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ネズミと戯れていたら魔王とエンカウントした件


 初勝利、やったー!もうこれこのスキルさえあれば敵なんていないんじゃない?……夢にまで見た無双生活が遂に始まるかも!?なんちゃって


 いやー、でも本当に強いなー。これなら見返せるんじゃない?彼奴らに



 ◇ ◇ ◇



 そう考えていた時期も僕にはありました……


 いやー、いきなりだけど捕まっちゃったねぇ。うん


 いくら『魔』に強くても、流石に邪神には勝てんですよ。だって名前に『魔』がついてないし。……魔神、せめて魔神にして


 ていうか曲がりなりにも『神』なら何故そっちの味方をするし!?こっちは転移してからというもの不運でやってられないんですけども。あの事件の事だって結構精神的に響いているんですよ。だから、少しくらいこっちの味方をして下さいって……


 いや、よく考えてみれば僕があのユニークスキル《滅魔の覇気(デモラルオーラ)》を獲得したのって【神の願い箱】とかいうアイテムのおかげだよね?てことはちゃっかり僕のことを助けてくれている訳だ


 ありがとう、神よ


 ……魔神?邪神?知らないね


 そして感謝ついでにお願い、邪神さんをどうにかしてほしい。このままじゃ勝てん


 まぁ、捕まったおかげで魔王城に潜入(拉致監禁ともいう)している訳ですけど。この牢屋ったら臭いし寒いし暗いし狭いしで本当にキツいんだよね。これに懲りたので犯罪はもうしません、許してくださいって言いたい。まぁ彼の為、そして自分の為にもここで逃げる訳にもいかない


 というかそんなあっさり見逃してくれるほど優しい連中じゃ無いでしょ?魔族さん方は


 グ〜〜


 やたらと響く牢屋の中に場に合わない様な音が響く


 緊張感0ですみません。でもさ、ご飯は?くれないの?もう凍死とか精神が病むとか狂うとかその前に餓死するわ!


「お腹すいたー」


 そんな事を言っても目の前に何も出されない事は知ってるよ?でもさ、この牢屋何も無いんよ。やっぱりさっきの言葉を訂正します


 このままだと餓死するより先に心が壊れてしまいます。狂います。そして死にます、狂い死にです



 と、その時僕は何かの気配を感じた


 大きな気配じゃないな。小さい。……でも仮に気配を限りなく0に近いところまで抑え込めるスキルがあったとしたら?


 あり得るな


 まぁ気配を探知する系のスキルなんて当然僕が持っている筈もないし、実のところいまいち分かってはいないんだけどね


 と、そんな事を考えている間にもうすぐそこまで来た様だ。一応身構えておこう。何が来てもいい様に


 ゴクリ……


 その時、僕が見たのは……長い尻尾を持ち、暗闇に光る二つの赤い目をもち、体は黒い毛皮に覆われている


 ーーネズミだった


 即座に牢屋の格子の隙間から手を伸ばし捕まえる、そして牢屋に引き摺り込む。その間チュウチュウとネズミは鳴いていたが強い心を以て無視した


 嘘、強がった。本当は辛い、精神的にダメージを負った。


 本当は見逃してやりたいよ。でもな、お前はネズミであり、小動物であり、夢の国の住人みたいな特徴を持っており、何より毒を持っている事がある。でも、その点を除けば立派な栄養源、食料なんだよっ


 僕はネズミを両手で持ち上げ顔の前に持ってくる


「ううっ、そんな顔するなよ」


 目が、目がウルウルしてる……。やっぱり僕には無理だ、無理だよ


「今日からお前をチュウ太郎と名付ける」


 食料になる代わりにお前には、ここにいてもらうからな。一人だと気が狂いそうだし


 決してお前の事を可哀想に思った訳じゃない、人間としての何かが僕を止めたんだ。……勘違いするな、お前の為じゃないんだからな!



 と、こんな事があり勇者日野翔は新たな仲間?を手にする事になったのである



 ◇ ◇ ◇



 とある城の牢屋に空腹、目眩、喉の渇き、倦怠感を感じている死にそうな男の子がいます。さあ誰でしょう?……正解!そう僕のことでしたー


 ……正解しても嬉しくないっす。むしろ辛い


 チュウ太郎?彼奴はもういないよ……。え?食べた訳じゃないよ?僕が寝ている隙に居なくなってしまったのさ


 そりゃ当たり前だよな


 仲間を失った僕はあまりのショックに倒れ伏してしまった。いや、元からか


 取り敢えず声を大にして言いたい。『早く出せ』と。しかし言えないから『食料を下さい』と頼みたい残念なことに頼めないし相手がいないけどなっ!


