アカデミー1年生 26
ちょっと説明が多いかも
セレスタンは夢を見ていた。幼い頃…母と慕うアイシャと町を歩いた記憶の。
男装を強要されていた幼いセレスタンを、アイシャはたまに外に連れ出していた。
可愛いワンピースに着替えて。アイシャを「おかあさん」と呼び。名前も…シャルロットから借りた「シャーリィ」と呼ばれて。
彼女は「シャーリィ」でいる間だけ、女の子で在れた。母と手を繋ぎ、束の間の休息を楽しむ。
そんなある日… 子供達に蹴飛ばされていじめられていた毛玉がいた。アイシャが子供を蹴散らしたけれど、毛玉はもう動かなくなってしまった。
しんじゃったあ〜!!!とセレスタンは大泣き。アイシャは落ち着かせてから…毛玉(多分子犬)を弔ってあげようと籠を買いに行った。
セレスタンは建物の隙間で泣き続けた。その時…
「…ねえきみ、泣いてるの?どうしたの?」
「ふえ…!?」
1人の少年が近付いて来たのだ。恐らく同じ年頃。セレスタンは、けだまちゃんがいじめられる…!と、白くてモフモフした毛玉を抱き締める。
すると少年は慌てて、何もしない!と否定した。その言葉に安堵するも…けだまちゃん、動かないの…と涙を更に流す。
少年は…いそいそとハンカチを取り出して、そっと彼女の涙を拭った。
そしてセレスタンごと毛玉を抱き締める。その温もりに…段々と涙が止まった。が。
ぴょこっ
「「…あれえ?」」
毛玉から、耳と尻尾が生えた。
そしてぱちっと青い目を開ける。その姿は完全に子犬で、どうやら単に丸まっていただけらしい。彼女らは完全に死んでると思っていたので、理解が追い付かなかった。
毛玉も2人を見比べて…首を傾げた。まるで「昼寝してただけなんだけど…何か?」と言っているよう。
セレスタンが「かわいい…」と呟くと、毛玉は彼女の頬を舐めた。鼻を寄せたり頭を擦り付け、くすぐったい!と笑う。
少女と毛玉が戯れる姿を見て、少年は頬を染めていたのだが…セレスタンは気付かなかった。
だが毛玉はけだまちゃんが気に入らないようで、呼ばれるとツーンと顔を逸らしてしまう。
なので名前を考えるも…ぽんた、わんた、わたげ…どれも却下される。少年のレオン、チャッピーも却下。
「もおお!!じゃあねー…んっと、白…ゆき、くも、わた、かみ。
んん…ひかり、いし、つき…***!」
ぴくっ
セレスタンが最後に挙げた名前に毛玉は反応して………
「……んあ…?」
そこで目が覚めた。あれ…けだまちゃん…?なんて、名前だっけ…
というかあの男の子……誰?
のっそりと起き上がり、顔を洗って意識を覚醒させる。
着替える頃にはもう、夢の内容は忘れてしまっていた。
※※※
さて、冬期休暇もあと数日で終わり。雪も溶け…セレスタン、バジル、グラスの3人は廃墟を訪れていた。
入り組んだ路地をスイスイ進むもので、セレスタンは「道分かるの!?」と驚いた。彼らは目印を頼りに進んでいるらしい。
グラスが指差す先には…あった。分岐点となる建物の壁に、緋色の十字架が浮かび上がっている。セレスタンは感心しながら歩いた。
「ここ、なの…?」
10分程歩き、広い空間に出る。
セレスタンは初めて目にする朽ち果てた廃墟…大きな教会に衝撃を受けた。こんな所に、人が住んでいたなんて…と慄いた。
「……こっちだ」
2人はグラス先導の元、教会に足を踏み入れる。ガラスが散乱し、とても裸足で歩けるような場所では無かった。
そして、礼拝堂の…祭壇の、前。壇上に…横たわる、子供の姿があった…
「あ…ああ…!!」
「お嬢様…!」
セレスタンはその姿を確認し…その場に崩れ落ちた。バジルが咄嗟に受け止めるが、彼も酷い顔色だ。
そこにいたのは、10人を超える子供達…の、亡骸。グラスの話によると、全員この冬に亡くなったらしい。
寒さのせいか、亡骸は腐ることもなくその形を留めていた…
そこにはセレスタンより年上の子や、まだ赤子と言っても差し支えのない子。セレスタンのパンを持って行った2人もいた…
セレスタンは子供達に近付き…近くにいた5歳ほどの少女を抱き締めた。
そうして大粒の涙を流しながら…誰に憚る事なく、大声で泣いた。
「ごめん…ごめんなさい、ごめんなさい…!!!
