アカデミー2年生 19
セレスタンは寮まで逃げて1日中ベッドで過ごした。
夜ルキウスによって付けられたキスマークを確認し、姿見の前でへたり込む。その時の感触や昂揚感を思い出しては悶えて転げ回る。
精霊達は「ついにおかしくなったか…」と憐れみの眼差し。
キスマーク…鬱血痕は治癒で消せる。服で隠せる部分以外は全て治した。
全部消さなかったのは、彼を想う気持ちからかもしれない。
※※※
さてテストの結果は。
「あーーー!!!落第は免れたと思ったのに…!名前を書き忘れたなんて!!!」
ジスランはやらかしていた。
ブラジリエ伯爵が流石に哀れに思ったのか、勉強は半分にする約束に咽び泣いていたが。
セレスタンは12位。もうなんの感情も湧いて来なかった。
休暇に入ってすぐルシファーの輿入れだ。テノーより王太子リンバルが迎えに来る。本日より5日間、皇宮で盛大なパーティーが開かれる。
セレスタンは現在伯爵邸で準備中。一応月に2回くらいは帰っているのだ。シャルロットが寂しがるのと、お小遣いを貰う為だけに。
「よし…じゃあ行って来るね」
「ああ。待ってるから」
グラスに送り出され、バジルが操る馬車に家族と乗る。両親と狭い空間で数時間、セレスタンにとっては苦痛以外の何物でもないが…このまま入宮するのだから仕方ない。
「ロッティは今日も美しい。もちろん君も」
「嬉しいですわ、旦那様」
「ありがとうお父様。でもお兄様のほうが素敵だわ」
「ありがと(目が笑ってないよロッティ…)」
伯爵夫妻にとってセレスタンはいない者扱い。誰にも気付かれないよう、膝の上で拳を握った。
※
馬車が止まり、シャルロットをエスコートして歩く。煌びやかなパーティー会場に案内されスタートだ。
本日の主役のルシファーとリンバルに挨拶をし、必要な所も回る。
全て終わった後、セレスタンは顔面蒼白で口元を押さえていた。
「お兄様、大丈夫!?吐きそう?お手洗い行く?」
口を開いたら本当に出てきそうなので、小さく頷きトイレに行く。
スッキリしたらバジルに付き添われ、テラスに出て深呼吸。シャルロットは両親と行動しているので大丈夫だろう。
寒さのせいで誰もおらず、ようやく一息つけた。
「ふぅ〜……ぅい…」
「セレス様、何かお飲み物をお持ちしましょうか?」
「いや…いいから側にいて…お願い、1人にしないで」
「…!かかかしここまりましたっふ」
「君ってたまに変になるよね?」
バジルはセレスタンの涙目+上目遣い+裾ぎゅっ&懇願攻撃にハートを打ち抜かれている。
彼は割と女性好きで、気の多い性格だったりするのだ。令嬢にはそんな態度を取れないので、知っている人物は少ない。
双子と初めて会った時だってそうだ。
シャルロットの「よかった、目をさましたのね!もう大丈夫、ゆっくりからだを休めてね(お兄さまのごえいゲット!!)」という言葉と笑顔に一目惚れしている。
次にセレスタンと顔を合わせて。優しい言葉と柔らかい笑顔にまたも惚れた。彼は男…!と言い聞かせて事なきを得たが…彼女の秘密を知って以降、また再熱しているのだ。
だがグラスのような覚悟も無い、自分は半端な人間だと自覚している。
なので「可愛い」と悶えつつも、一線は越えてはいけない…と戒める。だが可愛い。
「人が多くて怖かった…でも皇女殿下のお祝いはしたかったし。
…王太子殿下、素敵な旦那様だよね」
「…はい。本当に仲睦まじく…」
パーティーホールを見渡せば。ルシファーとリンバルは腕を組み時折互いを見つめ、照れくさそうに笑っている。
政略結婚であっただろうが、それでも幸せになる夫婦は沢山いる。
だけど自分にはそんな未来は無い。それが堪らなく悲しかった。
それだけでなく、ホールには美しく着飾った令嬢が大勢いる。
可愛い妹も、絶えず子息が声を掛けていて…誰よりも輝いて見えて…
「……セレス様…?」
セレスタンは涙を流していた。
「…僕もね、綺麗なドレス着てみたい。それに……ごめん、なんでもない」
