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夜明け前のアリア

「……色々あったけど、どうやらもう行かなくちゃいけないみたいだね」

『ああ、もう一時になる』


 心の準備はまだできてないけど、こんなところで躓いていたら世界を助けることなんてできないよね。


「よし、行こう」

『おう』


 私はベッドから降りて深呼吸をひとつすると部屋のドアを開けた。


「シオン、ちょっと覗いてきても……いい?」

『ん?……ああ』


 シオンから許可をもらったのでみんなの寝ている部屋のドアを少し開けて様子を見る。


 ぐっすり眠っていて私に気づく様子はない。


 でも、それで良かった。



 ……みんな、今までありがとう。




 これ以上見ていたら、色々とダメになっちゃうと思いドアをそっと閉じる。


『もういいのか?』

「うん。……もう大丈夫」



 ……もう行こう。


 音を立てないようにゆっくりと階段を降りる。



 玄関の前に着いて、これでもう会えないのか……とまた思ってしまったが、そんな思いを振り払った。



 ……せめて、せめてみんなが私に殺されちゃうまでは私のことなんか忘れて、今まで通り暮らして欲しい。


 そう強く思う事で、少し気が楽になった気もしたが、自分が家族を殺さなければならないという事に無理やりにでも目を向けさせられてしまい、


 心が悲鳴を上げているのを感じた。



◇ ◇ ◇



「これからどうすればいいの?」

『まずはこの町を出る事が先決だな。取り敢えず町の周りを囲っている壁を越えるぞ』


 壁を越える?……門は使っちゃダメなのかな?


 ……見つかったら不味いからか。



 取り敢えず、家から一番近い壁の所まで行こう。


「壁はどうやって越えるんですか?」

『空を飛んだり、はダメだな』


 え?どうして?


「なんでですか?」

『目立つ。……空を飛ぶ時はなんか知らんがお前たち神様には純白の翼が生えるんだ』

「……どうしてそんな仕様が。……じゃあどうやって越えるんですか?」


 この体じゃ壁なんて登れなさそうだし、壊したりするのもアレだ。


『その体で登れないなら体を変えればいい。違うか?』


 体を変える……。魔法の出番かな?


「どんな体に変えるんですか?出来るだけ目立たないものがいいですよね?」

『……あれくらいの壁の高さなら翔の姿でいけるんじゃないか?……それに元の姿なら動かしやすいだろ?』


 確かに……。


「あっ、そうこうしてるうちにそろそろ着きますよ?」

『そうだな。……えーと、変身の仕方とかって分かるか?』


 変身の仕方は……


「全然わからないです!!」

『なんで自信を持ってそんな事を言うんだよ……。返信の仕方は簡単、《変身(レオン)》って唱えながら元の体を想像してみろ』

「……なるほど。分かりました」


 さっきから思っていたけど、魔法の名前を唱えて頭の中で魔法を思い浮かべるだけで発動できるって、なかなかのハイスペックな体だなー。



 よし、そろそろ唱えてみるか。


「《変身(レオン)》」


 自分の元の姿を思い出しながら、そう唱えてみる。


 すると、体の形や骨や内臓などがごちゃごちゃと体の中で動いていっているのが感じられた。


 多分成功しているんだと思うけど、物凄く気持ち悪い。



 数十秒たってそのごちゃごちゃが完全に止まった時、私の体が僕の体へと戻っているのが分かった。



 ……懐かしい感じはするけど、どうやらこの体、シュナにとってはそこまでいいものじゃなさそうだ。


 拒絶って程じゃないけど嫌がっているのがわかる。



 ……さっさと壁を登っちゃいますか。




 と、その時……後ろから


「えっ……。あ……ああっ」


 という誰かの声が聞こえた。



 まさか、変身するところを誰かに見られた……!?


 そう思い、焦って後ろを振り向くと……


「ユイ……?」


 さっきまで家にいたはずのユイ……妹がいた。



 これは……もしかしなくてもまずい、かも?

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