開幕前の憂鬱①
今話は翔くんが神界に来る前のお話(?)です。
二話で分かれてます。
時系列は想像してみて下さい。
ところで、名前に①とか数字を入れると途端にダサくなるのはどうしてなのでしょうか?
「はぁ……」
私はあることを感じ取ってしまって、思わずため息をもらしてしまう。
「どうしたんですか?スレイナ様」
「いや、ちょっとね。早すぎるんだよ」
そう、早すぎる。
神界のほうが時間の流れが遅いからと言っても、流石に早すぎる。
「あの子……ソプラが帰ってきた」
こっちの時間で大体三年位ってことは、あの子何歳で死んだんだ?
……まさか13歳?
「本当に嫌になるわ。こんなに早いのなら、いっそ記憶をそのままに転生させてあげたほうが良かったかもね」
まぁ、これでこの神界の揺らぎも収まってくれるといいんだけど。
本当に変な話だよね?あの子は皆から消えてしまえばいいと、誰も貴方のことなんていらないんだと、そう言われ続けて、それで消えたっていうのに。
あの子が消えたせいで神界は大騒ぎ。さらには誰もあの子の代わりを務めることができずに何処かの世界で不具合が発生したらしいし。
「まあ、先ずは一番はじめに伝えないといけない子の所へ行きますか」
喜ぶのか、悲しむのか……一体どちらなのでしょうね?
◇ ◇ ◇
「そう……ソプラが戻ってきたのね」
「ええ、あの子って本当に不幸に好かれているわよね?」
あの子の不運さは、本当におかしなくらい。あの子が運が良かった事なんてあったかしら?
そう、無い。最高神になれたのは運では無く、実力。
「いいえ、ソプラは不幸になんか好かれていません……。もっと、もっと私が早く気づいてあげられていたら!」
はぁ……。この子もこの子ね。
「気づいてあげられたら……どうなったの?」
「それは……。それは!」
「ストップ。……もし貴方が気づいていたとしても何も変わらなかったわ」
仮に気づいたとしても、結局は私の所へやってくる事になったでしょうね。
「貴方にはどうする事もできなかった。違う?……あの子は私に全部話してくれたわよ?」
「え……。それって……」
やっぱりこの子は何も分かっていない。
「貴方の考えている事とは全く違うと思うわよ?貴方、あの子の気持ちを考えた事ある?」
「ソプラの気持ちですか?」
この子は責任感みたいなものが強すぎて、少し盲目になっている節があるわね。
「あの子は貴方に心配してほしくなかった。それだけよ」
「……」
「ほら、ここで止まってても何にもならないでしょ。貴方が今しなければならない事は、不幸の分だけ、いやそれ以上の幸せをあの子にあげる事。違う?」
……うん。どうやら覚悟は決まったみたいだね。
それでこそ最高神様だよ。
「じゃあいってらっしゃい。あの子は談話室にいるわよ。……まぁ、転生後の人間の魂と記憶だけど」
「どうすれば、いいんですか?」
「貴方の名前をあの子の前で言うだけ。……それを鍵として記憶にロックをかけた」
多分、記憶が戻れば姿もそれに引っ張られて元に戻るでしょうね。
「まぁ、健闘を祈るわ。お姉さん?」
「はい。ありがとうございます」
その返事を聞くと私は元の仕事場所へ戻った。
そこである事を思い出し、そして少し笑ってしまった。
「結局あの子、最後は笑いながら泣いていたわね」
誰に言うわけでも無いが、私は呟かずにはいられなかった。




