夢うつつ
カーテンの隙間から光が差し込み、鳥のさえずりが聞こえる中、私は目を覚ました。
「ん……あ、さ?」
重いまぶたを上げてみれば、ぼんやりと見慣れた天井が見えた。
起きないと――――って、あれ?
動けない?……いや、抱きつかれてるのかな……?
どうやら私はユイに……今はミサさんの体だけど抱きつかれてしまっているみたいだ。
お腹の辺りを、ぎゅってされてる。
あと、寝息が頭にあたってる。ついでに言えばやわらかいモノも押し付けられてる。
……はぁ。
僕は今すぐにでも抜け出したい気持ちでいっぱいなんだけど……私としてはもう少し寝ていたいな。
抜け出すのも面倒だし、何よりユイを起こしてしまうのは申し訳ないというか。
……それに、お昼くらいまでは寝てても許されるのではなかろうか?
――――ちょっとまって
朝ごはんって作った方がいいのかな?
でも、今までの旅で思ったけど私よりユイの方がご飯作るの上手なんだよね……。
しかも、今までもほとんど任せっきりだったし。
でも、任せっきりって……お姉ちゃんとしてこのままではまずいよね?
んー、でもな……。
なんて、下らないこと(私からしたら大事なこと)に悩んでいると、ふとある事を思い出した。
そういえば、私――いや、僕はどうしてここに居るんだ?
確か、昨日は僕たちのことを監視している何者かがいて、その何者かを僕は追ってあの大きな建物に入った後…………恥ずかしいことにやられたはず、だよね?
え、軽くホラーなんですけど。一体昨日の夜に何が起こったんだ?
しかも、変身が解けてるし。幼女の姿に戻ってるし。
……なんかもう、頭痛い。全部がどうでもよくなってきた。
流石にそれはよくない、か。
よし、朝ごはんでも作って忘れよう。焼いたトーストとか目玉焼きくらいなら流石に作れる。
私はそう思い立ってミサさんの腕から抜け出すことを決意した。
◇ ◇ ◇
朝食を作るという半ば現実逃避をするべくキッチンへやってきたはいいものの、私はそもそも食材がないことに気づいてしまった。
「それはまあ、あるはずがないよね……」
困ったときはやはり《創造》が役に立つんだけど…………今更ながら、魔法で生み出したものを食べるってのもなんか心配。
…………はいはい、買いに行けばいいんでしょ?
ミサさんを起こさないように抜け出すの、意外と神経を使って疲れたっていうのに。また、私が仕事をしなくてはならなくなるとは。
いや、愛しい妹の為と思うと全然頑張れるんだけど。
そういえば魔族の通貨って何なんだろう?まあ、そこらへんはどうにかなる……か?
じゃあ、少し大きめの袋でも持って買い物兼街の散策といきますか。
たしか袋はリビングの端っこのほうに色々あったはず。ちゃんと使えるように想像したっけ……?
そんなことを心配しつつ、私は台所から離れリビングへと向かう。
が、リビングにあるテーブルに何か折りたたまれた紙が置いてあるのに気付いた。
「なんだろう?こんな紙あったっけ?」
そう疑問に思ってテーブルへと近づいてみる。すると、その紙に何か書いてあるのが分かった。
「えっと、なになに…………はたしじょう?………………果たし状!!?」
思わず大きな声が出てしまった。
果たし状って……いつの時代だよ。
しかし、なんでこんなものがここに?ちょっと怖いけど読んでみよう。
恐る恐る紙を開いてみると、そこには「門の前のビルに朝8時に一人でこい」と書いてあった。
しかも、ご丁寧に「果たし状」と書いてあった紙の裏側に「シュナへ」と書いてある。
…………ナニコレコワイ。私何かした?こんなにも人畜無害なのにどうして……。
というか朝8時って、後30分も無いじゃん!?
