思わぬ再会
ユ、ユイ!?
な、何故ここに!?
……ちょっと小声でシオンに助け舟を出してもらえるように頼むか。
「シオン……これ、どうすれば良い?」
『……自害しろ』
……え?
『待って、ごめん。混乱してる。取り敢えず壁を登って逃げろ。……ユイの体格なら登ってこれないはずだ』
「なるほど……。シオン、天才」
……あれ、でもその後はどうすればいいんだ?
「えっと、逃げた後ってどうすればいいの?」
『知るか』
「えぇ……!?」
……はぁ、みんなに知られずこっそり逃げ出すという作戦は失敗かぁ。
諦めるしか無いのか……。
「あ、あの」
ごめん、お姉ちゃんは行かないといけないんだよ。だから….…ここで大人しくしてお家に帰やがれ。
……待って、今の嘘。
……どうしよう。シオンと同じようにすっごい焦ってる。
「か、翔さん……ですよね?」
「え?」
え?どういうこと?……なんで、僕の名前を知ってるの?
……聞き間違い、だよね?
「翔さん……じゃないんですか?」
「え……っと。そうですけど……。え?なんで知ってるの?」
最近妹が怖いんです。家にいたと思ったらここにいるし、見ず知らずのはずの僕の名前を知ってるし。
「ごめんなさい、私の名前をまだ言ってなかったですよね。……私の名前はミサーナって、いいます」
………………うそ、だろ?
ミサさん、なのか?
唐突すぎて、あまりにも信じられないような話だが、目の前の少女が涙を流しているのを見てそれが嘘ではない事を嫌なくらいに分らされた。
「確かに前世では死んでしまったけど、また生き返って。……それで」
「ミサさん……!……会いたかった」
もう、僕は自分の気持ちを抑えられなくなっていた。
側から見ればやばい光景かもしれないけど、僕は自分でも分からないうちにミサさんに抱きついていた。
「……こちらこそ、会いたかったです」
……もうしばらく感動の再開を味わっていたいところだけど、いくつか質問がある事を忘れていた。
「ミサさんはどうしてここに?」
「……昨日、大事な用事が終わったので翔さんを探しに行くなら今がいいかな、と。……まぁこうして会えたわけですし……少し驚いてます」
……大事な用事って、シュナの誕生日の事だよね?
あれ、でもさっきから何故かシュナの事を覚えていないような感じだけど。
思い切って聞いてみるか……。
「あの……シュナって知ってます?」
「シュナ……?人の名前?…………聞いたことのあるような、無いような感じの名前ですね。翔さんの探し人ですか?」
「……えっと。やっぱり覚えて無いよね……」
「?」
どうやらシュナの記憶だけ抜け落ちている?ようだ。
『あー、今起きている状況を説明してやろう。
お前、さっき『私のことは忘れて……』云々な事を願ったろ?端的に言えば……神様の強い願いは何かの形で叶う事があるんだよ。
つまり、今回は家族の記憶が消えるという形でそれが叶ったという事だ」
なるほど……。
アレが良くなかったのかな……?
直す方法とかってあるのかな……。
『どうせお前の事だ、直せたりするのかと悩んでいる事だろう。
……《記憶の鱗片》と唱えながら記憶のかけらが元通りにはまっていく感じで唱えれば、治るはずだ』
シオン、ナイス!!
そうと分かれば、早速。
「《記憶の鱗片》」
ミサさんは突然僕が魔法を唱えたので少し驚いていたが、突然ハッとした表情をして
「お、もいだした」
というと、
しばらく黙っていた。
「お姉ちゃん……だったんだ」
「うん」
……記憶は元にもどったみたいだね。良かった。
「……なんだ、初めから近くにいたんですね」
「……まぁ、記憶を取り戻したのはついさっきなんだけどね」
「そうだったんですか……でも、よかったです。本当に」
……僕もまさかユイがミサさんだとは思ってもみなかった。わからないものなんだね。
「……さぁ、これからどうする?」
『……まずは魔国に行くのが先決だろ?』
そういえばそんな話もしていたっけ。
「よし……魔国にいきましょうか!」
「え?……どうして魔国なんかに?」
あぁ、そういえば話すのをわすれていた。
「そこら辺の話はこの壁を越えてから、という事で」
「そうですね」
……あ、でもミサさんの体格じゃきついかもしれないな。
僕の身長の1.5倍はありそうな高さだしな。
……そうだ!
「背中、乗ります?」
我ながらいい手では?
……あれ、でもミサさんは首を傾げておりますが。
「私、これくらいの壁なら飛び越えられますよ?」
「……マジですか。流石です」
「……でも、ここはお言葉に甘えておこうかな」
「本当?やったね!」
ミサさんのおかげで僕のメンツは守られたという事で。
というか僕もジャンプしたら越えられるのかな?
ま、そこら辺は後々試してみるか。
取り敢えず僕はミサさんが乗りやすい様にしゃがんでみた。
「じゃあ、どうぞ」
「どうも」
背中に乗せたミサさんは、やっぱり軽かった。
「それじゃあいきますか」
壁を登ることにあまり慣れていないので手つきはおぼつかないものだったが、揺れたりする事も無く、安全に壁の上までたどり着くことができた。
「ミサさん、大丈夫ですか?」
「全然大丈夫です。思っていた以上に快適です」
「ありがとう、ございます」
……まだ、下りがあるんだよね。
最後まで気を抜かないように行こう。
よいしょ、よいしょ。
「とうちゃーく!」
「ありがとうございます、翔さん」
取り敢えずまた屈んでミサさんが降りやすいようにしないと。
「どうも」
さっと、背中に乗っていたミサさんの感覚が無くなる。
それを確認した僕は立ち上がった。
……んー。そろそろ体を元に戻すか。
シュナが嫌がっているみたいだし。
一人称が僕の方がしっくりくる、と気づいた時から分かっていたけど。……どうやら僕は身体によってシュナと翔の成分の割合が変わるみたいだ。
要するに、人格は身体依存ということ。
戻す時は、纏っているものを脱ぐようなイメージかな?
今の僕の姿は制服なんだけど、元々着ていた服が変化した感じなのかな?
服の上から翔の姿と制服を纏っている感じか。
……じゃあ、それを一気に捨て去るイメージで。
その時、僕の体は問題なく私の体へと戻った。
それと同時に不快感も無くなった。
「おお、翔さん凄いですね。やっぱりさっきの姿は一時的なものなんですね」
「まぁ、そういう事になるかな?」
「……それで翔さんは、私と同じように死んでしまったのですか?」
……うーん。
「恥ずかしながら。……死んじゃいましたね」
「そうですか……ごめんなさい。守ってあげられなくて」
「いえ、別に全然大丈夫ですよ。……それに、僕の方だって守ってあげられなかったんですから」
まぁ、こんなところで反省し合っていても何かが進むわけでもないし、歩きながら話すか。
……あれ、そういえばどっちが魔国なんだろう?
小声でまた聞いてみよう。
「シオン……魔国って、どっち方向?」
『魔国はここからだと左だな。ゼニアスがお前の生まれる位置を配慮してくれたから、歩いて2日くらいで着く距離だ』
了解。
「よし、話さなきゃ行けないことはまだ沢山あるけど……できれば話しながら喋りたいな。……というか、ミサさんはついてくる?」
「決まってるじゃないですか?……翔さんの許す限りどこまでもお供しますよ」
……ありがとう。
「じゃあ、魔国に向かって出発進行ー!」
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コメントを返すのが苦手なので返せるかどうかは分かりませんが、絶対全部見ますので!
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