出会い
因みにですが、この世界お風呂はあるのですが、火を起こすために一々炎魔法と水魔法をいい塩梅に使う必要があるらしく、この二属性の魔法をどちらも使える人は少なく、さらにうまく使いこなせる者も少ないため週に4〜5回だけだそうです。(´・ω・`)
ファンタジーな世界にも欠点はあるということですね。
ーーピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッーー
「んー……もうちょっと寝かしてー」
ちょっと今日はかなり体が疲れているみたいなんだよー……。
ーーピピッ、ピピッ……ーー
ん? 止まった?え!まさか壊れ……ービビビビビビビビビビビ!!!!!ー
「うるさっ!!」
ガンッ
ふう……。うるさすぎて鼓膜が破れるかと思った……。
この目覚まし時計みたいな物かなり危険かもしれない
「だ、大丈夫ですか!?」
ん?扉の奥から女の人の声が……
そう気づいたものの、僕はしばらく動揺していて動けずにいると
「返事がない……。ちょっと失礼しますね!」
次の瞬間扉が大きな音を立てる。
……え?これ今扉を壊して部屋に入ろうとしてる!?それってやばくない!?
声の主は多分この王宮のメイドさんとかだよね…?じゃあ勝手に部屋のものを使ったと知られれば当然怒られるわけで……。
バキッ
やばい!もう一刻の猶予もない!どこか隠れる場所は……
◇ ◆ ◇
バキッ、ベキッ!!
「大丈夫ですか!?」
あれ?部屋に人がいない!?まさか誘拐されたとか……!?いや…でもこの部屋には窓がないし、きっとまだこの部屋の中に……
スヤア
ん?何かベットの方から聞こえた気が……ん?誰か……寝てる……?
◇ ◆ ◇
「すみませんでした!!!」
「いえいえ、そんなに謝らなくても……」
「本当にごめんなさい!その……ご心配をお掛けしてしまい……」
「本当に怒ってないですから……それに貴方に何もなくて良かったですし」
すみません!ほんと!メイドさんはそう言ってくれてるけれど、それでは僕の気がすまない。
「いえ、それだと僕の気がすまないので……。なんでも言ってください!」
「それは……いや……なんでも聞いてくれるってことですか?」
しまった……!つい言いすぎた……。
「まあ……はい、そうです」
「そうね……なら壊れた扉を直すか弁償してくれない?」
やばい、直せないしお金も持ってない……。それにいくら物置といえ王宮の一室の扉だ、安くはないだろう。
「冗談ですよ、冗談。本当はそうしてもらいたいところですが無理でしょう?」
「はい……すみません」
「ですから…また決まったら会いに行きますね。約束ですよ」
「はい……」
「それと、もし何かあったら必ず私たちにお申し付けください。私は……皆様の側にいることが多いので」
「はい。分かりました」
完全に押し負けて『はい』くらいしか言えなかった……。
「ああ、それと、ご夕食は食堂かこの部屋どちらで御召し上がりますか?」
あっ、そうか本来はこの質問を全員にするためにここへ来たのか。
……やっぱり夕食は部屋で食べておいた方がいいだろうか?まあ食堂で食べるメリットもないだろうけど。
というかデメリットしかないと思う。
「じゃあここで食べることにします」
「了解しました。すぐにお持ちします」
「ありがとうございます」
「では失礼致します。……それと扉の件はこちらでどうにかいたしますのでご心配なく」
そう言いメイドさんは部屋から出て行った。……なんかすごい気を遣わせてしまったような……というか、実際そうか。……本当にすみません!!
◇ ◇ ◇
「おおっ!」
運ばれてきた夕食は、なんと、和食でした!美味しそう……しかも高級な料亭で出てくるものよりちょっと豪華なくらいの。
この西洋風の異世界に和食なんてものがあったとは、でも今はとりあえず……食べよう。
「いただきます!」
◇ ◇ ◇
「どうですか?お気に召しましたか?……まあそのご様子ですと……」
「はい、とても美味しかったです。それと….恥ずかしいところをお見せしました」
「まさか、あんなに勢いよく食べる人がい……「勘弁してください!!」」
本当にすごい恥ずかしかった。まあ、毎日カップラーメンや冷凍食品を料理だと言い張って、それしか食べてこなかったのに、あんな美味しい料理を食べてしまえば――こんな反応は当たり前だと思う。
……やっぱり両親がいると美味しいものを色々と食べれたのだろうか?
「いえ、私も自分の作ったもので貴方に喜んでもらってとても嬉しかったですから」
え、もしかしてこれ、このメイドさんが作ったの!?やば、一家に一台は欲しい。
「ほんと今日は何から何までありがとうございました!」
「いえいえ、では食器をお下げしますね。それと……これからのご予定は何かありますか?」
「これからですか?」
「はい、今夜ですね」
予定を聞かれて、ふと頭の中で思い浮かべてみるも、悲しいことに何も思い浮かばなかった。
「んー……何もないですね」
嘘をつくのも意味がないし、僕はありのままに伝えることにした。
するとメイドさんが……
「え!?まだ寝るのには早いと思いますが?例えばクラスメイト?の皆さんと何か話したり……」
ぐっ……
思わぬところで精神にダメージを入れられて、心の中で少し悶える。
それは僕のような生き物には禁忌ですよ、メイドさん……。
「本当にないです。あの、僕はそんなにクラスに馴染めていなかったので……」
自分で言ってて悲しくなるのだけど……ヤバイ、泣きそう。
「そうですか………。すみません色々聞いてしまって。
マナー違反ですよね。ごめんなさい。……失礼します」
「はい」
そう言ってメイドさんは部屋から出て行ってしまった。
んーー。しかし、あの謝る感じ……そしてあの表情……。
なんというか、僕は気づいてしまったかもしれない……。
――彼女は僕と同じようなところがあるということに。
読んでくださりありがとうございました!また頑張って投稿します( ̄^ ̄)ゞ