早くいかないとどうなるか分かったものじゃない。……怖いけどいくしかない。
私はこうして昨日やられたあの場所へまたもや向かうことになってしまったのである。
◇ ◇ ◇
あれから大急ぎで成長した姿に変身した後、走ってやってきた。
朝7時30分ちょっとだというのに街は沢山の魔族たちで賑わっていた。
「着いたはいいけど、どうすればいいの?」
「中へ入ればいいのさ、お嬢さん」
!!?
声をした方を振り返れば、金髪で背がまあ高くて、大学生くらいのような容姿の女性が立っていた。
「えっ?誰?」
「……本当に誰だかわかってない感じで言うのやめてくれない……?」
「ごめんなさい。お姉ちゃん」
……お姉ちゃんが立っていた。
「はいはい。中に入りますよ」
「えっ?なんでここにいるの?」
「それはまた後で分かるさ」
お姉ちゃんはそう言うと私の腕をつかみ、半ば強引にビルの中へと連行した。……ちょっとさっきのことを怒っているのかもしれない。
……流石にふざけ過ぎたと自覚はしているんだけどなぁ。
「ほら、そこにソファーがあるでしょ。あそこに座って。……左側のソファーね」
「は、はい」
私は言われるがまま入って右側の端にある謎の休憩スペース?みたいなところのソファーへ座らされた。
ゼニアスさんは私がそのソファーに座ったことを確認すると。
「よし、座ったね」
といい、いつの間にか手に握られていた赤いボタンを押した。
そして、その直後、私の座っていたソファーから突然「ウイーン」と謎の機械音を発させながら枷が現れて私を捉えた。
「………………え?」
私は両手と両足と体にがっちりとはまった何かの金属の枷を見ながらしばし呆然としていた。
「ねえシュナ?」
「な、なに」
「目の前で拘束されている妹を前にして、姉がその妹にあんなことやこんなことをしたとしても、それが姉妹同士なら別に何の問題もないよね」
「……え?」
まあ、私の目の前に囚われたユイがいたとしたら迷わずあんな事をしようと試みるけど。
「私が今から何をしても許されるよね?」
「えっと……は、い?」
私は、よくわからないままそう言った。
「言質は貰ったぁっ!!」
そして、お姉ちゃんはそう言うと私をくすぐり始めた。
「なっ…………ちょっと!……やめっ、てっ」
あっ……!まずい!これは……死んじゃうっ!!
「っ!!は、ははは!やめっ…………やっ、んんーー!!、はははは!」
もうっ、ちょっと……やめてっ!
くすぐりには弱いのに……!
「まだ私のくすぐりはこんなものじゃ終わらないっ!」
お姉ちゃんがそんなことを言うと、お姉ちゃんの私をくすぐる手の動きがさらに早くなった。
「……っ!ねっ!もう……限界ぃぃ!!」
私がもう限界に近くなってきていた時、もう死ぬかもしれないと思っていた時、救世主が現れた。
「ギルティ!」
と、そういって何者かがお姉ちゃんの両手を掴んだのだ!
「はぁ……はぁ……た、助かったぁ」
本当に死ぬかと思ったよ……。
「ゼニアスさん。そんなところにしておいてあげてください」
「……はいはい、分かりましたよ」
……本当に助かりました救世主さん。
「あれ、そういえばなんでお姉ちゃんの事を知っ……て…………」
え……?
待って……どういうこと……?
そんな、そんなはずは無い……彼女がここに居るなんてことはあり得ないはず!
だけど、見間違う筈がない。少し成長しているから分かりづらいけど、お姉ちゃんの腕を掴んでいるのはどう見たって
「遠坂……咲……」
その人だ。
更新が空いてしまったので今更ながらですけど、総合評価100pありがとうございます!
なんかすごく達成感(語彙力の消失)
それと、今話は一番上の教科書を抜くと50話目になる、のかな?
とにかく、ここまで色々ありがとうです!
 




