オーバン・ゲルシェの過去。そして現在。
ここ最近のセレスタンの放課後。
日にもよるが、午後3時授業終了。
4時までルシアン(ルカ)と会合。その後は剣を振ったり勉強したり。
6時〜6時30分、ヘリオスの散歩。
7時 夕飯。大体近くの席にバジル、ジスラン、エリゼが待機。
7時半〜入浴等済ませる。
基本的に10時就寝。それまで精霊と遊んだり本を読んだり、気ままに過ごす。
そして…グラスに手紙を送る。彼らは毎日交代で、10時に送ると約束した。
今日はセレスタンが送る番。その内容がこちらである。
『ミコトへ
突然ですが、僕はお仕事が決まりました。養護教諭のゲルシェ先生って人がいて、不良だけど優しくて面倒見のいい先生です。
お金が無いって言ったら、先生の食事係として雇ってくれる事になりました。男性だけど信頼出来る人なので心配しないでね。
毎週月水金の放課後と、土曜日に家にお邪魔します。将来の為にいっぱいお金貯めるからね!
今日飛行術の実技をしました。僕はなんだか炎の翼が生えました。いつか君を抱えて空を飛んでみせます。
週末会えるのを楽しみにしています。おやすみなさい。
セレスタンより』
「……ゲルシェ先生…か。セレネ達もいるし平気か?将来の為…おれも頑張ろう。
しかし…炎の翼って何?」
受け取ったグラスは頭を悩ますのであった。
※※※
「…という訳でハーヴ兄。僕ってば社会人よ!だからね、これからは火曜と木曜しか遊べないの。
こうして誘ってくれて、すっごく嬉しいし楽しいんだけど…ごめんね。
ガス兄とランディ兄とお姉様にも伝えてくれる?」
「…おー。いいけど…先生の家に行くんだよ、な?」
「イエス!ガンガン稼ぐぞ!」
「…そか」
この後ハーヴェイは速攻でルキウスに報告した。
「…ああ。私にも叔父上より報告があった。だが…くう…」
ルキウスは悩んでいた。
もうセレスタンとは…なんの関係も無い他人。皇太子として、1人を特別扱いする訳にはいかない。
そう分かってはいるけれど…男の1人暮らしの家に入り浸る?叔父を信用してはいるけれど、心配は消えない。
唸る姿に、ハーヴェイが明後日の方向を見ながら独り言のように呟いた。
「…別に学園を卒業しても、先輩後輩なのは変わらないし。先輩が可愛い後輩を心配すんのって、全然変な事じゃねーし。
暇だったらちょっと見に行こーかなー。帰りが夜遅くなったら、普通に心配だしー」
「…!…ハーヴェイ卿、ご苦労だった…下がっていい」
「はい、失礼致します」
ルキウスはその後ギュスターヴを呼び出した。
「ハーヴェイ卿、もしくはギュスターヴ卿。貴殿らのどちらかが、必ずこの日この時間空けておくように。それで…」
※※※
翌日、昼食時。
「…という訳でルカ!僕は今日から先生のお家にお邪魔するよ」
「……(昨夜ルキウス兄上が夕食の席で唸ってたのコレか…)そうか…頑張れ」
「うん!」
ルシアンからしてみれば…叔父が若い女の子を家に連れ込んでいるようで複雑な気分になった。相手が気になっている子なら尚更。
「しかし…」
「うん?」
「あ、いや…(叔父上って他人嫌いなのにな。家なんて私とか家族、あの男爵くらいしか行った事無いんじゃないか?
