容疑者ゼニアスは異議を唱えたい
ワクチンのあれこれで遅くなりました。
身体がアァァァァッ!
「一から説明させてくれないかな?」
「まぁ、私にはゼニアスさんを止める事なんてできないので、質問するまでもなく貴方に従うしかないんですけどね」
砂煙の舞う部屋で、二人は話していた。
一方は申し訳なさそうに頭を抱えながら、一方は自虐的な態度で……二人は話していた。
「で、拒否するなら私はささっとこの子を連れ帰るつもりだけど……聞く?」
「聞きますよ。その少女を取られるのは本当に嫌ですが、貴方がそうするのならそれが定めなのでしょうから」
遠坂はゼニアスの後ろに居る少女を見つめた。
その視線には、憤怒や憎悪の感情が乗せられているように見えた。
「……相変わらず硬いね。まぁ、そういう君だから私は君を勇者に選んだんだけど」
「まぁ、私は今貴方に裏切られているとしか思えない状況に立たされているわけですけど」
「だから、今からそれを説明するの」
険悪な雰囲気の漂う中、ゼニアスは口を開いた。
「……どれから聞きたい?この子のことか、翔くんのことか、私が今こうしてここにいる理由。まぁ、最終的には全部まとまって一つの話になるわけだけど」
「彼の話でお願いします!」
ゼニアスの質問に遠坂は食いつくようにそう答えた。
それだけ聞きたい理由があったということなのかもしれないが……ゼニアスが「はは……」と何とも言えない気持ちでそれを聞いていたのは確かだった。
「まず、彼はこの世界にやってくることになったキッカケは十二年前の勇者召喚。
その勇者召喚の事件は君にもこの世界に来てもらうときにちゃんと話しておいたはず。もちろんこの前話した通りそれに私は関係してない。」
「あの事件に彼が巻き込まれていた、ということですか?」
「まぁ、そういうこと」
ゼニアスは頷き、遠坂の質問を肯定する。
「それで十二年前の姿の彼が何故今日、君の前に現れたのか分かる?」
「ゼニアスさん、私はこの世界に来てから色々調べてきました。
この世界の隠された歴史まで、この三年間で色々調べ上げてきました。
そしたら、十二年前のその勇者召喚に彼が召喚されていることが分かり。
その数ヶ月後には彼の存在が王国から消されている事が分かった。
そして、同時進行で進めていた魔族領内の記録の調査では、周辺調査に出ていた魔族が何故か帰ってこず……その数日後に魔王vs勇者などというB級映画の様な馬鹿げた決闘が行われたことが明らかになった」
遠坂は自分の今まで調べてきた事をゼニアスに話した。
その情報はほとんど、いや全て事実と同じ正確な情報だった。
だからこそ、ゼニアスは驚いた。
「すごいね……。三年間でよくそこまで調べられたものだよ」
「まぁ、私だってこの三年間で何もしてこなかった訳ではないので。
それで……私はその戦いで彼は敗れ、死んでしまったのかと思っていたのですが。
私は今属しているこの組織……革命軍と出会って考えが変わりました」
「変わったって、どういうこと?」
「革命軍の団長はゼニアスさんの話してくれた、魔族の王の方の魔王と関わりがあったようで、その決闘の場にいた様なんですが。
……乱入者が居たらしいです」
「え……そんなのシオンから聞いてないんだけど!?」
今シオンに確認を取りたくても、今シオンは休んでいるのでゼニアスは彼に確認が取れない。
…………十二年間ぶっ通しで起きてシュナを守り続けたのだから仕方のないことだとゼニアスはわかっているので、わざわざ起こす様なことはしたくないのだ。
「私はその乱入者が何らかの方法で彼と……その魔王であるシオンさんを殺したのではと思っています」
「なるほど……」
乱入者が居たとして……果たしてその乱入者がシオンを倒すことはできるのだろうか。
私は少なくともそんな事が起こらない様にかなりのハイスペックなステータスにしてあげた気がするのだけど。
まぁ、仮に侵入者が居たとしても……
「残念だけど、それは間違ってる」
「……じゃあ、そこに居る少女は何なんですか?彼女が彼の姿を纏っているのを私は見ましたよ。
それは、紐解いていけばその少女が十二年前、彼とシオンさんを殺した何物かに操られていたという、矛盾のない予想につながる。
そして、そこの少女を庇っているゼニアスさんは……」
確かに、それは矛盾のない予想につながる。
それは先程の少女の頭の中を覗かせてもらった時に分かった。
だけど……
「一部はっきりとしていないソースがある以上、それはたとえ矛盾が無くても予想止まり。……それは君が一番分かっているんでしょ?」
「っ……」
遠坂は言い返す言葉が見つからなかった。
予想止まり……その言葉は何も間違っていなかった。
「……そろそろ答え合わせといきましょうか。君の言う乱入者について私はよく知らない。
実は私もあの戦いに少し介入してしまったのだけど、その乱入者は私が介入してしまった時点では姿を見せていなかったと思う。
だから、そこら辺についての明言は避けさせてくれない?」
「……分かりました。答えが聞けるならそれ以上はいりません」
遠坂は少し残念そうではあったが、ゼニアスさんの言葉に一応納得した様だった。
「ではでは、本当に申し訳ない事から話すとしましょう。
…………翔くんは、シオンの手違いというかミスにより死んでしまいました」
…………。
「…………え?」
ワクチンの副作用も収まってきた事ですし、明日から本気出します。(´-`).。oO