あああああぁぁぁ!!!!うああああああん!!!」
「………っ、う…」
バジルもその横で、声を殺しながら泣いた。グラスはそんな2人を見下ろしながら…涙を流していた。
彼女の叫びは教会中に響き渡る。話によれば裏手の山には…歴代の子供達の墓もあるらしい。これまで、何十何百の犠牲者がいたのか…涙が止まらなかった。
ごめんなさい。
何も知らなくてごめんなさい。
助けられなくて…ごめんなさい。
自分だけ苦しい思いをしているなんて…愚かにも被害者ぶっていてごめんなさい。
僕は立派な加害者だ。父親と一緒になって…領民を苦しめていた。
ごめんなさい。ごめんなさい……
長い時間そうして泣いていた3人だったが…すっかり日も落ち、月が昇っていた。
春になって地面が柔らかくなったら…必ず、埋葬すると誓い彼女達は教会を出る。
だが…礼拝堂、正面玄関を出た3人は、足を止めた。
目の前に、大きくて真っ白な狼が静かに座っていたのだった。
彼女達は驚いたが…恐れる事は無かった。このような狼が目の前にいたら、腰を抜かしそうなものだが…不思議と、恐怖心が湧いて来なかったのだ。
何よりセレスタンには、その狼に見覚えがあった。
月光を浴びてキラキラと輝く毛並み、彼女を愛おしそうに見つめる優しい青い瞳は…
「つき…。あなたは…どこかで…?
ああ、そうだ…あの時の……毛玉ちゃん、セレネ?」
彼女がそう呟いた瞬間…自分の中に、なんだか暖かいものが流れた気がした。
「そうだぞ、シャーリィ!会いたかった、ずっと名前を呼んでくれるのを、待ってたんだぞ!!」
「わっ!?」
「「ぐええっ!!」」
すると狼は、彼女に向かって駆け出しその巨体で飛び付いて来た。当然セレスタンに支えきれるはずもなく。2人の少年も巻き込んで倒れ込んだ。
「あ!ごめん…!」
ようやく自分が3人を潰している事に気付いた狼…セレネは小さくなった。まるで子犬のようで、最初からそうしろ…と3人は思った。
セレネはセレスタンの顔を舐め、頬擦りをし、尻尾を力いっぱいブオンブオンと振り回す。
「会いたかったんだぞ!あの日からずっと…3日置きくらいに会いに行ったけど、全然セレネの名前を呼んでくれないんだから!!」
「えっと…?ごめん、ね?」
「うん、呼んでくれたから許すぞ!!精霊フェンリル、名はセレネ。シャーリィを主と定め守るんだぞ!!」
「「フェンリル!!?」」
フェンリル、という言葉にセレスタンとバジルは驚いた。それが真実なら…この子犬は、伝説とも言える最上級精霊となる。
何故フェンリルがセレスタンと契約を?シャーリィと呼ぶのはなんで?等聞きたい事は沢山あったのだが、セレネがそれを遮った。
「シャーリィ…どうして泣いていた?泣いて欲しくないんだぞ」
「あ…と…その、ね」
セレスタンは、ゆっくりと事情を話した。するとセレネはピョンと彼女の腕の中から降りて、また大きな狼の姿になる。
「そっか。シャーリィは、どうしたい?」
「どう、って…?」
「死んでしまった人間は生き返らない。なら、シャーリィはどうしたい?セレネはな、シャーリィの力になりたいんだぞ。
誰かを想い、こうして祈り涙を流す…そんなシャーリィが、セレネは大好きなんだぞ」
セレネの優しい眼差しと言葉に、セレスタンはまた涙を零しながら言った。
「僕、は。
これ以上…誰にも死んで欲しくない…!家の無い子達に暖かい家を、食事をあげたい。でも、僕1人じゃ出来ない…!!
