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生まれ変わるなら主人公体質になりたい

 魔族領の中で経済にしろ流通にしろ中心にあるのは首都である、ここフィーデランテである


 そして今、ここで魔族の歴史に残るであろうある闘いが起きようとしていたーー


 と、かっこよく言ってみたものの実際のところそこまで大きな事ではなかった。歴史の一ページには流石にならない


 でも闘技場が熱気に包まれている事から一大イベントである事は分かった。やっぱり勇者vs魔王ってのは興味を引くのかな?サメ対ワニみたいに


 魔族の方には申し訳ないけど、そんなB級映画みたいな闘技より僕は討議をしたい。話し合いで解決しましょうよ


 無理ですか、そうですか


 ……あー、お手柔らかにお願いします。本当に



 今、僕と魔王は大体十メートルほどの間隔を開けて立っている。そしてその真ん中から僕から見て少し右に審判の魔族が一人


 まだ試合開始の合図はされていないので相手を観察する。情報は多いに越したことはない。


 僕が見て分かることはこの前とは違い魔王さんの身体からオーラを感じるということ。というか赤黒い湯気みたいなのが見える。これってやっぱり幻覚じゃないよね?魔法って凄いな……


 他には、魔王さんが武器を持っていないこと、素手という可能性はあるが、こんな世界だし魔法という手もある。……ということは出来るだけ近くまで近づき、倒しにいくのが正解か?


 あとは……分からん。鑑定とかいうスキルがあれば話は早いんだけど、生憎僕はそんなものをほいほい手に入れられるような主人公体質じゃない



 と、その時。審判が右手を上げた


 始まっちゃうか……。よし、ちゃんと頑張ろう!こんなところで死ぬ気は無いからね!


「試合の説明をします。武器は何を使っても構いません。また、魔法の使用も認められています。尚、浮遊魔法、道具、翼などを使う等の飛行は禁止します。試合は何方かの生体反応が途絶えるまで続きます。


 それでは、両方構えてください」


 さっき決めた作戦で行ってみよう。取り敢えずは直ぐに踏み込めるように準備をしておく


 魔王さんは、さっきのまま動いていない様子


「これより、試合を開始します!」


 審判の手が挙げられると同時に僕は走り出した。そして、その直後元々いた場所が爆発した


 恐ろしいことをするもんだ、でもその爆風のお陰で魔王の所へ行く速度が増した。そのまま一気に



 ……いや、違う



「《真珠極槍(スピカ)》」


 魔王さんの前に赤い魔法陣が現れたと思った次の瞬間、もの凄い勢いで僕目掛けて青白い光の槍が飛んできた



 その槍は危険を感知し直前に右に方向転換していた僕には当たることはなかったが、少し近くを飛んでいっただけでさっき貰った軽い鉄装備は左側の端のところが少し溶けてしまっていた


 さらにそれだけでなく、鉄装備の溶けている部分、その下の肌は焼けてしまっているみたいだ。……痛覚に耐性があるから大丈夫だけど、それでも少し痛い



 なんて威力だよ……


 槍の飛んで行った方向から吹き付ける爆風の強さでわかる。これは即死級の攻撃だ



 魔王さん、使う魔法もやばいけど作戦もしっかりしている。あえて初めに武器を見せずに、戦いが始まった瞬間にもともと立っていた場所をなんらかの方法で爆破……おそらく、そのまま立っているか、後ろに下がっていたら死んでいたのではないだろうか


 そして、僕が前に突っ込んできた瞬間、とてつもない攻撃を放つ


 爆風で押し出され、動きが鈍くなったところに当たるようになっているところがまた恐ろしい



 ……そしてそんな策士な魔王さんの攻撃がこれだけの筈もなく、当然のように追撃を放ってくる……はず



 ほら、やっぱり。


 僕が地面に着地した瞬間棘のついた岩の壁が地面から現れ、僕を囲んだ。そして、アイアンメイデンの要領で僕を殺しにかかってくる


 一応【滅魔の覇気(デモラルオーラ)】を使わなくともこの壁は飛び越えられる。ただその後無抵抗なところに攻撃を喰らうのが一番怖い


 ならば、壁を壊すしか無い。ただ岩を地下から地上に押し出してきた訳では無いと思う。きっと何か魔法的な手段を使って壁を作っているのだろう


 力だけじゃ無理があるか。よし、今こそ使う時か


「【滅魔の覇気(デモラルオーラ)】!!そして、《切断(ザイン)》!」


 ステータスが上がった状態なら、流石にいけるか!?


