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嘘と真実

「それで勇者って何なんですか?」


 また話がずれた気がしたので戻しにいく。


「えっと、その前に魔王について話をしていい?」

「え?はい」


 たしか僕の魔王に対する考えは間違っているらしかった。うん、その話も詳しく知りたい。


「先ず、魔王ってのは二人いるの。魔国を総ている王の魔王と、魔族の王である魔王。そして、シオンは後者」


 え?魔王って二人いたんだ。全く知らなかった。それで、魔王さんは魔族の王の方の魔王ということか。


 頭がこんがらがりそう。


「前者の方は人間でいうところの国王だから、特に特別な事は無いわ。でも、シオンは違う。なんと言ったって彼は私が()()()()()()に作った存在だからね!」

「はい?」


 なに?世界を守るため?作った?


 魔王って悪い存在ではなかったの?


「その顔は分かって無さそうね。魔王っていうのは世界を守る存在……そう、貴方達の考えは前提から間違っていたの」

「そ、そうなんですか!?……というかそんな凄い存在を作れるゼニアスさんも凄いですね……」


 最高神って言っていたけれど、最高って付くくらいだから本当に凄い存在なのだろうと再実感した……。


 ちょっと性格とかのせいで凄い見えないのがアレだけど……。


「そうでしょ!私ってばやっぱり凄いんだよね!……コホン、えーっと、魔王という世界を守る為の存在がどうして人族には悪い存在だと思われているのかについてだけど、聞く?」


 え?そこにきて『聞く?』って何?


「聞きますけど。どうしてそんな事を僕に聞くんですか?」

「ん?ここからはかなり人族の闇の部分の話をするし、長くなるから。ほら、どうしても私たちって人族を恨んでいる側の存在だから、人族に対する偏見を植え付けてしまいそうで怖いし」


 あぁ、確かにそうかもしれない。


 まぁ、僕はそれでも聞く気でいるけど。


「まぁ、大丈夫じゃないか?というか、俺たちからすれば植え付けた方がいいんだが、無理にそうしないお前って本当に優しいよな」


 魔王さん……?あれ、なんか魔王さんが今怖かったのだが。


「まぁね。それでどうするの?」

「あ、聞きますよ。それと、僕にその話をして何がしたいのかは大体分かりました。なんというか、それでも別にいいかなぁと」


 うん、別に今と何かが変わるわけでも無いと思うし。元々そうなる予定だったし。


「あれ、何か勘違いしてない?本当に翔くんはネガティブ思考だから困ったものね」

「はい?」

「結果から言うとこれから貴方は生き返る、それを踏まえて話を聞いて頂戴」


 え?てっきり僕は輪廻転生できないように魂ごと消してやる!とかそういう感じかと。


 まぁ取り敢えず、話を聞いてから色々考えるか。


 でもやっぱり長話になるのかな、長話耐性0なんだけど大丈夫かな?


 校長先生のお話、みたいなやつ苦手だったし。



 まぁ、大丈夫だとは思うけどね。



 ◇ ◇ ◇



 うぅ、本当に長話だった。寝ちゃうかもなんて心配していた自分が馬鹿みたいだ。……校長先生とは違ってずっと呪文みたいな喋り方をするのではなくて、しかもこの話、凄いくらい重要な事を言ってるから……端的に言うと、眠る暇が無かった!



 ……そんな事を言っても何にもならないし、忘れない様に今聞いたことをまとめよう。


 たしか、簡単にまとめるとあの世界で魔王さんは魔族の王だった訳だけど、魔国の王も魔族だからそれよりも格上の存在だった。つまり、実質魔王さんが国を動かしていたそう。


 そして国を動かしていた中で今から約400年前、魔王教というものと信者が何故かできてしまって信仰されていたそう。本人の許可なく勝手に。


 しかも、魔族だけならまだいいが周辺国家のエルフ、ドワーフ、さらには人族までもが信仰しだしたらしい。


 ……魔王さん凄すぎ。信者が沢山いるとか実質神では?最高神が作った存在だし、そうなるのも当然かもしれないけど。


 まぁ、当の本人は迷惑だと思っていたようだけど。


 そしてこうも思った。偶像崇拝をする者が大勢出てきたということは何か理由がある筈と。



 当時魔族と人族は平和に仲良く暮らしていた。お互いがお互いを助け、支え合い生きていたのだ。ある所では種族の壁を越えて結婚する者もいたという。


 だがある時、その関係が大きく変わった。


 ある人族の国の王が自分の犯した犯罪をある魔族に擦りつけた事が事の発端。その魔族はどんな拷問や詰問を人族にされても人族に対し暴力は振るわなかったという。だが、その魔族には死刑判決が下り、殺されてしまった。


 この話はある所から噂話として出回り、世界各国へに広がっていった。……いや違う、()()()()()世界各国へ広がっていった。


 この話を聞いたある国の国王はこう思った。


『魔族はなんて扱いやすい奴なんだ』と。


 僕は思った、何故ここまで人は悪になれるのか、と。本当にどの世界でも身勝手な争いは絶えないんだな、と。


 それは人に対する失望だったと思う。おかしいとは思う、自分も人族だっていうのに。……もしかしたら僕はこんな事をする奴らと同じ種族だと思いたくはなかったのかもしれない。


 と、まぁこの話は置いておいて、魔族はいいように扱える種族だなんて考える国が人族の中で次第に増えていき、最終的には人族の国、全てがそう考えるようになった。


 魔族と人族との仲は悪くなり、人族と魔族が愛し合うことも無くなった。



 ……そんな悲しい事態に陥っているにも関わらず魔王さんがこの事を知ったのは、魔族と人族が争い始めた頃だったそう。


 それは人族が阻んでいたからという事もあったが、やはり魔族が根っからの善人だった事も大きく関係している。……彼らは人族に全く危害を与える気がなかったどころか、彼らを改心させ許そうとしていた。また、魔王さんに余計な心配をさせまいと黙っていたことも関係している。


 このように、魔王さんがこの事態を知った時には既に人族と魔族の間には大きな亀裂があり、立て直しは困難だと悟った。



 しかし、魔王さんはまだ諦めない。ゼニアスさんにこの事を相談し、あるものを作ることによって人族との仲を戻そうとした。



 そのあるものというのが、勇者という存在である。

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