だから、僕が当主になるまで…待っていてもらうしか…。でもその間にも、どれだけの子供が犠牲になるの、か…!!」
「…うん。わかったぞ、シャーリィ」
セレネはその大きな顔を近付け、また彼女の頬を舐めた。そして3人に少し離れるように指示し…大きな、咆哮を上げた。
「ひゃっ!?」
「うわ!」
「……!」
それは大地を揺るがすものだった。バジルとグラスは両側からセレスタンを支え守る。
そして地面のあちこちに…魔法陣が展開されていった。
「なに、なにごと!?」
「お嬢様、離れないでください…!」
いくつもの陣が一斉に輝き暗闇を照らす。
光と土煙が収まる頃、その場には…杖を持った美しい女性。頭に大きな花を咲かせた、緑の少女。炎を纏った黄金の鳥がいた。
「あれって、フェニックス…!?」
セレスタンとバジルは見覚えがある、フェニックス。一体何故…
「クロノス、ドライアド、フェニックス。頼んだぞ!!」
セレネがそう声を掛けると…まず女性が手に持っている杖を掲げた。
すると教会が光に包まれ…一瞬にして、廃墟ではなく美しく荘厳な建物に生まれ変わっていた。
「「「………!!!」」」
3人は言葉を挟む事も出来ない。
次に緑の少女が両手を掲げると…大地が輝き、数多の植物が生えて来たのだ。果実の成る木、沢山の野菜の畑…これだけあれば飢える事は無いだろう。それに野菜を売れば、肉や衣類を買う事も出来る。
最後に…フェニックスが教会の中に入った。セレネに促され3人も続く。
そしてフェニックスは、子供達の上で羽ばたいた。フェニックスの体から溢れた火の粉が…子供達を包んだ。そうして彼らは、光となって天に昇って行く…
「あ…どうなったの!?」
「大丈夫なんだぞ。彼らは一度冥府に向かい、新たにフェニックスが命を吹き込む。
今度は暖かい場所に生まれて来るように。シャーリィの願いを聞き届けよう。
という訳で、ちゃんと送ってくれよ、死神」
セレネは虚空に向かって声を掛ける。
彼女達は…セレネの言葉を信じ、祈った。儚く散って行った子供達が、今度は幸せになれますように…と。
この教会ならば、冬でも凍える事もないだろう。
フェニックスの力が宿っているお陰か、一定の温度が保たれているのだ。
「シャーリィ、喜んでくれたか?」
「うん、もちろんだよ…!ありがとう…ありがとうございます、皆様!!」
感激するセレスタンの頭を、フェニックスが嘴で撫でた。クロノス、ドライアドと呼ばれた女性達も、彼女の頭を優しく撫で…微笑み消えて行った。
「さあ、帰ろうシャーリィ。大丈夫、セレネはただの子犬の振りをしておくぞ」
「うん…行こう」
セレネは3人を背に乗せ、疾走する。あっという間に屋敷に着き…セレスタンは今、夢を見ていたんじゃ無いかとすら思っていた。
でも、夢なんかじゃない。これからはあの教会を…孤児院として使おう。彷徨っている人がいたら、あそこで保護しよう。自分が伯爵となる日まで…そうやって命を繋ごうと、彼女は決意したのだった。
セレスタンは世界的に見ても前例の無い、最上級精霊との契約という偉業を成した。
それだけで…彼女の立場は伯爵など足元にも及ばない、望めば皇族以上の待遇を得られるだろう。
しかしセレネを道具のように使いたくなかったし、祭り上げられるのも嫌だった。が…いつかこの立場が、必要になる時が来るかもしれない。例えば…無能だと判明した父親を、引き摺り下ろす時…とか。
「バジルにグラスか。お前達にもセレネと呼ぶ事を許してやるぞ!」
「あ…ありがとうございます…」
「ありがと、う?」
最上級精霊は、面と向かっては個体名で呼ぶ事すら畏れ多い相手。なので通常は「光の最上級精霊様」と呼ぶのが礼儀。
なのにセレネはセレスタンだけでなく、2人にも気安く接する許可を出した。彼らは味方だと判断したのだろう。
元々フェンリルは最上級精霊の中でも穏やかな部類に入る。逆に一番冷酷なのが、先程も登場した木の最上級精霊ドライアドだと言われている。
「ねえ、どうしてセレネはしゃべれるの?」
「人間と契約すると、最上級精霊は契約者以外にも言葉が通じるようになるんだぞ」
夜…セレスタンは暖炉の前で、セレネを抱っこしながら聞いてみた。どうして今姿を現したのか、どうして自分を…と疑問は尽きない。
「んー…最初は刻印しようかと思ったけど。あれは精霊側からの一方的な契約だから、刻印しちゃったら消えるまで通常の契約は出来ないんだぞ。
それと魔力も安定しない子供と契約しては、身体に悪影響が出る。人間離れしてしまうとか…魂を蝕んでしまうか。何が起こるか分からないから、大きくなるのを待っていたんだ!
