不遇(2)
前回変なところで区切ってしまったので今回も少なめです。(言い訳)
「みんな席に着いたかー」
ついに始まった……自己紹介だ。
それにしても意外とみんな素直に席に着いているなあ。てっきり席なんかに着かないで担任を困らせたりすると思ったのに。
まあいじめがないのは良いことだ。あいつらに限って今さっき改心したってのはないと思うけど。というかこの短時間で絶対にそれは無い。
今まであんな酷いことをして来たアイツらがたった十分で改心するようならそれはもうホラーだ。
……まあ、まずは教師の話をしっかり聞こう。
「今日は自己紹介をする。まずは俺、その後は名簿順に自己紹介をしていってくれ。ああ、司会は十和田 優子だったか?頼んだぞ」
やっぱり司会は彼女か。確か一年の時、二組の学級長でいじめに対しては中立の存在だったはずだ。
「はい。ではこれから自己紹介を始めます。まずは先生お願いします」
「ああ」
◇ ◇ ◇
そこから先は僕の順番が飛ばされたこと以外はあまり変わったことはなかった。
多分彼女はいじめっ子たちから圧力をかけられているのだろう。いじめっ子達よ本当にご苦労な事だよ。
まあ僕には趣味とか無いし別に飛ばされた方が嬉しかったっていうのが事実なんだけどね。
自己紹介では担任の教師のことがよく分かった。なんとこの教師はかなりの数の言語を話すことができる。
英語、中国語をはじめ、フランス語やドイツ語、更には全く聞いたことのない言語まで……。
確かその中に王国共通語というものがあった筈だ。
あの時は皆『何その言語?』なんて思っていたけど、今では僕以外のクラスメイト達にとって馴染み深い言語になった。
確か王国とその周辺の村や街は大体この言語を使っているはずだ。まあ転移させられてすぐにハブられたから噂程度の知識しかないけど。
閑話休題
分かったことをまとめると、担任の教師の名前は蔵住 玲登って名前で、(外国人の名前っぽいってのが名前に対する第一印象)なんで教師をしてるのか分からない位にいろいろな言語を話せること。
あとは嫌味だけどクラスメイトの趣味がいじめじゃないということかな。
もういっそ『僕の趣味はいじめです』と言ってくれれば心が少し楽になるかもしれないなあ……。
いや本当に。
と、まあこんな事が分かった有意義な自己紹介タイムも終わり、蔵住先生はこんな事を言ったんだよね。
「まあなんだ、そんなお前たちに願いがあるんだ。……俺の母国を救ってはくれないか?」
って。皆、口を開けてポカンとしてたよ。僕も人のこと言えないけど……。
まあしばらくして皆の聞きたいことを誰かが言ってくれたんだよね。
「どういうことですか?」
単純な質問だけど皆が聞きたかったことなので、さっきまでうるさかった教室が嘘の様に静かになった。
全員が耳を傾ける中先生は
「そうだな。いきなり言われても分からないよな」
そう言い話を続けた。
◇ ◇ ◇
あの後先生は色々と話してくれた。異世界のことや、母国の危機、魔国のこととか色々。
そんなことを突然言われた生徒たちは当然固まっていたが。
でも、先生の話がリアルすぎて……というより、皆がそんなファンタジーな世界があってほしいと思ったのか途中から皆信じてた。僕を含めてね。
皆は異世界に行ってみたいとかなり乗り気な様子だったが、僕は異世界に転移するということにあまり乗り気では無かった。
普通の人なら『異世界転移』という物に憧れるかもしれない。だけど僕はいじめを受けている。
もし僕以外のみんなが居なくなったら楽しい学園生活を送れるかもしれないし、家族とお墓の前でゆっくり話をする機会だってもっと増えるはずだから。
だから僕は初めて皆に反抗した。
「僕は行きたくない!行くなら皆だけでいってきてくれ!」
と。
しかし、僕の意見に賛同する者は無く、むしろ
「出しゃばってんじゃねーよ。黙れこのゴミが!」
と言われる始末。傍観者達は少し嫌そうな目で僕を見て、先生も何かを口にしようとはしなかった。
ああ、お前もそっち側の人間なのか……。
やっぱり僕には味方なんていない様だ……。