医務室にすら生徒を寄せ付けないってのに。それを家に入れるどころか…台所とか好きに使っていいって…)」
モヤモヤするけれど、楽しげな彼女の顔を見ては何も言えない。
今日も小さなパン1つの昼食。生まれた時から贅沢な暮らしをしていたルシアンからすれば…食事を我慢するという行動は理解出来ない。
それは彼だけでなく、貴族の大半はそうだろう。だから…持つ者であるはずのセレスタンが、自分の力のみで生きようとする様は。
ルシアンにとって異常で、とても眩しく見える。
※※※
まず今日はオーバンの家で話があるとの事。その為彼の仕事が終わる6時まで待機。
10分前になり、私服姿でヘリオスも連れて寮を出た。
「「あ…」」
学園の玄関でシャルロットと鉢合わせてしまった。彼女は寮に戻るところらしく、後ろには3人の女子がいる。セレスタンも何度か挨拶した事がある友人達だ。
「セレス…何か忘れ物…?」
「………」
無視して校舎に入る。友人達は何か言いたげだがシャルロットが手で制止。
「待って。少し…話せない?」
「…………」
「…どうして私を拒絶するの?私は…セレスが、お兄さ」
「やめろって言ったでしょう!!?」
『お兄様』という言葉に敏感に反応し、シャルロット達は肩を跳ねさせた。
「なんでよ…!?私達は兄妹じゃないの!?」
「…!血は、繋がってる、けど。兄妹じゃ…ないもん…」
「じゃあ私が姉なの!?」
「違うもん…僕が先に生まれたから!!だから…!」
セレスタンの様子がおかしく、友人達は気を使って離脱した。
言い合いはヒートアップしていき、シャルロットも目に涙を浮かべる。
「分かんないわよ!!どうしていっつも、私を頼ってくれないの!?」
「頼っちゃいけないんだよ!!」
「なんでよ!?お父様なの、あの男の所為なの!?」
「…もう終わった事なの!!お願いだから…僕の事ほっといてよぉ…」
セレスタンは逃げるように背を向けるが、腕を掴まれてしまった。
「どこ行くのよ!暗くなって危ないわ、早く寮に帰り…」
「邪魔しないで!!そんなに僕の行動を縛って楽しい!!?」
「え…違うわよ!!ただ心配なだけで…!」
「君は…君は!!!」
腕を渾身の力で振り払い、前髪の隙間から睨み付ける。
「僕が自分の力で前に進もうとしてるのに、なんで遮るの!!?
僕から沢山のモノを奪っておいてまだ足りない!!?どれだけ…僕を惨めにすれば、気が済むのぉ…」
事情を知らないシャルロットからすれば、兄の発言は理解不能だった。
世界一愛している兄の…悲痛な叫びと涙が心を抉る。
「…何、言ってるの。私…貴方から何も…奪ってないわ。
もしかして爵位の事?前にも言ったけど、貴方が相応しくないなんて思ってないわ。ただ…重荷なら…私にも、背負わせて欲しい…って…」
「……もうやめろ」
「「!!」」
大粒の涙を流し口論する2人を、オーバンが間に入って止める。
「ラサーニュ妹、早く帰れ。そこに友達いんだろ。ラサーニュ兄は…」
「先生。僕の事…兄って呼ぶのやめて…」
「……セレスタンは先生に用事があるんだ。心配要らねえから」
彼はそう言って、セレスタンの肩を抱いて歩かせる。
双子はすれ違いざま目も合わせず、シャルロットはもう追わなかった。
「……シャルロットさん…」
「…ごめんなさい、変なとこ見せちゃったわね」
「い、いいえっ」
友人達の前では、完璧な淑女シャルロットでいなくてはならない。そっと涙を拭い微笑み、女子寮に向かって歩く。
シャルロットはすぐに部屋に入り、夕飯にも現れなかった。
「でも、ラサーニュ様どうなさったの…?」
「本当に…とっても仲良くいらしたのに」
友人達は双子がどれだけ互いを愛し、支えてきたか知っている。なのでセレスタンを一方的に悪だと断じはしなかった。
「…兄ではない。弟でもない。でも血は繋がってる…まさか、お姉様だったりして?」
「まっさかー!」
