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スキとキライは表裏一体

長らくお待たせしました!

中盤は少し目を瞑ってあげてください!

 完全に二人の精神が合わさるまで部屋でダラダラゴロゴロと、役目というものを放り出してくつろいでいると、部屋の外からインターホンが鳴る音が聞こえた。


 うーー、動きたくないよー。


 でも、もちろんそんなわけにはいかないのでベットから飛び起きる。

 そして部屋の扉を開けると、玄関まで駆け降りた。


「変身は……別にいいか」


 面倒だし、一晩で突然立ったこの家を訪ねる人なんて余程の物好きか、お姉ちゃんくらいしかいないし。


 ――という事で私は幼女の姿のまま玄関の扉を開けた。


「こんにちわー」


 するとそこに居たのはやっぱり――いや、案の定と言うべきか、お姉ちゃんだった。


「こんにちわ。……お姉ちゃんの事だから私の部屋に転移して侵入するとか、もっとクレイジーな方法で会いに来ると思っていたけど」


 別に、期待を裏切られたとかそう言う意味ではなくて、ただ単純に驚いた。こんなにお姉ちゃんがまともだったなんて……。


「だって、侵入したら口を聞いてくれないじゃない」

「……正解!よく分かってるね。その通りだよ!」

「うぅ、正解したのに何故嬉しくないのかしら……」


 でも、プライベートを侵さない事は大切だと思うんだ。


「で、どうしてここへ?」


 お姉ちゃんの場合、何の理由もなくても私たちのところへ来そうだけど――――表情を見れば分かる。何か、今日はそういう感じではなさそう。


「シュナ……いや、翔くんと話をしに来た」

「僕に、ですか?」

「伝えないといけないと思ってね」

「は、はい。立ち話もなんですしどうぞ中へ入ってください」


 少し長くなりそうな気がするし、そもそもお姉ちゃんといえど、客人を外で立ったままにさせるのもどうなのかと思ったので家へ入ってもらうことにしよう。


 そんな思いで、中へ招き入れると――


「人格が翔くん強めになると、凄くしっかりするよね。……その切り替えはどうなってるの?」

「別に意識すればなんとか……って、変なこと聞かないで下さい!?」

「ごめんごめん」


 翔にとって少し難しい問題である、シュナと翔の関係に関わるようなことを聞かれた。

 翔は完全に無防備状態だったので素で答えそうになってしまった。――いや、言ってしまっているか。


 まぁ、少し重かった雰囲気も良くなった所で、二人はリビングで向かい合った。

 まず先に口を開いたのはゼニアスだった。


「ここ最近で色々と面倒ごとに巻き込まれたり、突っ込んだり、忙しそうだけどそうさせちゃってごめんね」


 申し訳なさそうにゼニアスは翔に謝る。


「いやいや、謝らないでください!

 ほとんど、というか全部僕がやらかしたのがいけないんですから」


 翔は頭を上げてくださいと、ゼニアスに伝える。


「本当に……いいの?」


 すると、そう言って顔を上げた。


「はい、別に気にしてませんよ」


 ゼニアスはそうだったのかと、ほっと胸を撫で下ろした。


「むしろ、お茶も出せなくて、こっちが申し訳ないくらいですよ」

「いやいや、それは私が急に来たのが悪いよ。それにお茶なんて出さなくてもいいんだよ?

 気をあまり遣わないくらいの関係でいたいじゃない?」

「んん……たしかにそれもそうですね」


 僕は『それでもお茶くらいは出したほうがいいのでは……』なんて考えが頭をよぎったけど、そういう事を言いたいのではないから我慢する。


 うん。確かに気を遣いまくってお互いに疲れてしまう関係よりも、気遣い無用の関係でいたい。


 ――――でも、お姉ちゃんは神様なのにそれでいいのだろうか?

 ……あまり考えないでおこう。困ったら現実逃避、これに限るね!



