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進展

 あれはいつだったか。


 ほんの数日前のことなんだろう。でも、何年も前に起きたかの様に感じる。そんな突拍子もなく始まり、一瞬の内に終わった出来事。子供が玩具を取り上げられた様な、そんな悲しさと無力感、そして怒り。


 忘れてはならない大事な記憶、できるのならば忘れたい悲しい記憶。


 そんな、


 自分を呪いたくなる様な出来事。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 やらかした。



 そう言う他にないだろう。……遂に僕のステータスがバレた。バレてしまった。


 どうやら鑑定スキルを持っている奴がクラスに居た様だ。……鑑定スキル、か。……そりゃあ一発だろうな。悲しいことに。



 それでだ、悲しいことにまただ、またいじめが起きた。もちろん対象は僕。


 どうやら僕の体力は異様に高いらしい。しかも非ダメージ軽減ときた。……そこに目をつけられて僕は結果的にいいサンドバッグに成り果てた。


 本当にこいつら人を何だと思ってるんだ。まぁこいつらの認識からしたら僕は「じょうしつなさんどばっぐ」ってどこだろうけど。……ただし血肉を持つ。


 んー。こいつらの顔を見てると人ってこんなに悪魔になれるんだなって思う。人間って怖いね。



 拳の雨が止んだ。



 終わったか。今日は4分。残念、記録更新ならずだ。



 あ、勿論口には出さないよ。何されるか分かったものじゃないし、放課後のトレーニングの時間が無くなってしまう。


「お前、本当に弱いよな。どうだ、何か言ったらどうだ?」

「何も言わねぇだろ。だってこいつサンドバッグだし、口聞けないからな」

「はははは。そりゃあ言えてるわ」

「おい、その辺にしておこうぜ。……なんせ今日は」

「ああ、分かってる。行こうぜ、こんな奴ほっといて」

「そうだな。でもさ、本当に何もいい返せないなんてだせーよな」

「いや、お前が口聞けないって言ったんじゃん」

「まーな。そんじゃあ、じゃーなサンドバッグくん」



 行ったか。


 面倒くさい奴らだ。本当に。ストレス発散かなんだか知らないが。他所でやってほしいものだ。

 いじめの矛先が他人の元へいくなら……他所でやってほしくないけど。


 まあいい。今から晩御飯の時間まで地道に鍛えるんだ。千里の道も一歩から、だ。


 確実に上がっているステータスを見ながら僕は外へ出るため足を急いだ。



 ◇ ◇ ◇



「昨日は11周、今日は12周。確実に前へ進んでいる!」


 やったねー。でも、成長速度が初めの頃と比べて少し落ちている気がするな……。

 分からないことは調べる。それに尽きる。明日また図書館に行ってみよう。


 僕はいつもより上機嫌で部屋(物置)へ向かった、……のだが。


 ドアが開いてる?どうしたんだろうか?

 最近直してもらったばかりだから壊れたとかは嫌なんだけど。


 少し急ぎ気味にドアの方へ歩く


 が、ここで……変な臭いを僕の鼻が感じ取った。


「……なんだこの臭い、いや、まさか」


 今度は走って向かった。半ば焦り気味に。

 段々と臭いが濃くなっていく。嫌な臭いが。


 ……そして部屋の前に着き、足が止まった。


 --驚愕。そして、焦燥


 彼、ミサさんが倒れていた。赤の上に。



 今思えばそういうモノをはっきりと見たのは初めてだったかもしれない。



 骸、がそこにあった。





 そして、その隣には意味ありげにガラスでできた様な八面体が転がっていた。


 そして、その八面体こそが彼の残したメッセージ。所謂遺書の様なもの……だった。

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