 てか魔族達は何がしたいんだ?流石に此処でただ餓死させるって訳じゃないだろ?


 んー?んーー、んーーー?


「分からん!」



 と、その時何かの気配を感じた


 どうやらこの前の様にチュウ太郎の様な小動物では無いようだ。だって気配が違うもん。凄い威圧感を感じる


 何だったら体が少し震えてきた。……べ、別に怖くなんかないんだからね


 コホン、じゃあ一体この気配の主は何なのだろう?どうやらこっちに向かって来ている様だが、ヤバそうなのはやめてほしい


 と、その時懐かしい声がふと聞こえた


「チュウ!チュウ」


 ち、チュウ太郎か!?よくこの威圧感の中動けるもんだ


 お、入ってきた。なんと、別のネズミでは無く本当にチュウ太郎が帰って来た。嬉しい。よし、お前は今日から忠太郎だ!


 でも何故今帰って来たし?いや、純粋に帰ってきてくれるのは嬉しいんだけどさ、なんかヤバいのがこっちに向かって来てるんだよね


 意外にも魔族軍の幹部とかだったりして。……やばいそんな気がしてきた


 あー、もうそこまで来てるよ。来るなら早く来いよ!なんでゆっくり歩いて来てるんだよ!?焦らされると余計怖いわ!



 ……あれ?さっきよりも早いスピードでこっちに向かって来ている気がするぞ?



 ……ちょっと待って?いや、え?あのすみませんでした。こっちにも心の準備というものがですね?



 ーー条件を満たしました

 ーースキル《感知》lv.1を入手しました



 え?そのタイミングで新しいスキル入手する?するならもっと早くにして欲しかった



 まぁ、腹を括ろう。どうやら避けられない様だしね。



「どうも」

「どうも?」


 現れたのはマント付けてて、髭が生えてて、かっこよくて……うー、語彙力の喪失……!!


 取り敢えず一言で表すなら『魔王』というか言葉が似合いそうなイケメンがそこにいた


「えー、お前は王国の勇者の一人って事でいいんだよな?」

「え?そうで……」


 あ、ここで肯定したら勇者は複数人居るってばれちゃう。いや、流石に知ってそうだな


「そうですけど」

「そうか、先ずは……」


 先ずは?うん、情報を渡せからの死刑かな?分かっていても辛いものがありますな……


 まぁ、勿論僕は抵抗するで?武器は今無いから拳で


 ……おい自分よ、話を聞こう?大事なところやで?


「先ずはすまなかった。こちらの手違いでこの様な牢屋に捕らえてしまっていることを詫びよう」

「え?はい」


 手違い?……本当は牢屋に入れるつもりはなかったのかな?でも、僕としてはご飯とか水とかを一切くれなかったのは謝ってくれないんだなと少しショック


「それから、おま……勇者様はちょっとついて来てくれませんか?」

「今お前って!絶対お前って言おうとした!」


 まぁ一番最初にお前って言われたけどね


「お、おう。どうした?」

「すみません、人と話すのは久しぶりなもので」

「そ、そうか」


 なんかさ、敵とかそういうのは置いといて、会話が成立したことが嬉しいわ。忠太郎の時は


『それでね、あれこれ、こんな事があって今こうなってるんだよ。酷くない?』

『チュチュウ?チュウ!……チュウ』

『そうそう、それでさ……』


 みたいな感じだったんだよ。無理やり会話している様な風に見せていたんだよ


 でも今は!しっかり会話をしているっ!齢13にして初めてコミニュケーションの大切さを知ったわ


 まぁ牢屋に入れられるなんてよっぽどな事がない限り体験しないもんね。しょうがないね



 ガチャ


 あ、扉が開いた。外に出れるー、やっほーい


 いやーシャバの空気は美味いねー。腹は満たされないけどね


 どないはったん自分?今日調子おかしいで?