 さて、お姉ちゃんもこれだけの事を言うためにわざわざここまで来たと言うわけではないだろう。

 そろそろ本題へ移りますか……


「ところで、今日はどのようなご用件で?」

「少し硬いね……。まぁいいんだけどね。

 今日来たのは、大きく分けて私からの質問と、伝えなければならない事を話しに来た」

「どっちもすごく気になりますね。……とりあえず質問から先に聞きましょうか?」

「いいの?……じゃあ、お願いしようかな」


 翔は、とりあえず相手からの質問から先に答えるべきだろうと提案する。

 ゼニアスも断る理由はないし、できるなら早く知っておきたい内容でもあるので、勿論その話に乗った。


「さて、質問だけど……翔くんがシオンと戦っていたときに乱入した人がいるって本当?」

「乱入した人、ですか……」


 一瞬何の話だと思ったが、転生前に戦って、死ぬことになったあの戦いだとすぐに理解すると、あの時の事を少し思い出そうとしてみた。


 すると、すぐにその乱入者について思い出すことができた。


「……確かにいましたね。僕が《天泣の哀情(エンゼルメルト)》とかいう非人道的で容赦ない魔法から身を隠していた間に突然現れました」

「あ、はは……。あれは本当にごめんね……」


 翔は例の魔法をかなり強調して伝える。

 そして伝えられた側のゼニアスは、突然黒歴史を掘り返されて戸惑ってしまう。

 また、再び甦えった罪悪感によって、ゼニアスは翔に頭を下げるのだった……。


「大丈夫ですよ、今となってはあまり気にしてないので」


 そんなゼニアスの姿を見て、流石に申し訳ないと思ったのか翔は大丈夫だと伝えつつ話を続けた。


「……話を戻しますが、ゼニアスさんが出てきた後、……黒いフードで身を隠した人が現れました。

 その乱入者はかなり戦闘慣れしていそうでしたね。短剣二本と暗器でシオンと互角とまではいきませんけど、渡り合っていましたし」


 翔はあの戦いを思い出してそう語る。

 見たところシオンが優勢のように見えたが、黒フードの鮮やかな技によって、攻撃を受け流していた。

 さらに、翔の方に攻撃をする余裕まであった――


 ――そう考えると、かなりの実力者であり、戦い慣れしていることが窺える。


「黒いフードねぇ…………。やっぱり私があの魔法を放つ手伝いをしてあの場から居なくなった後、直ぐに現れたと見るのが妥当かな」


 ゼニアスはその話を聞いて、そのように話す。


「うん、情報ありがとうね」

「いえ、でもあまり力になれそうになくてすみません」

「いや、かなり役に立ってるよ?ありがとう。

 それに、後はシオンから色々聞いてつなぎ合わせてみるね」


 翔は役に立てているか不安でそう言うが、かなり役に立っていたりする。

 その場にいた人の証言というのは、いつだって貴重で重要なものだ。


「さて、翔くんに話を聞いてもらったわけだし……伝えなきゃならない事を話そうかな?」

「あの、伝えたいことって……何なんですか?」

「それは…………いや、やっぱり先に翔くんに何かしてあげよう。……じゃあ、何でもお願いを聞いてあげるよ」


 さっきまで自分から話そうとしていた事でもある翔の質問に、何故かゼニアスは思いとどまる。

 そして、話を逸らすかのようにそう言った。


 そんなゼニアスの姿に少し翔は訝しむが、気にしても無駄だろうとゼニアスの話に乗ることにする。


「……やっぱりこう言うことって直ぐには思いつかないです。

 お姉ちゃんの場合何でも聞いてくれそうな気がして、もっとダメです」

「あはは……やっぱりそうか。まぁ、話を聞いた後にでも考えてみて」

「……分かりました」


 結局、何でいきなりこう言う話をしたのかは謎だが、ゼニアスは焦らした話をこれから話してくれるようだ。


「まず、覚悟しておいてほしい事があるんだけど。

 翔くんにとって難しいことを話すかもしれないから、よろしくね?」

「難しいことですか……分かりました」


 難しいことというと、何か翔にとって悪いこと――辛い事を話すという事だろうか?

 とにかく、ゼニアスはそう前置きを置いて話し始めた。


「翔くんに話したいことは大きく分けて二つ。仕事の事と、遠坂咲――――私の呼んだ勇者の事」

「咲の事ですか……?」

「うん。ただ、この話より先に仕事についての話をしましょうか?」


 ゼニアスは翔に少し圧をかけつつそう言った。

 翔は、小さい体を少し身震いさせ、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「これから翔くんにはお仕事――――人族を滅ぼしてもらうわけだけど、できそうなの?」