「やあね、そんなお馬鹿な事、シャルロットさんに言っちゃダメよ!」
うふふと笑い合う友人達。大正解である。
出来ればシャルロットにその可能性を提示してあげたかったのだが…それは叶わなかった。
「……お兄様…」
シャルロットが手にしているのは写真。カメラを貰って、初めて撮ったセレスタンが写っている。
『もう、自分を撮りなよ』
『いやよ。お兄様笑って〜!』
『もー…』
「…そういえば。この頃から前髪を伸ばし始めたのよね…」
写真のセレスタンは顔を隠していない。困ったように控えめに笑う姿が…
これからもずっと見ていられると思っていた。失くすなんて…想像すらしなかった。
自分は何を奪ってしまったのだろう。爵位でないのなら、他に何も考えられない。
まさか…家族の愛?あり得る。だが、それに関してはどうしようもない。
父には何度も言った。お兄様を怒るお父様は嫌い!と。
それ以来、父親が目に見えて兄を叱責する事は無くなった。ただ見えないところに移動しただけなのだが。
「……なんで…こうなっちゃったの。まだまだ…楽しい思い出を、沢山作れると…思ってたのに…」
その問いに答える者はいない。
※※※
「落ち着いたか?」
「はい…ごめんなさい…」
その頃セレスタンは、オーバンの家に来ていた。
学園から歩いて10分程の距離で、クザンの屋敷も近い高級住宅街。小さい一軒家だった。
ダイニングに向かい合って座り、コーヒーを飲んでようやく話が出来るようになった。
ただヘリオスが彼女の横に座り、オーバンをじっと見ている。目力やべえ…と思いながら咳払いをした。
「……なんで妹を突き放すのか…言えるか?」
「…………ごめんなさい…」
それは…女だと打ち明ける必要があるので無理だ。
オーバンは無理に聞き出す事はせず、コーヒーを呷った。
その時セレスタンが、自分の使っているマグカップとオーバンのカップがペアになっている事に気付いた。
「先生。これ…どなたのカップですか?」
「……先生の、奥さん」
「え…先生、1人暮らしって…」
「もういない。10年ちょい前に…病気で他界してる。だから…っ!?」
セレスタンがカップを握り締め…止まったと思っていた涙を静かに溢れさせていた。
「な、なんで泣くんだ」
「だって…」
自分でも分からない。ただただ悲しくて止められない。
オーバンは頭を掻いて、彼女の隣に椅子ごと移動。眼鏡を取って顔を拭いながら話を続けた。
「今日はその話をするつもりだったんだ。
つまらん昔話だが…この家に出入りするなら知っておいて欲しい。聞いてくれるか?」
こくんと頷き、鼻をぶいいいい!とかんで居住まいを正した。
「その…どこから話したもんか。
俺の奥さんの名前はイェシカ。学生の頃知り合って、交流するうちに恋心を抱いた。
それは向こうも同じだったみたいで…嬉しかったんだ。
でも彼女は平民で、俺とは身分が違った。正攻法では結ばれる訳がなかったんだ」
セレスタンは目を丸くした。真っ先にグラスの顔が思い浮かんだのだ。
「お前と一緒だな。俺の場合は…親友に辺境伯の息子がいてな。そいつが彼女を辺境伯家の養女にする提案もしてくれた。
でも…彼女は生まれついて病弱で、永くはないって知らされた。それが4年生…あれ5年だっけ?まあいいや。
とにかく…どれだけ頑張っても30歳は越えられない。だから俺は、自分が平民になる道を選んだ」
「…彼女、イェシカ様に苦労させたくないから?」
「様はいらねえよ。まあそんな感じ。
イェシカは最初俺を拒絶した。身分もだけど、残される俺の事を想ってくれた。
それでも俺は彼女を諦めたくなくて。本当に愛していたから…夫として、彼女を送りたかった。
詳細は省くが、俺は両親の許可をもぎ取って結婚まで漕ぎ着けた。
イェシカも最終的に俺の手を取ってくれて…本当に幸せ、だったんだ。
そんである年の春。彼女は肺炎で息を引き取った。初めて会ってから10年…結婚して3年だった」
