでは…?
「違う違う、本当に違う!!」
当の本人は首を左右にブンブン振って否定。
「ぎゃーーーん!!わああああんっ!!」
セレスタンは話が出来る状況ではない。なので、皆ルシアンとハーヴェイに説明を求める。
「あー…流石にラブレーが可哀想になってきたしな」
「っすね。エリっち(※エリゼ)の言う通り、ごか──」
「エリゼエエエッッッ!!!」
「ぎええええっ!!?」
が。弁明する間もなく…エリゼの天敵、テランスが騒ぎを聞きつけ来てしまった。彼は鬼気迫る表情で孫を追い詰める。
「どういう事だ!?お前はこのセレスタン君の恋人に何をした!?」
「本当に誤解なんです!!ラサーニュなんとかしろ!!」
「ひっく…ぐすん…」
「泣きたいのはこっちだーーー!!!」
「エリゼ!お前今まで女性に興味が無いと思っていたら、いきなり浮気は駄目だろう!!」
「ちっがーーーう!!!」
半泣きのエリゼ、兄のアイザックも合流してまさに修羅場。
それらを眺めていたエルミニアは…
「……騒がしい、けど。とっても面白そうな国ね…?毎日楽しそう…」
積極的に嫁に来たい気分になっていた。