これ以上見ていたくないのか、彼女は外を向き天を仰いだ。テラスの柵を握る手は震え、ぐすっと鼻を啜る音がする。
「(本来ならば…ご令嬢としての幸せがあったというのに…!!)」
バジルはそんな彼女の後ろ姿に心が苦しくなる。自分の上着を羽織らせて、体が冷える前に会場に戻る。
パーティー終了後、ラサーニュ家は帰宅する。高位貴族や皇室と親しい家は毎日参加だが、彼らはそうではない。はずだった。
「あー待ってスタン。お前は残ってね」
「え…」
馬車までハーヴェイがやって来て、彼女を抱き上げて下ろしてしまった。
「ちょっとハーヴェイ卿!?お兄様をどうするのよ!」
「皇太子殿下からの命でね。スタンは5日間お泊まりだから」
彼は一応伯爵に許可を求めるも「好きにしろ」と無関心。内心「言質いただきましたー!」とハイテンションでセレスタンを連れ去ってしまった。
※
「はい、この部屋使って」
「ぎえ…超セレブ…」
「(令嬢が何言ってんだ…おもろ)」
連れられたのはただの客間だろうが、広く天井は高く調度品は全て最高級。暫く落ち着かなくてウロウロして、部屋の隅っこに収まった。
「猫かよ…ふひゅ…っ!」
顔を背けて肩を震わすハーヴェイ。頬を限界まで膨らませ、彼を両手でべしべし叩くセレスタン。
ぶすっと怒りながらも、恐る恐る探索を開始した。だがクローゼットを開けると…
「……ハーヴ兄、部屋間違えてない?ドレスがいっぱいなんだけど…」
「正しいぞ?いやー、実はさあ…俺のパートナーやって欲しいんだよね!」
「はいいいぃっ!?」
ハーヴェイは両手を合わせてウインクする。口が半開きという間抜け面で固まるセレスタンに、かいつまんで説明した。
「母親がさー、いい加減身を固めろってうるっさいんだよー!!確かに兄貴は全員嫁さん貰ってますけど?俺にもタイミングっつーもんがあんのよ!
んでさ、今回の結婚披露パーティーの間だけ女装してもらっていいかな?彼女として紹介すっから!」
「どうしてそうなっちゃったの!ハーヴ兄なら喜んでお相手したい令嬢いっぱいいるでしょ!?」
「え、やだ。もう決定事項だし、ルキウス殿下もオッケー出してるし」
「(僕の意思は?)」
呆れて物も言えないが…そっとドレスを撫でてみる。上質な生地でとても肌触りがいい。だがここで疑問が。
「………これ…誰のドレスですか…?」
「…………」
ハーヴェイは無言で素敵な笑顔。
わざわざ買ったの…!?と慄くセレスタンを見て楽しんでいるのだ。
「…ふはっ!悪い悪い、それルシファー殿下がサイズアウトしたやつだから気にすんな」
「よかったあ…!」
ほっと胸を撫で下ろす…のも束の間。皇女のお下がりって…畏れ多いよー!と半泣きになる。
そんなやり取りの中扉がノックされ、ルキウスが姿を現した。
セレスタンは以前の出来事を思い出し…頬を赤らめて俯いた。
「…ハーヴェイ卿、少し出てもらえるか」
「かしこまりました。では外で待機しております」
ハーヴェイはチラッとセレスタンに目を向けた後出て行く。
セレスタンは2人っきりが気まずくて、ルキウスの顔をまともに見れなかった。
「…その、すまなかった。君の意見も聞かず…」
「あ…や、えっと…
驚きましたが…僕の立場はどうなるのでしょう…?」
「ヴィヴィエ家が協力者だ。君は公爵家の遠縁で、田舎から出て来た令嬢という設定」
彼は膝を突きセレスタンの手を取った。
「もちろん辛かったらやめていい。君を苦しめたくないんだ。ただ…ドレス姿の君を、私が見たかったんだ…」
「……!」
「パーティー中は必ずハーヴェイ卿が側にいる。離れるとしても、その間私かルクトル、ギュスターヴ卿…信頼出来る者が付き添う。
それで…叶うならば。一曲でいい、私と踊ってくれないか?」
まるでお姫様扱い。それだけで嬉しくて、気付けば「喜んで」と返事をしていた。
彼女の支度はルキウスが信頼するメイドがする。絶対に秘密を漏らさないので、女性として楽しんで欲しいと。
「ありがとうございます。でもこの顔は…」