オーバンの目尻が光っているのを、セレスタンは見えない振りをした。
この家には彼女の物が沢山残っている。マグカップもそうだが、どうしても捨てられないそうだ。
後を追おうとは思わなかったが、あと何年経ったら彼女の元に行けるんだ?とはよく考えていた。
人生の目的も無く、これといった趣味も無くなんとなく生きている毎日。それがオーバン・ゲルシェという男。
「俺の話はそんくらい。
…女々しいと思うか?捨てるべきだと分かってはいるんだが…再婚もしないで、イェシカの事ばかり…」
「いいえ」
セレスタンはキッパリと言い放った。
オーバンは少し意外そうに顔を上げる。
「…僕は何も知りません。先生が、その…どれ程深く、イェシカさんを愛していたのか。
残された時間が短いと分かっていながらも、求めてしまう程の愛を…僕は知らないんです」
グラスの時間が少ないとしても…セレスタンも同じように彼を求めただろう。
だが…それはもしもだから言える事。実際その状況になったら断言は出来ない、と考える。
「それにイェシカさんも。僕だったら多分、先生の前から逃げちゃうから。
だって…辛いのは残されるほうだもの。だから…向き合う事を恐れて、嫌われるように仕向けるかも」
「……!おい、お前余命宣告されてるとか無いよな?」
「…無いよ。でも僕はロッティを置いてっちゃうから…めいっぱい嫌われたいの」
力無く笑う姿に、ちょっとだけ安堵する。
そして言葉の続きを待った。
「…私物を捨てられないなら、それでいいと思う。無理矢理忘れる必要はないよ。
でも…形ある物は、いつか必ず壊れるから。その時に…悲しまないで」
「…………」
「再婚だって、無理にしなくていいじゃない。イェシカさんと同じか、それ以上に愛する人に出会えたらでいいじゃない。
まあ…先生の半分も生きていないような子供の言葉だけどさ。あいてっ!」
「さり気に若さアピールかこの野郎」
軽く拳骨を落とすと、そんなんじゃないよー!と頬を膨らませる。
その頬を突つくとぷひゅぅと空気が抜けて、小さく吹き出してしまった。
「んもう!…思い出を大切にするのはいいけど。それで今を蔑ろにするのは良くないよ。
先生はイェシカさんと出会って恋をしたこと、後悔してる?」
「そんな事は絶対ないっ!俺は彼女と出会えた奇跡に感謝している!」
反射的に声を荒げてしまったが、セレスタンは静かに受け止めた。
「…一緒に過ごした幸せな記憶を噛み締めるより、喪失感ばかり募らせているんでしょう?
このカップを見て…何を思うの?毎朝一緒にコーヒーを飲んだ思い出?それとも、もう使われる事のない悲しみ?」
「…………」
オーバンは何も言えなかった。何故なら、毎日悲しみしか感じなかったから。
それは…出会わなければよかったと言っているようなものではないのか?
「本当に、僕に先生の気持ちは分からない。だから不快だったら言って欲しい。
僕だって今ロッティから逃げてるし、偉そうな事は言えない。けど…
ありきたりだけど、イェシカさんは先生が悲しむ事は望んでいないと思う。
僕だったら…正直忘れて欲しくは無い。でも囚われても欲しくない。
前を向いて欲しい…そしてたまにでいいから、思い出して欲しい。ちょっと我儘かな?」
「……我儘じゃねえよ」
「そっか。…彼女の元に行きたい、なんて言わないで。
一生懸命生きて。楽しい思い出を作って、いつか天寿を全うしたら…イェシカさんに話してあげて。
先生がどんな人生を歩んだのか。暗い話ばっかりじゃ、もっぺん生きて来い!って蹴り帰されちゃうよ?」
「……そうだな…平手もオマケで飛んできそうだ」
オーバンはテーブルに肘を突き目元を押さえる。
セレスタンは丸めた背中をそっと撫でる。鼻を啜る音が聞こえ、ハンカチを無言で差し出した。
※
「ねえ先生、なんでカーテンちょっと短いの…?」
「…俺じゃねえぞ。ちゃんと測ってから買いに行ったのに…イェシカが…