それにな、セレネは凄く強くて尊い存在なんだ。人間からどう扱われているかも知っている。
例えば…シャーリィがこの国を滅ぼしたいって言ったら、喜んで叶えたくなる。だが人間は、セレネはおろかシャーリィを咎める事も出来ないだろう」
「やめてね!?」
「うん、でもどうしようもないんだぞ。だってセレネは世界中の生物とシャーリィを天秤に掛けたら、シャーリィが大事なんだから!
だから…君が物事の善悪を判断できるまで、見守るって決めたんだ。もう大丈夫だぞ。
これからはセレネがお守りす…あっ、そうだ」
セレネは言葉を切ったと思ったら、光の精霊達を呼んだ。小さな前足で精霊達の頭をポカポカ叩く。ちびっ子達はきゃーやめてー、おーさまやめてー!と逃げ惑う。
「全くコイツらは!シャーリィに眠りの術を掛けるし、危なっかしい!ちょっと強くしていいか?」
「強く?どうぞ…うあっ?」
セレスタンが肯定した、瞬間。全身から力が抜けて、椅子から落ちそうになってしまった。
「セレス様!?」
側に立っていたバジルとグラスが慌てて受け止める。魔力がごっそりと持っていかれたようで…身体に力が入らない。
一体何に使ったのか…と3人がセレネに目を向ける。すると4体の精霊が、白く輝いているのだ。
光が収まると。バラキエル、ガブリエル、セラフィエル。彼らは10cm以下で二頭身の精霊だったのだが…15cm程の三頭身になり、翼も大きく頭の上には光の輪が輝いている。その姿はまるで上級精霊の天使そのものだった。
それだけでも充分驚きの光景なのだが、問題は次。
バラキエル達がセレネの身体に触れた。同時に先程とは比べ物にならない程…精霊達が強い光を放ったのだ。閃光に耐え切れないセレスタン達は蹲って目を隠す。
光が収まった頃を見計らって、ゆっくりと目を開けると…セレスタンの視界に真っ先に入ったのは、長く美しい金の髪。
「セレスタン様。これまでご迷惑をお掛けしました…天使バラキエル、貴女をお守りする盾となりましょう」
「へ……」
そこには腰まである髪の、端正な顔立ちの男性の姿。露出の多い服装の為、彫刻のような身体を惜しげもなく見せている。彼はセレスタンの手を取り、甲にキスをした。3人は唖然とするしかない。
「ではこの天使ガブリエル。貴女の槍となりますわ」
「ほっ?」
声がする右側を向けば、これまたゴージャスな美女が。身体の線に沿った服装の所為で、豊満な胸が真っ先に目に付くだろう。彼女はセレスタンの額にキスをする。
「それでは天使セラフィエル。キミの矢となろう!」
「はあ…」
今度は左側から声が。3人が流れるようにそちらを向くと、美しい中性的な…恐らく少年が。屈託の無い笑顔を見せて、セレスタンの頬にキスをした。
バラキエル、ガブリエル、セラフィエルを名乗る彼ら。いずれも人間離れした美貌の持ち主で背中には美しい翼、光の輪は最早光背。セレスタンを蕩ける瞳で見つめている。
ついにセレスタンは限界を迎えて…
「………きゅぅ」
「セレス様ーーー!?」
頭を沸騰させて倒れてしまったのだった。
セレスタンはガブリエル添い寝のもとベッドに寝かせて。バジルがセレネに訊ねる。
「セレネ…何が起きたのか、説明してもらえるか?」
「ふむ。まず…コイツらは中級精霊だったのを、セレネが上級に進化させた」
セレネの話を纏めると。
精霊は条件を満たすと、位を上げる進化が出来る。ただし上級が最上級になる事は無い。
人間との契約。精霊本人の希望。属性の最上級精霊の許可。3体は満たしていた為、契約者の魔力を使い進化した。それにより光の精霊から天使となった。