「…………はっきり言って、今のように僕の意識が外に完全に出ている間でないと厳しそうですね。

 シュナは、そう言った事が嫌いみたいなので」


 翔は自身が完全に表に出ている状態ならできるが、シュナと意識がともにあるような状態では無理だと、はっきり伝えた。


 しかし、ゼニアスは少しその答え以上の何かがあるのだろうと思って質問した。


「やっぱりね。……でも、それだけじゃないでしょ?翔くん」

「っ……」


 ゼニアスが何かを隠しているように、翔にも自分自身に気付かせないように、ひっそりと隠したものがある。

 それは――


「翔くん自身にも殺せない人はいるでしょう?」

「…………はい」


 翔の周りに大切な人が増えて、仕事を全うできなくなりつつある。

 翔自身も目を逸らしている問題。


 それに再び目を向けさせるため、ゼニアスはそう質問したのだ。


「シュナも、翔くんも……ソプラも、みんなおかしいほどに優しいもの、どうせそうなるだろうと思っていたよ」

「……やっぱり、僕ではダメそうですか?」

「正直、今のままでは無理そうね。……いや、最初から無理だと思っていたもの」

「……そう言われると…………少し応えますね」


 ゼニアスの衝撃のカミングアウトに、翔はそう言い、苦笑する。


「翔くんには、両親も、遠坂咲も、妹も……誰も殺せはしないよ。……勿論、君自身も」

「は……は…………」


 現実を無理やり突きつけられて、翔は言葉を失ってしまう。


「翔くん、今直ぐにでも死にそうな顔してるよ?」


 その瞬間、頭が真っ暗に塗りつぶされた。

 まるで、全てを消し去ってしまうような冷たく、深い闇。

 久しぶりに感じたこれは――――


 ――――自殺衝動


「どうしよう、死にたくなってきた」

「っ……私の妹の体、傷つけないでよね?」


 ゼニアスは突然翔がそう言い出したので、一瞬驚いたが、すぐに冷静さを取り戻すと、そう伝えた


「……ゼニアスさん、僕って異常ですか?

 死にたくなるのっておかしいですか?

 こんなに胸が痛くなるのって、どうしてなんですか?」

「はっきり言って、翔くんはおかしいよ」


 ゼニアスはそう言う少し前、翔と結んだ約束を破った。

 ――――心を読んだ。


 すると、そこにあったのは闇。深い闇。

 普段はどこかに綺麗に仕舞われている闇が、翔の心を包み込んでいた。


 闇の正体は自分への否定だったり、自殺願望であったり……暗い感情の塊。

 ――――しかし、その中にあるものは全て自分自身へ向けられた物だった。

 一つもゼニアスへ向けた悪意はなかった。


「どうして、そこまで自分を責め続けるの?

 私に悪意を突きつけないの?

 ――――なんで、自分で全部背負いこむの?」

「あはは……どうしてでしょうね。僕、どうしてもゼニアスさんの事は嫌いになれないみたいです」


 翔は、終始辛そうな顔でそう話す。

 それを見たゼニアスは――


「あーー、もう!ここまでやったのは間違いだったわ」


 これ以上は無理と、そう言って、ついに吹っ切れた。


「やっぱり貴方にはこれは向いてない。でも、私もそうだと思って任せたのよ?

 多分あの子もこうなるだろうと思って任せたのだと思う。

 ……それは、翔くんの考えで、何にも囚われずに生きてほしいって事だと思う。

 そして、あわよくば問題を解決して、私とあの子で仲直りして、君ともみんなで色々語り合って…………そんな、贅沢な事を望んでる」

「それって……」


 翔はゼニアスの話を聞いて、何となく察してしまう。

 この旅の結末を。


「そう、元々貴方を消す気なんてない。

 そんなことしたらソプラにまた嫌われてしまうわ」

「……」


 翔は今まで考えていた事が、馬鹿馬鹿しく感じてしまう。


「僕、さっきのお願いを何でも叶えてあげるってやつで馬鹿なこと考えてました。

 ……僕を消してほしいなんて、おかしいですよね」

「確かにおかしいかも。でも、それが貴方らしい」


 さっきまでの暗い雰囲気が嘘のように、今はお互いに何かが晴れたような気分だった。


「もう、貴方はすぐに答えを決められそうだけど、一応質問」

「はい」

「……この仕事、最後まで全うしたい?」


 ゼニアスは一呼吸置いて、そう聞いた。

 翔は、その質問に迷いなくこう答える。


「絶対に嫌です。もし、わがままが許されるならもっと違うやり方で、世界を()()()やりたいです」

「うん。勿論異議はないよ。……これからもっと大変になると思うけどよろしくね」

「はい!改めてよろしくお願いします!」


 こうして、ゼニアスの突然の訪問により旅はここから再出発する事になったのである……。

いやー、物語もやっと中盤かぁーー。長かったなぁ……。



っていうのは冗談です。こんなに長い間やって半分も進んでないってマジ?


と、言う事で再出発ですね。私も気持ちを切り替えていきたいところですが、投稿スピードは永久にこれくらいかも……。



そして、卒業シーズンがまたやってまいりましたね!(強引)

今更感が否めないかもしれませんが、今年卒業した方はご卒業おめでとうございます。

これからも頑張ってください!(と、無責任に応援します)


留年しちゃいました……という方は…………もう一年遊べるドン!と、まぁ、あまり重く受け止めすぎるのも悪いと思うのであえて開き直ってみるのもアリかもしれない……(そんなことはないかも……)


とにかく、癒し系小動物はいつもここで待ってるのでまたいつでも帰ってきて下さいね。

感想欄に私への質問とかでも、何でも書いちゃって下さい。(露骨なコメ稼ぎ)


長話もほどほどにして、締めますね。


では、相変わらずの更新ペースですがこれからもよろしくお願いします!

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