 ……すんまそん




 ただそれにしても魔王って、思っていたよりも優しいというか、悪い奴じゃ無さそうだ


 でも威厳はあまり無さそう……じゃあやっぱり魔王じゃないのかな?


 じゃあ暫定的に魔王(仮)で


 取り敢えず着いて行こう。流石に護衛をつけていないという事は強い人なんだろうから、逃げさせてくれないだろうし、勝てない。……というか此処が何処なのかも知らないから……結局は捕まるんだろうな


 それに次は生かしてくれそうにないし……だって勇者は複数人居るってバレているから。逃げられて手間をかけるくらいなら他の奴に聞けばいい


 終わった……。


 始まりの町でうろうろしている様な勇者がいきなり魔王城に飛ばされるとかどうしようもないじゃん。


 あ、そういえば忠太郎置いて来ちゃった。……と思って後ろを振り返ったらちゃっかり着いて来ていた。可愛いわ。



 と、そんな事を考えながら歩いていると、目の前に階段を見つけた。


 これで牢屋が沢山あるこのエリアから出られるのかな?


 あ、そうそう、牢屋が沢山あるといっても全て使われている訳ではない。というかほとんど使われていない。此処まで来るのに全くと言っていいほど使われているのを見なかった。


 捕らえたりしないのか、それとも……誰も彼もを殺しているのか



「着いたぞ」

「あ、はい」


 思ったより早く着いた


「あの、此処は何処なんですか?」

「此処か?何でもないただの部屋だ。今はちょっとお前と話をするために整えてあるがな」


 は、はい。というか話?話と書いて拷問?じゃあ、この扉を開けたら見るのも恐ろしい拷問器具たちが……!?


 体が震えてきた。うぅ、怖いわ。忠太郎……。


 あれ?いない?どうして…………。


 取り敢えず忠太郎のことは放っておこう。強く生きるんだぞ。


「入るぞ」

「は、はいっ!」


 ゴクリ……


 扉を開けると、中には普通に生きていたら一度も目にしない様な拷問器具たちが……という訳ではなく、普通にテーブルと椅子が置いてあった。


 良かった、本当に話をするつもりだったのか……


「まぁ、座れ」

「はい」


 取り敢えず指された方の椅子に座る。……椅子がふっくらしてる。座り心地がいい。


「それで話というのはな、えーー、もともと居た世界に帰ってくれないか?」

「え?」

「あー、あれだ、この世界の事情と関係ないお前らを巻き込むのは気が引けるんだよ。まぁ、お前に関しては他の理由もある……と、これは言ってはならないやつだったか?まぁとにかく、お前たち勇者には帰ってもらいたい」


 ん?どういうこと?もしかして魔王さん(仮)は異世界人である勇者には優しいのか?


 ていうか帰れるの!?


「本当に帰れるんですか!?」

「ん?ああ、勿論だ。しっかり帰れるように手配してある。しかも時間軸を少しいじることによってお前らがこの世界に来たタイミングまで戻す事ができるぞ。


 ……なんだったら異世界(ここ)での記憶を全て消して帰す事ができる。……まぁ記憶の引き継ぎをする方より簡単だからできればこっちにしてほしいんだがな」


 マジですか、凄いな。……ん?でもあの国王は帰す手段はないとか言ってなかった?


「すみません、僕は王国の国王に『残念だが君たちを帰す手段はない』とか言われていたんですけど……」

「ん?ああ、それはだな、お前らを帰すのに何千人もの命が必要だからじゃないか?それに来させるのにも何千人もの命が失われているしな。

 

 まぁ、向こう側の世界にいた奴が助力しているなら何百人位には減らせているのだろうが、どちらにしろ多くの命が失われてしまうのには変わりないからな」


 魔王さん(仮)はその事実を淡々と語った。……何故色々と知っているのか、そんな事は今はどうでも良かった


 どうでもよくなるくらいに驚かされた


 この世界に来た時、なんて理不尽な……と、思っていたが、この世界の人々も必死だった。あの時


 何千人も……確かにそんな多くの命を失って召喚したのが僕みたいな無能だったら、国家の為に隠蔽、つまり国外追放するだろうな


 そして、殺すのも手、というか一番いいのだがそれをしなかったのは……死んでいった人達の為だろう


 すみません。亡くなった方々に少しでも報いれる様に、生きます


 ミサさん、貴方が僕に託した願いを叶える為、僕は……


「それで、答えはどうだ?」


 魔王さん(仮)は落ち着いた表情で僕に言う。その表情はまるで『じっくりと考えてもいいんだぞ』と言っている様だった


 でも、大丈夫。答えはもう決まっている


「僕は、僕は帰れません。とてもいい提案だと思います。でも、でも僕はどうしてもこの世界でやり遂げないとならない事があるんです。だから、それを終えるまで変える事はできません。


