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間話:はじまり

昔の話を少し。


後二、三話ほど閑話が続く予定です。

 お風呂の中で僕は私と少し険悪な雰囲気になったものの、すぐにそれはおさまった。

 お互いに睨みあっていても意味は無いし、結局のところ目的は同じだ。


 ただ、僕らがお互に嫌いになればそれは自分自身を嫌いになっているわけではないよね、という話。

 本当に子供っぽい発想だけれど、実際幼女なわけだし問題ない。――よね?


 とまあ、僕がシュナを嫌っている宣言をしているけど、実際のところあまり嫌いじゃない。

 多分、シュナも同じだろう。――――シュナの姿で僕が動き過ぎたせいか、今はお互いのことがいまいち分からないけれど。

 一時的に精神が二つに分離した――というのが一番分かりやすいかもしれない。


 兎に角、そんな状態だから100%僕が表に出ているようなものなんだけど……今がお風呂の中だという事を忘れてはならない。

 つまり…………死にそう。


 早く体を洗って今すぐにでもお風呂の外へ逃げたい僕、VS(バーサス)お風呂だしゆっくり入りたいシュナ。そんな不毛な争いを繰り広げざる負えない状況に陥っている。

 しかし、体の主導権を僕は一時的に剥奪されている様子。つまり、見たくなくても見てしまう。

 しかも今は成長した姿で……。


 ん~~罪悪感のようなものに押しつぶされそう!!


 と、いう事で考えで頭の中をいっぱいいっぱいにして視界に気が向かないようにしようという愚策にでるしかない。



 ――――せっかくだから昔のことを思い出してみようかな。こんな機会にしかゆっくり思い出すことなんてできないだろうし。

 小学生の頃の話……とかいいかもしれない。お姉ちゃんことゼニアスさんの検閲もかかっていないようだし。



◆ ◆ ◆



 校舎のはずれにある階段、それを登り切った先にある場所は……僕の避難所であり、居場所であり……唯一安心することのできる場所だった――――



 朝、登校すると僕はすぐにいつもの場所へ向かった。

 教室にいても碌なことにならないので、荷物を背負ったまま廊下を歩き……校舎の一番端へと向かう。


 そこにあるのは小さな階段。誰も使っていないのか、昇降口のすぐ正面にある大階段と比べると小さく、薄暗い。

 それもそのはず、この階段がどこへ続いているのかというと……天文ドームである。


 小学校にしては珍しく、この学校には小さいながらも天文ドームがある。

 天文ドームなんて日常的に行くものでもければ、授業でも使うことはないため、なぜあるのか本当に謎である。

 だけれど、僕のようなクラスのはぐれ者からすればありがたい場所だ。


 天文ドームには屋上へ続く小さな扉がある。

 そして、これもまた何故か閉じられていない。年中鍵はかかっていない。


 そんな、少し重い金属の扉を開けると……ほんの少し広い屋上が広がっている。

 本当に何もない、殺風景な場所だ。でも……ここから眺める景色は意外と僕の心を癒してくれる。


 僕は冷たい鉄柵に触れる。『生きるのがつらくなったらいつでも飛んでください』とでも言わんばかりの小さい鉄柵。

 だけど、鉄柵は鉄柵の役目をちゃんと果たしている。だって、これはいつも一度僕を立ち止まらせるのだから。

 僕に毎回訴えてくる、『本当に飛ぶのか』って。考えさせる。……そして僕は小心者だから飛べない。


 今日は青空と、この景色に勇気をもらったという事にして柵からそっと離れる。


 急がないと朝の会に間に合わないから、そろそろ教室へ向かおう。

 僕はそう思い、教室へ向かって歩き始めた。今日はあまりここにいたくない、何故かそんか気分だったから。


 ――――こうして、僕の日常は今日も始まった。



◇ ◇ ◇



 チャイムの鳴るほんの少し前に教室へ入ると、すぐに荷物を自分のロッカーへ入れ席に着く。


 僕に声をかけようとしていた人たちはチャイムを聞いて、急いで自分の席へ戻った。

 声をかけられても碌なことにならないのは目に見えているので、これでいいのだと思う。


 それからすぐにガラガラと教室の前の扉が音を立てて開かれた。

 そして、少しおっとりとした顔の女性の先生が少し早歩きで入ってくる。


「これから朝の会を始めます」


 前に出ている生徒は先生が先生の席に座ったことを確認するとそう言った。


 そこからは、よくある、普通の朝の会が始まった。と思われたが、今日は少し違った。


「転校生を紹介します」


 先生はそんなことを言った。


 五年の三学期、それも終わりが近づいているこの時期に転校生は珍しいなと思った。正直に言ってあまり興味はなかった。

 クラスメイト達の騒いでいるような、男か女かなんて正直どうでもよくて、僕をいじめる人が増えないでほしいなぁなんて思うだけだった。


 先生に呼ばれ入ってきたのは、大人しそうで、少し儚げな長髪の少女だった。

 少女は黒板に『遠坂 咲』と綺麗な字で書くと、軽く自己紹介をした。


 そして、先生に席に案内され着席する。

 一番奥の窓側の席。まあ、前から空席だった場所だ。そしてそれは僕の後ろの席でもある。


 彼女が僕の隣を通るとき、この後一旦この席を離れないといけないようなので一応挨拶はしておこうと


「よろしく」


 と、小さく言う。聞こえていなくても別にいい。僕としてはいい意味でも、悪い意味でもあまり関わってほしくないのだから。


 後ろからカタっと椅子に座る音が聞こえる。そしてその後、小声で


「はい、こちらこそ」


 と言う声が聞こえる。


 当番は彼女が席に着いたことを確認すると、朝の会を終わらせた。



 僕はササっと自分の席を離れ、自分のロッカーへ向かう。そして、鞄の中から必要な教科書と筆記用具を取り出すと自分の席の方を見る。

 すると、やはりというべきか、人だかりができていた。


 これは自分の席には座れそうもないな。


 僕はそう考えると、手に持っていた教科書をロッカーへ入れると。何というわけでもないが、廊下へ出た。所々から聞こえる話し声では、どうやら転校生の話題で持ちきりのようだ。


 こんな事を考える僕は酷い奴だと思うが、今日だけだとしても興味が僕に向かないのは少し嬉しかった。


 申し訳ないと思ったからなのかは自分でも分からないが、心の中であの少女が学校生活をうまくやれる事を祈った。

更新速度が遅くて申し訳ない限りです……。

再来週からはもう少し上げれると思います。


急がないとと言いながらあるく翔くん……

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