「これがいい。長さ?気合いでなんとかなる!」って…なんとかならなかった」
「気合いでカーテンが伸びるか!!」
それは夜空模様のカーテン。イェシカが一目惚れし、長さも無視して購入したもの。
確かに部屋にとても合っている。長さ以外。
「あーあー。ちょっと手ェ入れてもいい?」
「伸ばすのか?」
「雰囲気壊さないように…レースとかがいいかな。こう、くしゅっと縫えば…」
「任す」
「任された!」
2人は今後の生活について話し合っていた。
「家の中のもんは好きに使え。入っちゃいけない部屋とかもないから」
「え、寝室も入っていいの?」
「ああ」
随分オープンだな…と感心した。
だが彼は皇子時代、使用人すらもなるべく部屋に入れなかった。掃除は自分でするし、洗濯物は入り口に置かせていた。
昔から人付き合いが苦手で、友人と呼べる人間も1人しかいない。
それが何故セレスタンは特別なのか。他人がこの家を歩き回っても不快感を感じないどころか…安心感さえある。彼自身よく分かっていなかったが…
「なんじゃこりゃ、床へこんでる!」
「あ、それは俺」
あはは!と笑うセレスタンの姿を観察する。
彼は極一部の人間以外には壁を作っていた。中か外、中間は無く完全に隔てるタイプだった。
「(……いつも通り壁作ってたはずなんだが…あの子は俺なんかより更に高くて分厚い壁張ってたんだよな。
それなのに、その壁はボロボロで…ちょいっと突つきゃ一気に崩れそうで。
好奇心で隙間から中を覗いてみりゃ、小さい子供が1人で丸まって泣いてた感じ…か?
流石に放っておけなくて、壁を壊さねえようゆっくり登って保護して…
他に場所もねえから、俺の壁の中に連れて来て。元気になったと思いきやまた塞ぎ込んで。それを繰り返して…
最初は面倒くさい子供だったのに。今は…
あの子が俺の領域内にいるのが当たり前になっちまった)」
ふー…とため息をつく。我ながら丸くなったモンだなーと。
「先生」
「んー?」
「……イェシカさんって、どんな人だったんですか…?」
恐る恐る訊ねられ、顎に手を当て考える。
「んー…笑顔が可愛くて、鈴を転がすような声が心地よかった。基本的にお淑やかで平民ながらに仕草も洗練されていたんだが…
笑いのツボに入ると、外だろうと人目も憚らず馬鹿笑いしてた。それとカーテン見りゃ分かるだろうが頑固なとこがあった。
喧嘩するとしょっ中物投げてくるし。でもクッションとか柔らかい物ばっかりな。
一緒に料理して、俺が適当に色々ぶち込むと呆れてた。クソ不味いモンも笑いながら食べてくれた…そんな感じ?」
「とにかく大好きだってのは伝わった」
「そんだけかい!ははっ…?」
自分で言っておきながら、俺今笑った?と驚いた。
死後…彼女の事を語る時は、いつだって悲しみしかなかったから。
「…?どうしたの?」
「いや。…これからよろしくな」
「うん!」
セレスタンの頭を撫でて、学園まで送る。
精霊もヘリオスもいるし毎回送らなくていいからねと言われたが、夜道に生徒を1人で歩かせられないと拒否。
「おやすみ、セレスタン。妹の事…なんでも相談しろよ」
「…ありがとう先生。それと…」
「?」
「ベッドの下も掃除するから、エロ本は移動させといてね!」
「置いてねえよ馬鹿野郎っ!!」
「ひぇー!おやすみーっ!!」
きゃーきゃー言いながら寮に逃げる背中を見送り。
家に帰るのが楽しくなりそうだ…そう思いながら夜空を見上げた。
「ただいま」
誰も返事をしてくれないけれど。今まではそれが苦しかったけど…
今の彼は微笑んでいた。本人が気付いているかは、分からないけれど。
「………念の為チェックしとくか」
自分以外誰もいないというのに。妙にコソコソしながら、ベッドの下を確認するのであった。
「あんじゃねーかエロ本!!なんだよ、俺置いた覚えねーよこんなん!!!」
犯人:親友「イエーイ!!」
捨てる前に…ちろっと手を伸ばすオーバンでした。