「髪はウイッグ、目の色を変えてメイクも施せば他人には気付かれまい。ラサーニュ嬢に似てると思われても、セレスタンだとは考えもしないだろう」
「……はい。今回は、ルキウス様の提案ですか…?」
「…………」
それは数ヶ月前。パーティーの打ち合わせ、警備体制についての会議終了後。
『あーあー。俺パートナーいないんだよなー。
寂しいなー、いっそスタンがドレス着てくんねーかなー。絶対可愛いのになー、見てみたいなー!』
『『『………』』』
『ハーヴェイ卿…君、もしかして知ってる…?』
『ん!!?なんすか副団長!?俺は単に、スタンにドレス似合いそうだなって思っただけっすよお!?』
『え、何、なんの話?』
超絶デカい一人言をするハーヴェイ。
戸惑うギュスターヴ。
確かに似合うかもなー、と考えるランドール。
即座にセレスタンのドレス姿を妄想するルキウス。
彼女に似合いそうなドレス、宝石、メイク…手配について速攻で組み立てるプリスカ。
こうしてセレスタンの女装?作戦が始動した。
「まあ…そんな感じだ。ゆっくりしてくれ」
ルキウスはそれだけ言って逃げた。
流石に皇室の晩餐会に混ざる勇気はなく、客間に用意してもらった。
近衛騎士達とプリスカ、ランドールと楽しく食事。パーティー楽しみだな〜と胸を弾ませるのであった。
※※※
「おはようございます、ラサーニュ令嬢」
「お…おはようございます…」
「お目覚めでございましたか、では朝食の準備をしてよろしいでしょうか?」
「お願いします…」
5人のメイド軍団がセレスタンの部屋を訪ねて来た。素早い動きで朝食の準備、片付け。セレスタンは用意されるがままだった。
「では準備に取り掛かります」
「まだ8時ですよ!?パーティーは昼過ぎからじゃ」
「ふふ、レディの支度は時間が掛かるのですよ」
一番若いメイドが指を頬に当てながら言った。メイド軍団はじりじりとにじり寄り…
「ひ…ひいぃ…!」
「素材は最高級、腕が鳴りますわ…!」
舌舐めずりでもしそうな凶悪顔でセレスタンを囲み。
「まずは入浴からですわ!!」
「ぎええええ〜〜〜!……気持ちえい〜…」
切り替え早いな、とメイド達は思った。
裸は恥ずかしい…!なんて隠す間も無く服は剥ぎ取られ、いい匂いのするお湯に運ばれる。全身をマッサージされながらゆっくり浸かれば、うへえ〜…ぃとオッサンのような声を漏らした。
何度も入浴をして揉まれて擦られて絞られて。支度が終わる頃にはぐったりしていた。
「ひい…!令嬢は大変だあ…」
「でも素敵です…!主役は皇女殿下ご夫妻ですが、輝かしさでは引けを取りませんわ!」
若いメイドに皆賛同する。
え…そんなに?と思い鏡を見ると…
※
「はあ…やはり私のパートナーになってもらいたかった…」
「兄上は無理ですよ。皆を混乱させてしまいます」
パーティー直前、トリオとハーヴェイはセレスタンを待っていた。
「お…お待たせ致しました…」
「スタン!待って…まし…た…」
開かれた扉から姿を現したのは。
「…えへへ、どうですか…?」
「「「「………」」」」
黒いウイッグを付けて紫の瞳。派手になりすぎない程度に大きな目はパッチリメイクで強調、血色の良い頬と唇。
刻印と胸の谷間が見えないよう首元まで隠している、水色のグラデーションが目を惹くドレス。幾重もの薄いレースは上品で、腰元のリボンは幼さが垣間見える。
本人の希望によりコルセットは緩めだが、それなりに豊満な胸のお陰でバランスが良く見える。
「彼女自身が宝石だ」というメイドの判断により、アクセサリーはダイヤのイヤリングとトパーズのブレスレットのみ。髪飾りには大きなサファイヤが使用されている。
極めつけは…不安そうな、でもどこか誇らしげな微笑み。男達は目が離せず、ルキウスは三度惚れた。が。
「スタン…俺のお嫁さんになって…成人まで待つから…」
「へ」
「させるかーーー!!!」
ハーヴェイがフラフラと近寄り、彼女の前に膝を突いて求婚してしまった。
※
「…視線を感じるような」
「そりゃスタンが超絶美少女だからな。あのご令嬢は何処の家だ!?ってなってんだよ」
