転移≒転移
彼の残した言葉を聞いた後、直ぐに城の兵士の様な人達が来て僕を何処かへ連れて行った。
……半ば強制的に。
その最中、兵士達は『なんて事を…』とか何やら言っていた。……どうせ全部知っている癖に。
いや、知らないのかも知れない。多分これは……普通の兵士が知っていてよいものではない。
……因みに彼の骸は、兵士達に何処かへ運ばれていった。
”向こう”ではどうか幸せに……。
そんな事を願いながら僕は兵士達に連れて行かれるのであった。
◇ ◇ ◇
ここから先の話は簡潔にまとめて、縮めて話そう。
何故なら、僕にとってこの悲しい雰囲気をぶち壊すような展開がまっていたからだ。
憤怒。
僕は、遂に……いや、やっと、国から追い出された。
「だから、簡潔に話す」
あまり話したくない話だから。そして、無力な自分が恥ずかしいから。
「先ずは連れて行かれた後の話から」
連れて行かれた先はクラス転移させられてこの世界に来てから初めて僕が見た場所、即ち王宮。
そして、そこに着いてから直ぐに足と手に不自然な重みを感じる様になった。
少し考えて、僕は手錠と足枷でもされたんだなと理解した。全く、無実の一応は勇者になんて真似をするんだか……。
まぁいい。
目の前には王座。勿論王様は、座っている。そして周りには……クラスメイト!?
……何故だ?ここにいる必要はない筈なのに。
いや、そういう事なのか。
「勇者、いや犯罪者ヒノカケル。お前は残念の事にメイドのミサーナを殺害した。そんな犯罪者を私は勇者と認める事はできん。よって……お前を追放する事にした」
淡々と僕のありもしない罪状を述べる王様。
「……。僕はやっていません」
「犯罪者はそうやって嘘を付くものさ。そうやってまた罪を増やすな。本当に、腹立たしい!」
何が腹立たしいだ。どうせ、内心はやったーとか言ってるんだろ。脳内がお花畑のはずだ。間違いなく。
使い方間違ってるかも。
「でも証拠は、無いでしょう?それにこんなステータスでか……のじょを殺せる訳が無いじゃありませんか」
「証拠ならある。全ては彼、勇者サカグチトモヤ様が知っている。サカグチ様は見た物を覚えて映像化させることができる魔道具を持っておりお前の犯行現場をそれで録画した」
なんと、そうなるとこの世界には映像加工技術があるということか。
「さあ、もう言い逃れはできないぞ、犯罪者。」
……心の中ではそんなおどけた様な態度をとっているが、実はかなり怒ってるんだよね。
この場にいる奴全部殺したいとか思う位には。
まぁ、でもこれは。詰みだな。
詰みだ。
まぁせめて皆の記憶に残る様な事をしておきたい。
追放、ならまだチャンスはあるだろう。
国を潰す、そして復讐をするんだ。僕と彼の復讐。
だから、また会った時に驚く様な事。
「分かりました。ここは負けを認めます。でも、次は必ず勝ちます」
「どういう事だ?」
「必ず戻ってきます。此処に。そして復讐する」
「ふん、もしその時が来てもお前の様な無能の事など誰も覚えておらんさ」
そうか、覚えてもらえないか……。
「ならば印を付けましょう。この身体に。《切断》」
スパッ。と音を立てて僕の左耳が床に落ちた。
たった一つ、僕がトレーニングの中で覚えることのできた魔法。まさか初めての使い方がこんな物になるとは。
因みに痛感弱化(中)の影響があってか発狂するほど痛くは無い。せいぜい指をカッターで切った程度の痛みだ。まぁこんな行動に走れたのは日々の暴力で気付いた痛感弱化(中)は意外と効果が強い!ってことがあるからなんだけども。
でも痛い事には痛い、泣きそう。
まぁ、格好がつかないし泣かないよう我慢することけど。
取り敢えず、周りの反応からしていい感じに印象は残せたようだ。
「ふ、狂ったか。まぁいい。あいつの望み通り治癒をしてから転移してやれ」
すると、一人の女性が僕の元へやって来た。
この世界に来た時にいた人、多分王女様だ。年齢は僕らと同じくらい。
彼女は僕の元へ近づくと小声で僕へ話し出した。
「どうも、お父上は優しいわよね。貴方みたいな犯罪者を追放だけで許してくれるなんて。……許せないわ。でも取り敢えず《治癒》」
彼女は治癒の魔法を唱えると、僕の身体は緑色の光に包まれ、出血が止まった。
勿論耳は治っていない。そういうのは上位の治癒魔法でないと治せないそうだ。
勿論王様と王女様はそれを知った上で上位の治癒魔法をかけなかった。僕の言葉を尊重してくれたのかもしれない。……それは無いと思うが。
まぁどちらにしたっていい。
「これで治ったわ。じゃあ、魔族領にでも飛んじゃう?お父上は国から離れた何処かへ飛ばせと言われているんだけど。個人的に気に食わないから。……飛ばせてしまおうかしら」
「はい……?」
魔王領、だと?……いや待て、それは困る。大いに困る。
魔王領って、魔王がいるところだろ!?死ぬって、流石に!
「バイバイ、頑張って復讐しに来てね《転移》」
その瞬間、少しの浮遊感と共にこの世界に来た時に見た、あの光にそっくりな光に包まれ、王宮から転移させられた。
また少し間が空くと思います。スマホで書いてるので書くのに時間がかかるというのもあるのですが、この後の流れを考えているというのもあります。
という事なのでよろしくお願いします(`・ω・´)ゝ
 