 ……まぁ終わった後に帰れるかどうかは分かりませんけどね」


 というか正直、このチャンスを逃したら帰れないのでは?まぁ元々帰れないと思っていたし別にいいか


「そうか、それは残念だ。だが、ここで断ってもお前はその『やり遂げないとならないもの』を終えることは出来ないと思うが、それは覚悟の上なのか?」

「覚悟というか、ただ元々帰れない運命だったので別にいいかなと」


 元の世界に思い残す事は沢山あるけれど、今この世界でやりたい事も沢山できたし……ね


「……やっぱりお前は面白い奴だな。そんな奴をむやみに殺したくはないのだが。お前がその気なら仕方あるまい。


 ……きっとあいつも許してくれるだろう。…………いや、そんな訳ないか。


 まぁいい、これからお前に部屋を用意しよう。そこで一日自由に過ごしてくれ。その後は、俺と戦ってもらうことになる。一応勇者とやらの力を知っておく必要があるからな」

「やっぱり、避けられないんですか」


 おう、やっぱり普通にこのまま返してくれないんですね。


「ああ、お前が帰らないと言うならばお前を倒し我が糧とするまでだ」

「……かっこいい。……コホン、分かりました。持てる力全てを出して戦います!」


 正直勝てる見込みは0なんですが……何もない所で躓いてくれたりしないかな


 いや、弱気でどうする!まだあと一日あるじゃないか!どうにかして手を考えよう。うん、そうしよう


「おう、そうでなくてはこの戦いの意味がないからな。それでは明日また会おう。後はこいつが案内してくれるだろう」


 こいつ?と思っていると魔王さん(仮)の後ろにいきなり角の生えた女の人が現れた


 転移ではないと思うんだけど……どうやって現れたのだろうか


 転移する時は周りが明るく光る。これは僕は体験したことがあるから分かる。そもそも転移は隠密には使いづらそうだし


 うん、分からん。取り敢えず挨拶しとこう


「よろしくお願いします」

「はい。では私がお部屋まで案内します。ついてきて下さい」

「了解です」


 行きましょう、お部屋に。牢屋よりいい部屋だと信じていいんですよね



 僕たちは部屋に向かって歩き出す。……なんかこの人歩き方から強さが滲み出ておりますわ。こんな僕であの魔王(仮)にかてるのだろうか。



「着きました。こちらがお部屋になります」

「おう、またこれは高そうな扉。案内ありがとうございます」

「いえいえ」


 王国にあったのとはまた違う感じで高そうな扉だ……!今度こそ壊さないようにしよ


 そうだ、色々とこの女の人から聞いてみようかな…………ん?


「あれ、居なくなってる。凄い人やな、本当に」


 取り敢えず入ってみよ


 扉を開けてみる。うん、開きやすい。凄い開きやすい。取り替えるならこういう扉がいいよね。やっぱり


 中は、凄い綺麗な部屋だった。ホコリひとつないどころか家具ひとつなかったわ。……日本で最近流行りの断捨離ってやつ?魔族の間でも流行ってたんだ。


 って、そんなわけないよね……。



 ……まって、部屋には何も無いのかと思ったけどまだ奥に扉がある!ちょっと開いてみよう


 扉は……なんかさっきのと打って変わって重いんですけど。……力一杯押してみると、やっと開いた


 中は……凄まじい拷問器具たちが沢山並んで居らっしゃったわ



 あー、これ。さっきの部屋に置いてあったやつ全部こっちに持ってきた感じ?なんか家具とかも一応置いてあるし


 取りに行きたくないけど



 まぁいいや。取り敢えず見なかったことにしてこの後どうするか考えよう


 背けていい現実と背けちゃダメな現実。その見極めが大切だよね。今回の場合は前者。異論は認めない


 さあ、考えよう。これからどうするのかを

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