「褒めすぎだよハーヴ兄。…ありがと、嬉しい」
「ん"ん"…っ!!」
パーティー中セレスタンは、ハーヴェイの腕を離さない。彼はもうそれだけで昇天寸前、生きてて良かった…と心の涙を流す。
誰もが突然現れた美少女を遠巻きに観察する。声を掛けないのは…ハーヴェイを始めとした騎士達が睨んでいるからである。
「エレナさん!」
「あ、ルネさん!昨日は挨拶出来なくてごめんね。すぐに僕だって分かった?」
「もちろんですわ。本当に綺麗…うっとりしてしまいます…」
「褒めすぎぃ〜…うひぃ」
ルネもベタ褒め、身をくねらせて喜ぶ。ふと彼女の後ろにいる男女が目に入った。
「あ…お初にお目にかかります!わたしはエレナ・カリエ。ルネさんと親しくさせていただいております」
「初めまして。こちらこそ、娘からよく聞いている。学園で素敵な友人が出来たとはしゃいでいてね」
「もう、お父様ったら…」
それはヴィヴィエ公爵夫妻であった。夫人は皇后と姉妹であり、どことなく雰囲気が似ている。
公爵は穏やかなおじさんといった印象で、セレスタンは少し安心した。
「本名はセレスタン君というのだろう?」
「はい…ご協力感謝致します」
「いいのよ。でもとっても綺麗…女性として羨ましいわ」
「夫人のお美しさには敵いません」
「まあ、お上手ね」
うふふと笑う夫人。親子仲も良好なようで…セレスタンは少しだけ、胸を痛めた。
「おっとダンスだな。閣下、夫人、ご令嬢。俺達は失礼させて頂きます」
するとハーヴェイが流れる動きで離脱してくれた。ルネにも「またね」と挨拶して別れる。
公爵夫妻と話すのは楽しかったけれど、やはり負担になっているのを察してくれたのだろう。
緩やかな曲に合わせて踊る2人。ハーヴェイは「上手いじゃん」と驚いた。
セレスタンは笑って誤魔化したが。いつもシャルロットのダンスを観察して、部屋で1人練習していた。
こうなる事を予期していた訳ではないが…結果的には大いに役立っている。
「スタンはカーテシーも優雅だし、仕草も完璧だな」
「ふふ。伊達にロッティを見てきてないよ。…ただの猿真似だよ」
自分で言って悲しくなる。楽しいダンスの時間なのに表情を曇らせてしまった。
ハーヴェイは「…よし!」と気合を入れて。彼女の脇の下に手を入れて持ち上げた。
「ひゃああっ!?」
「ほい着陸」
2回転半後ストンと下ろし、ハーヴェイはポーズを決める。つられてセレスタンもシュピッと腕を伸ばし、周囲から歓声が上がった。
「アドリブって面白えだろ?」
「予告してほしかったあ…」
心臓がバクバクと激しく音を鳴らし、覚束ない足取りで歩く。それは恐怖ではなく、高揚感から来るものだった。
配膳からジュースをもらい、2人は一息つく。
「俺な、最初剣術始めたのは兄貴達とババア…母上の猿真似だった。
テーヌ家は由緒正しい騎士の家系だったから…将来は騎士になるって自然と思ってた」
ハーヴェイは壁に寄り掛かりそう言った。彼が自分の話をする事は少ないので、セレスタンも隣に並んで聞き入った。
「んでも…アカデミーに入った頃かな。ふと思ったんだよ、「なんで俺騎士になるの?」って。
無い頭を捻って考えても「そういう家系だから」っつー答えしか出なかった。なんか…誰かに自分の人生を決められてる気がしてならなかったんだ」
彼は珍しく真面目な顔で語る。
他に生きる道は無いのか。剣は好きだけど、それすらも刷り込まれただけの気がしてしまう。
こんな考えは母を失望させてしまうのではないか。そう危惧して誰にも言えず、惰性で鍛錬だけは続けていた。
「惰性…」
「おう。
…学生の頃、魔物の討伐に同行した事があった。まー俺ってば端っこでチョロチョロしてただけで。
でも…そのお陰で4歳くらいの女の子が現場に蹲ってんのを見つけた。後で聞いた話じゃ、お祭りやってるって思って見に来たんだと…ある意味大物だわな。
誰も気付いてなくて、騎士に踏んづけられてもおかしくねえ場所にいた。こう、窪地にすっぽり嵌まってた感じ?