「そして最上級精霊には、属性の精霊を眷属にする事が可能。セレネがそれをしたからコイツらは能力も上昇して、上級の中でも最高位の精霊となった。
更に己の姿を変えて、人間の言葉を操る能力も与えられた」
セレネの合図で、天使達はポフっと音を立てて三頭身に縮んだ。その状態でも会話は出来るようだ。
精霊の階級が分かりづらくなってしまったバジルとグラス。そこでセレネが…
最上級=王
高位上級=大公
上級=侯爵
中級=男爵
下級=平民…と表現した。
「ふむふむ…ガブ達は公爵より上…か。え…凄くない?」
「まあ人間からすればそうだぞ!でもお前達、シャーリィは目立つのを好まない。だからこっそりお守りするんだぞ!」
「「「畏まりました、我が王」」」
「(ひえ…!セレスタンお嬢様の戦力が…軽く皇国越えちゃった…)」
グラスは分かっていなさそうだが、バジルは現状を把握して頭を抱えた。だが…最強のボディーガード達がいるのだ、これ以上セレスタンが傷付く事は無いだろう。そう微笑むのだった。
※※※
次の日、ジスランが屋敷を訪ねて来た。
「セレス!やっと遊びに来れた…!皇太子殿下は来ていないな!?」
「来てないよ?」
彼は満面の笑みで部屋に入って来たが…セレスタンの隣に見慣れない男がいるので固まった。
「そ…の、隣は…新しい使用人か…?」
「まあそんな感じ。グラスって言うんだ、よろしくね」
「ああ…俺はジスラン・ブラジリエだ…」
「グラスだ…です。よろしく、お願い…し、ます」
グラスはいつもの不遜な態度を抑えて、バジルに教わった通りに挨拶した。それでもジスランは、やや圧され気味だが。
それと言うのもグラスは、どこか気品のある少年なのだ。どれだけ痩せ細り見窄らしい格好をしていても、瞳の奥に高貴な熱を持ち、全身から威厳オーラを放っている。
これから健康的な姿を取り戻せば、それは加速するだろう。
ジスランはいつものように過ごしていたが…中々帰ろうとしなかった。もう遅いから帰りなよ、と言われてもだ。最後はシャルロットにつまみ出された。
「今日のジスラン変だったな…」
「おいセレス様。ジスラン…様は帰ったんだ、顔を見せろ」
「んもー…」
グラスはセレスタンが顔を隠すのが気に食わないようだ。彼女の意思を尊重しつつも、自分がいる時は髪を上げていろと言う。
「君は何に拘っているの?」
「そんなもの、無い。ただお前の…瞳が見たい。それだけ」
「なにそれ…」
セレスタンはため息を吐くが…バジルは顔を引き攣らせている。まるで愛の告白じゃないか…!と。
グラスは部屋の中では彼女から離れようとしない。しかもベタベタと触れようとするので、バジルや精霊達が止めている。
「(以前言っていた、セレス様はおれのものだって…本気か?貴族と平民は結ばれない、分かっているだろうに…)」
バジルは友人に対して憐れみの視線を送る。
1ヶ月の休暇も終わり、新学期が始まる。
首都に向かうセレスタン達、一緒に馬車に乗り込もうとするグラス。カリエに首根っこを掴まれて大人しくなった。
「週末は帰ってくるからねー」
「毎週だ、絶対だ」
シャルロットは据わった目でグラスと睨み合い…セレスタンの腕をぎゅっと掴む。
「あれ…お兄様、精霊ちゃん達大きくなった…?」
「………成長期みたいだよ?」
3体は言葉を発さず、ニコニコ笑うばかり。シャルロットは疑問に思いつつ、精霊に詳しくないので一応引き下がった。
ちなみにセレネは膝の上。犬型の中級精霊なんだー、と言ったら受け入れてもらえた。
3人と4体を乗せた馬車は首都を目指す。セレスタンはこれから忙しくなるな…と気を引き締めていた。