 僕の放った《切断(ザイン)》は岩を切るという、本来とは違う使い方をした結果、穴を開けるとはいかないものの、深い傷を作ることに成功した


 この調子で、と行きたいことだけれど。やばいな、魔王さんは待ってくれないみたいだ


 こうなったら、魔王さんの狙い通り上に抜けるしかないな。 ……一か八かだ


「とうっ!」


 上に飛ぶ、そして即座に周囲を確認。そして、どうやらこれで正解だったことを悟る


 さっきと同じような壁が三つ、僕が飛び乗った壁を囲むようにして作られていた


 そして、正解とも言えない様なものが、真上にあった


 文字通り天が裂け、その奥に綺麗な女性の顔が見えたそして……


「第九階位魔法《天泣の哀情(エンゼル・メルト)》!」


 魔王さんの声と共に上にいる女性の目から涙が一滴落ちる


 一滴と言っても落とした女性があのデカさだ。相当な大きさである


 直撃したら、絶対に死ねるわ。あれ


 というか結構な高さから降ってきているから、雨みたいな感じで降ってくるのかな?だとしたら、あの涙に何か仕掛けがあるのだろう


 毒の雨……とか。本当に雨みたいに降ってくるならかなり悪質な攻撃なんですけど



 というか魔王さん……その攻撃、貴方も喰らうのでは?


 と、思っていたら魔王さんの周りには結界みたいなものができていた


 なにそれずるいわー。自分だけ助かろうとするなんて。僕は対戦相手だからいいけど観客とかやばくね?


 魔王さん、貴方は人として駄目なことをしようとしてません?ちょっと僕の中で魔王さんの株価がどんどん下落していっている気がするのですが。風上にも置けない様な存在になっている気がするのですが?



 あ、観客席が結界で覆われていく。……魔王さんのとは違う様だけど、大丈夫かな?この攻撃を防ぐことができるのだろうか?


 まぁいいや。考えたって僕にはどうすることもできないし


 よし、現実から目を背けるのもここら辺まで。正直あの攻撃を防ぐ手が僕には無い……と思う。思い浮かばないからしょうがない


 そして、あれを喰らっても生きていられるのかは不明


 待てよ……なら喰らわなければいいのでは?


 走って雨を全部かわすとかいう夢のような事はできないから……もっと強くなれば、この世界でならできるのかもしれないけど。兎に角、あの攻撃を喰らわないためにできること、それは雨を何かで防ぐことだ


 何で防ぐかというと……魔王さんが作り出したこの壁。そうと決まれば早速やろう、間に合わなくなる


「《切断(ザイン)》《切断(ザイン)》《切断(ザイン)》《切断(ザイン)》《切断(ザイン)》《切断(ザイン)》《切断(ザイン)》!!」


 それにしても魔王さんは動かないですね。何か意図があるのか?それとも結界発動中は攻撃できないのか


 取り敢えず、動かないなら早く作ってしまおう


 よいしょ、ここをこうしてこうすれば……できた!即席だからしっかり機能するのかは分からないけど、無いよりあったほうがマシだろう


 ということで、初めに囲まれていた壁、その棘を全て取った後、二層目の壁の一部を切って上に乗せるだけという簡単な雨除けが完成しました


 そろそろ来そうだな。魔王さんも動かないようだし、隠れちゃいましょう


 よいしょっと



 中に隠れてから数十秒後、外からザーザーという音が聞こえ始めた。観客達の悲鳴は聞こえてこないからきっと大丈夫だったのだろう


 しかし、即席だけれど以外と上手くいくもんだな。今のところ何も起きていないわ。続くとしてもあと30秒位だろう、それまで耐え切ってくれるといい……



 うん、流石にそんな上手くはいかないよね。雨漏りしてしまっているわ


 もう、雨漏りしてる所からちょっと離れておこう



「あ……!」



 その時、他の雨漏りから降ってきた雨粒が僕の手に落ちた


 そして…………

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