ただ魔物が火を噴いて、騎士達は避けたけど…運悪くその子目掛けて飛んでった。俺は無我夢中で飛び出して、その子の上に覆い被さった」
死を覚悟した。助かったのは彼の兄が弟の行動に、咄嗟に魔術障壁を張ったからだ。
そのお陰で多少の火傷で済み、犠牲者は出さずに任を終えた。
「いやー、家族や騎士達から「良くやったクソ野郎!!無茶すんな馬鹿野郎!!大したもんだアホンダラ!!」ってど突かれて褒められたぜ」
「褒め…てるのかな?」
「はは、細かいこたいいんだよ。
んでな、女の子は泣きじゃくってたんだけど…落ち着いた頃。俺の裾をぎゅーっと掴んで「あんがと、おにーたん」ってにぱって笑った。
その笑顔を見て…俺が騎士を目指す理由が分かったんだ。だから…」
ハーヴェイは優しい目でセレスタンを見下ろし、頭をポンっと叩いた。
「笑ってくれよ。俺はな、誰かの笑顔が好きだ。命を懸けて守りたい。クサいけど、お前に憂い顔は似合わねえぜっ!」
「……うん!」
「つか猿が人間に劣ってるなんて決めつけんなよっ。俺ぁ猿以下じゃねえかっつー人間腐るほど見てきたからな。お猿様に謝罪せい!」
「…あははっ!ほんとだね、ごめんねお猿様」
揃って声を上げて笑う。
ハーヴェイはその後、剣だけでなく魔術の腕も磨いた。身体強化や障壁を集中的に、兄のように咄嗟に発動できるようになるまで。
そうして現在努力が実り、近衛騎士団に所属しているのだ。
「そんで母上がー…」
「ほお?ようやくババア呼びは卒業か?」
「「へっ?」」
ハーヴェイ家族の話で盛り上がっていたら、どこからか女性の声が。ハーヴェイがゆっくりと振り向くと…
「げええっ!?母う、ババアっ!!?」
「言い直すなクソガキ!!」
そこには40代程で、細身の女性が立っていた。ドレスではなく騎士隊服で、美しいが格好良いという形容詞がピッタリだ。その後ろには4人の若い男性が。
「なんでここにいんだよっ!!」
「いや…ご家族が来るから僕にドレス着せたんじゃ…」
「……そうだった!!」
それはセレスタンにドレスを着せる言い訳に過ぎない為、完全に忘れていたようだ。
テーヌ家はにこやかに近付いて来た。セレスタンが挨拶する間もなく、次々に話し掛けられる。
「「久しぶり、ハーヴ。初めましてお嬢さん」」
長男次男は双子らしく、揃って挨拶してきた。二卵性なのか、そっくりでは無い。
「すっげー可愛いじゃん!ホントにこの弟でいいの?」
三男はハーヴェイ同様軟派なようだ。
「やっとハーヴにも素敵なお嬢さんが…」
ハンカチで顔を覆い感極まっているのが四男。セレスタンは名前を覚えるのが大変になってきた。
「こらお前達、困らせるんじゃないよ」
息子達を叱責するのがハーヴェイの母。彼女は息子達には厳つい顔を見せるが、セレスタンに対しては微笑んでくれる。
「初めまして、可憐なお嬢さん。私はハリエット・テーヌ。以後お見知りおきを」
「初めまして、エレナ・カリエと申します!ハーヴェイ卿とは親しくさせていただき……」
「「?」」
途中で切ってしまった。何故かと言うと…
「(で…デカっ!!?お兄さん達もお母様もデケエ!!)」
ハーヴェイ含め、テーヌ家は全員180cmを超える長身だった。特に三男四男は190も超えていそうで、6人揃って150cmの彼女を前後左右から見下ろしている。
圧された彼女はプルプル震えてハーヴェイの服をぎゅううっと掴む。まるで大型犬に囲まれた子猫のようなのであった。
「お母様50代なの!?40、いや30代って言われても納得するよ!?」「照れるねえ」




